ArayZオリジナル特集

地域経済発展のヒントを見出す 観光クラスター座談会

観光クラスター座談会

波多:パッケージツアーでなく、個人での旅行(FIT)のお客様は、地方に行くほど路線バス利用に必要性が高くなります。
8月に開催されたタイ国際旅行フェア(TITF)では、当社ブースに東京、富士山、大阪、京都などのメジャーな観光地だけでなく、地方に興味を持っているタイ人も多く来ていただきました。タイでは、テレビや雑誌などのメディアから日本の情報が多く発信されており、リピーターの方も急増していることから、今まで行ったことがない所に行ってみたいと言うニーズが増えています。FITのお客様が地方に訪れる場合はどうしても交通手段がバスしかない場所も多く、外国人にとって路線バスに乗車することは難しいのではと感じています。地方でお金を落としてもらうためにも、地域の観光クラスター形成と外国人でも行けるようなインフラの整備をセットで行うことが急務かもしれません。

arayz sep 2014 toukushu
8月に開催されたタイ国際旅行フェアの様子

求められるカスタマイズ力

藤岡:タイ人の訪日リピーターも実際に増えてきており、本物志向が強い質の高い観光を求めた中間層・富裕層が多く含まれています。具体的なニーズ、要望を持っている方も多く、これまでマスマーケティングで対応できていたことも、一人で複数のニーズを持つタイ人に喜ばれる〝ツボ〞を抑えてカスタマイズし、人それぞれにあった旅行をカスタマイズしていくことが大切だと思います。タイではソーシャルネットワークが日本より発達しているため、こういったツールを活用したPRがタイでのビジネスでは必要不可欠となっており、重要なパートナーであるタイに向けて、どう効果的に情報を発信できるかが鍵
となります。

波多:旅行会社として、通り一辺倒の提案だけでは通用しなくなっており、さまざまなニーズに応えた商品を提供していかなければならない時代になっていると思います。また、人材育成も課題の一つと感じています。
訪日旅行に関しては、英語が話せるガイドの数がまだ少ないという受け入れ側の日本に課題があります。英語ガイドのライセンス取得は規制が多く、絶対的な数が不足しています。この他にも、東京、大阪を中心としたホテルの数やバス台数や観光施設の整備など、日本が2020年に目指す訪日外国人2000万人達成に向けては越えなければならない課題が山積していると感じています。

三木:当社のお客様は年配の方が多いのですが、現在、ツアーを企画した担当者がツアーに同行してバス駐車場から観光目的地までの距離や、階段の登り降りに負担がなかったかどうかなど、細かいところまでヒアリングをして、次の企画に反映するようにしています。ガイドの上級職である〝アテンダント〞を育成しており、現場での対応力を上げていく取り組みも行っています。

阪田:中国や韓国、ロシアなど海外からのお客様も増えています。日本人のお客様とは違うと感じることも多く、オーダーパッケージの団体ツアーのお客様などでは、天候不良や現場での要望によって行き先を変更したりなど、臨機応変に対応できるよう現場対応力を強化しています。

樋口:当社では移動の際、例えば、日本人の方が欧米の方と一緒のバスで移動する〝混合バス〞でも相互に受け入れられていますが、タイ人の方はそのお国柄、他の国の方とバスが一緒にならないようにしています。
また、ホテルでもフロアを国ごとに分けたりと、さまざまな国柄の人がいますので、その方たちが心地よく旅行していただけるよう配慮をしています。先ほど、現場での対応という話がありましたが、オーダーパッケージツアーでは現場の添乗員にオーガナイズツアーでは当社が対応するようにしています。
臨機応変に対応することは“ピンチをチャンスに変える”、旅行会社にとっての腕の見せどころでもあります。

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タイ「TRAVEL AROUND THE WORLD」誌ではタイ語でモデルツアーが紹介された

藤岡:このように、海外との交流のプロセスにおける新しい組み合わせによって生まれるイノベーションと、徹底したニーズの把握に基づいたマーケティングで商品を売り抜くということがポイントになります。昨今、〝コトづくり〞という言葉が注目されています。日本の製造業がこれまで得意としてきた機能や品質に優れた製品を効率的に作り出す〝モノ〞づくりだけでなく、市場や消費者と共に価値を共創していく〝コト〞づくりが重要です。結果としての利益ではなく、企画を通じて利益を創り込むという発想が求められます。私は、顧客価値の共創という点では、日本のサービス業は世界トップクラスにあると思います。

波多:当然の話ですが、旅行行商品は自動車やテレビと違って完成品を目で見ることができません。天候や季節などの自然環境や道路状況など、さまざまな外的要因に大きく左右されます。人によって捉え方はことなりますが、予期せぬことが突然起こり、旅行をさらに楽しくさせたり、逆につまらなくなったり、つまり旅行は想像を超えた感動や思い出を手と人生を楽しくできる商品であると考えています。『感動のそばに、いつも。』これは当社のブランドスローガンですが、常にこの言葉を意識したサービス提供を心掛けています。また、旅行商品は旅行会社だけでは実現できません。ホテル、交通機関、飲食店など旅行に関わる人たちとの連携が不可欠で、そのパートナーすべてとWin Winな関係を築くことにより、はじめて良いサービスを提供できると考えています。

三木:旅行事業者の役割は、地域の魅力ある観光資源、宿泊施設、移動手段を結びつけて『旅行』というサービスを提供することで、その地域をPRし、お客様を呼び込み、地域経済を活性化させることです。 つまり、旅行事業者は地域の経済を活性化させるためのプラットフォームだと思っています。そのためには地域の連携、協力が必要不可欠です。そういう取り組みを日本とタイの双方でやりたいと思っています。

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神姫バスツアーズでは今年11月、「添乗員と行くタイ東北部、タイ三大祭『ロイクラトン祭り』とミャンマー国境の町&ゴールデン・トライアングル7日間」を催行

藤岡:アジア諸国の成長なくして、日本の成長もないでしょう。AEC発足によるアセアン諸国の統合においては、特に制度面でのつながりに重点が置かれます。そして、ポストAECにおいては、物質インフラ、制度に加えて、人の人とのつながりの重要性が高まるとともに、産業振興といった点で観光業が非常に重要な役割を持ってきます。
タイで観光業は重点産業ですが、タイと隣接するミャンマー、ラオス、カンボジアを含めたメコン地域において、タイは今後も観光のハブ機能を担っていくでしょう。観光業によって、地方の経済活性化も期待できますし、今後のタイと日本の相互送客で共存共栄の関係をメコン地域全体に拡げていくことができればと考えています。JTBや神姫バスの良質なツアーを通じて域内の観光業が盛り上がり、メコン地域の持続的・包摂的な発展に繋がっていくことを願っています。

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サシン日本センター
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神姫バス株式会社
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