「次世代につなぐタイの品質管理」サシン経営大学院がセミナー開催

 サシン経営大学院は4月1日、顧客満足度と品質の関係性を示した「Kano Model」で世界的に知られる東京理科大学の狩野紀昭名誉教授とトヨタ自動車の現地法人、トヨタ・モーター・タイランドのスウィット・チャイプラシット副社長を講師として招き、品質管理に関するセミナー「TQM for the Next Generation」を開催した。

 第一部では、元サイアム・セメントグループCEOで、同大学院のパロン・イサラセナ・ナ・アユタヤ学長とスウィット副社長がタイの品質管理の歴史を振り返った。パロン学長は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)留学時に初めて、TQM(Total Quality Management)の前身であるTQC(Total Quality Control)と出会い、これをタイに持ち帰った。


セミナーに参加した関係者ら

 ただ、タイ人にTQCを伝えたとき、コントロールという概念が受け入れられずに苦労し、「C」をコミットメントとして紹介した逸話を披露した。その後、タイ生産性研究所(FTPI)の一員として、先進国を視察して回り、日本人と仕事をする中で、まずはプランニング、そしてフロント・ローディングの重要性を学んだ。

 トヨタに入社したスウィット副社長は、まず品質管理部に配属された。20代前半は、先輩にあまり仕事を教えてもらえなかったため、自分で仕事を覚えたと振り返る。管理職になって、社員の学習環境を整備することがいかに大事かということに気付き、全社員が常に学習意欲とプロ意識を持つ組織作りに取り組み、トヨタの品質を支えてきた。


登壇した東京理科大学の狩野名誉教授

 第二部に登壇した狩野名誉教授は、時代の流れと共に質は移り変わると説明した。例えば、カラーテレビにおける「顧客の満足感」は1980年代、消費電力の低さにあった(一元的品質)。安全性は言うまでもなく「当たり前品質」で、遠隔操作機器のない時代に発売されたリモコン付きテレビは、当時の顧客にとって「魅力品質」となった。しかし10年も経つとリモコン付きは「当たり前品質」となり、また別の機能が「魅力品質」として市場に求められることになった。このサイクルにいかに対応するかが企業の課題となっていると指摘した。

 「顧客の満足感」を高めることは引き続き重要であるが、それだけでは市場シェア拡大には結びつかない。企業として顧客に喜びや驚きを与える姿勢が重要になる。そのためには自社が販売しているモノだけを見るのではなく、それが使われる背景と全体像を知ることが肝心であるという、同教授の言葉に120名を超える参加者が耳を傾けた。

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