ミャンマーの最新ビジネス法務

第7回 祝日の変更

第7回 祝日の変更

はじめに

流通証券法25条及び休暇及び休日法3条(1)において、祝日は政府の通達により決定される旨が規定されています。前者に基づき、2017年3月10日付で、政府が2017年31号通達(以下「31号通達」という)を発布したことから、祝日が変更されました。
4月の水祭り(ミャンマー正月を祝う祝日)の日程が直前で変更されたため、企業は混乱、労働者によるデモや批判も招き、最終的には元通りの祝日を認める旨の通達を発布するに至っています。以下が関連する各通達についての解説です。

政府による直前の「水祭り」祝日日数変更、最終的には元通りの10連休も可能な運用に

31号通達の概要

当該通達では、祝日の合計日数に関しては変更ないものの、4月12日から10日間予定されていた水祭りを4月13日から17日の5日間に短縮し、代わりに10月4日及び6日、11月2日、12月30日及び31日を新たな祝日としました。
変更の理由として、通達上は、10日間もの長期休暇は国際的銀行取引や商品の流通に支障が生じるためとの旨が規定されています。ミャンマーと同様に水かけ祭りがあるタイでは5日間、カンボジアは3日間のみの祝日であり、ミャンマーも06年までは5日間でした。しかし06年にネピドーに首都が移転となり、当地に勤務する公務員への配慮等から、07年に10日間へと変更された背景があります。
当該通達の発表後、公務員を対象としたアナウンスが出され、既に帰郷、寄付、宗教行事、旅行などをアレンジしている公務員がいることに鑑み、関連省庁は31号通達にかかわらず、17年に限り、従来通り10日間の休日を認めるようアレンジしなければならない旨が規定されました。

1号通達の概要

労働・入国管理・人口省が、17年3月17日に17年1号通達を発布しました。当該通達は、31号通達により水祭りが10日間から5日間に短縮されたものの、祝日の準備をしていた労働者に鑑み、10日間を認める旨を規定しています。また、余剰の5日間の取り扱いについては、①労使間の適切な交渉による方法、②法律に従った労使間の適切な交渉による方法、③適切な種類の休暇による方法―のいずれかを認める旨が規定されました。
法律上、祝日に労働をさせた場合、振替休日を与えたとしても祝日労働手当が必要です。しかし、当該通達は労使間が合意により祝日を変更する場合、かかる祝日労働手当なしで働かせることを例外的に認めたものと解されます。

その他の関連通達

中央銀行は当初、銀行に対して休日を5日間としなければならない旨の通達を出し、一般企業とは異なり、銀行が任意で10日間の祝日を設定することを規制しました。しかしその後には、労働者が10日間の休みを取れるよう配慮しなければならない旨の通達が発布されています。

おわりに

10日間の休暇が長過ぎるため、ビジネスに支障が出ていたのも確かであるため、変更の趣旨自体は理解できます。しかし、その手続きが稚拙であり、十分な周知期間を経なかったために混乱が生じ、何度も通達が出されるという事態に至りました。31号通達を突然発布することで混乱が生じることは容易に予測できたはずであり、本件の一連の出来事から、政府の人材不足や政策決定時の将来の予見の程度の低さが透けて見え、今後の政策に不安を覚える結果となりました。


堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士
東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所(www.sagaasialaw.com)代表であり、2016年2月よりタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立した。タイ法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。
問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

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