SBCS タイ経済概況

Vol.8 コロナの陰で、拡張が進む首都圏空港

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タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は5月17日、2021年第1四半期の経済成長率が前年同期比2・6%減であったと発表。21年通年の経済成長率に関しては、2月時点の予測値である前年比2・5%~3・5%増から、同1・5%~2・5%増へと下方修正した。ただし、輸出および政府支出の拡大に加え、前年の成長率が低水準であった反動でプラス成長は維持となる見込み。

2021年も水かけのない静かなソンクランとなりました。しかし、タイでもワクチンの接種が始まったことから、来年のソンクランは水かけができて、気軽に旅行にも行ける元の世界に戻っていることを期待しています。旅行といえば、コロナ前の世界で悩ましかったのが空港の混雑でした。

19年の訪タイ外国人観光客数は3980万人に達しています。12年のドンムアン空港の国際線再開以降、増加の一途をたどっていました。

タイの成長産業となっていた観光ですが、さらなる飛躍を考えた時のボトルネックが空港の旅客取り扱い能力です。19年の実績で、スワンナプーム空港では旅客取り扱い能力が4500万人のところに6540万人が、ドンムアン空港では3000万人のところに4130万人が利用していました。

すなわち、首都圏空港として活用されてきた両空港ともに能力を4割程度超えて運用されていた訳です。この結果、繁忙期には出国窓口が非常に混雑するため、各航空会社は乗客に出発の2時間半以上前に空港に到着するように呼び掛けていた程です。

このような状況から、両空港で拡張工事が行われていたり計画されたりしていました。ドンムアン空港ではターミナルビルの拡張が行われ、20年に完成しています。さらには新ターミナル建設も検討されています。

一方、スワンナプーム空港はサテライト・ターミナルを建設中で、工事進捗率は21年5月時点で95%以上に達しています(同ターミナルとメインのターミナルを結ぶ全自動無人運転車両も20年7月に納品済み)。

順調にいけば22年に完成し、空港利用客が戻り次第供用が開始される予定です。これで旅客取り扱い能力が1500万人増加し6000万人となりますが、まだ19年の利用者数には届きません。

そこで建設中の3本目となる新滑走路に合わせ、サテライトとは別の新ターミナル建設が計画されています。新滑走路の工事進捗率はまだ数パーセントなので、23年8月完成というスケジュールに間に合うかやや不安ですが、遅延したとしても近い将来に完成するでしょう。

新滑走路と新ターミナルが完成すれば同空港が対応できる旅客数は年間9000万人となります。これまで、スワンナプーム空港の混雑で苦労した経験がある者として、よりスムーズに出入国ができるというのは安心感があります。  ただ、コロナ後の世界が「海外出張?そんなコストかける必要はないよ。ウェブで十分だよ」なんていう寂しいことにならないことを祈るばかりです。

寄稿者プロフィール
  • 長谷場 純一郎 プロフィール写真
  • SBCS Co., Ltd.
    Manager, Business Promotion Division
    長谷場 純一郎

    奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、10年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。12年から18年までジェトロ・バンコク勤務。19年5月より現職。

SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

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2021年3月〜5月  経済・政治関連トピック

経済

世界銀行は3月26日に発表した東アジア太平洋地域経済見通し報告の最新版にて、タイの2021年の経済成長率を3.4%、22年と23年の経済成長率をそれぞれ4.7%、3.9%と予測した。タイ経済は徐々に回復基調にあるが、タイ政府が厳重なロックダウンを実施した場合、経済の回復は停滞するとしている。また、ASEAN8ヵ国(シンガポール、ブルネイを除く)の21年の経済成長率予測は、ベトナムが6.6%で首位、マレーシア(6.0%)、フィリピン(5.5%)、インドネシア(4.4%)と続く。

同報告のASEAN9ヵ国(ブルネイを除く)のワクチン接種状況では、もっとも接種が進んでいるシンガポールが接種率13.54%。次いでインドネシア(2.41%)、マレーシア(1.13%)、カンボジア(1.02%)となった。タイの接種率は0.08%であり、最下位のベトナム(0.02%)に次いで低い数値となっている。国際通貨基金(IMF)も4月6日に、最新の世界経済見通しを発表。タイの21年と22年の経済成長率をそれぞれ2.6%、5.6%と予測した。


日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所は3月29日、「タイ日系企業進出動向調査2020年」を発表。同調査はタイに進出する日系企業の進出状況を調査するもので、20年10月5日から21年3月12日の間に、7,318社を対象に行われた。これによれば、個別のヒアリング等により実際の活動が確認された日系企業は5,856社あり、前回(17年)の調査から412社増加。業種別では製造業(2,344社)が最多で、卸売業・小売業(1,486社)、サービス業(1,017社)がこれに続いた。サービス業は前回の896社から121社増加し、調査開始以来初めて1,000社を超えた。

また、前回に引続き、中小企業および個人が出資する企業数の割合が、大企業が出資する企業数を上回る結果であった。なお、本調査における「日系企業」とは、日本法人もしくは日本人が10%以上出資している企業を指す。


タイ商務省が4月23日に発表した貿易統計によれば、3月の輸出額は前年同月比8.5%増の242.2億米ドルだった。2ヵ月連続で200億米ドルを上回り、単月の輸出額としては過去最高を記録した。変動の激しい金・石油・武器を除いた輸出額も同12.0%増であった。輸出品目別では電気製品・部品、電子製品・部品、自動車・部品がいずれも前年同月比2桁増。国・地域別では経済回復が続く中国向け輸出(同35.4%増、31.1億米ドル)が全体の伸びをけん引した。


アジア開発銀行は4月28日、「アジア経済見通し2021年版」を発表。タイの経済成長率について、21年は3.0%、22年は4.5%のプラス成長になるとの予測を示した。同報告によれば、世界的な新型コロナウイルスの流行による貿易および海外旅行への打撃はまだしばらく続くことが予測されるため、21年は緩やかな回復に留まり、経済の復調が本格化するのは22年になる。

タイの物品貿易についてはすでに回復基調にあり、日本や中国、米国といった輸出相手国の需要増を受け、自動車や電子製品、農産品等の主要品目を中心に今後も伸びが期待できるとした。一方、観光産業を主とするサービス貿易が復調し始めるのは22年になる見通し。


タイ電子取引開発機構(ETDA)が発表した「THAILAND INTERNET USER BEHAVIOR 2020」によれば、20年のタイ人のインターネット平均利用時間は1日あたり11時間25分だった。前年と比較すると、1時間3分の増加となった。新型コロナウイルスの影響により、オンラインを通じた活動が増えたことが要因として考えられる。

世代別の利用時間では、Y世代(20~39歳)が最長で1日平均12時間26分であった。また、利用目的の1位はソーシャルメディア(SNS)で、動画・音楽等の視聴、情報検索がそれに続いた。また、インターネット接続の利便性の向上やオンラインのコンテンツ拡充等を背景とし、同調査が開始された14年から20年にかけて、タイ人のインターネット使用時間は約3倍に伸びたことが明らかになった。

政治

タイ政府は3月30日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を21年5月31日まで延長する旨を官報に掲載。非常事態宣言の延長は11度目となる。


4月24日、インドネシアの首都ジャカルタで東南アジア諸国連合(ASEAN)臨時首脳会議が開催され、2月のクーデター以降、国際的に注目を集めるミャンマー問題について協議が行われた。ミャンマーから軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官、タイからはドン副首相兼外務相が出席した。

会議後、1)暴力の即時停止、2)平和的解決に向けた建設的対話の開始、3)ASEAN特使による対話仲介、4)ASEANによる人道支援の提供、5)ASEAN特使のミャンマー訪問、からなる「5項目合意」が発表された。


タイ政府は4月30日、タイへの入国者に対する防疫措置および隔離に関する方針を変更した。これにより、一部の入国者を対象に7~10日間以上に短縮されていた隔離期間が14日間以上に戻った。この方針は5月1日から別途変更の指令があるまで適用される。

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