ArayZオリジナル特集

日系製造・販売業の今がわかる タイの産業界事情

arayz nov 2014 tokushu

製造業のアジア生産拠点としてのみならず、販売市場としても中心的役割を果たすタイ。
タイ国家経済社会開発庁(NESDB)が発表した2014年第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比マイナス0.6%と、大洪水のあった11年第4四半期以来マイナスを示したものの、軍による暫定政権の発足で政情が安定したことから、8月に発表された第2四半期では大きく回復した。しかし民間投資や輸出の減少から、経済状況は一進一退を続けている。
タイ製造業を牽引する自動車業界の動向と、タイに進出している日系企業4社に各業界の特徴や傾向、展望について語ってもらった。

タイ経済の現況と今後の展開予測

NESDBの発表(8月)によると、2014年第2四半期の実質GDP成長率は前年同期比で0.4%とプラスに転じた。5月のクーデター以降、消費者の信頼感が急速に改善、民間消費が増加。
投資も建設投資を中心に回復傾向にあるが、14年の実質GDP成長率の見通しを、世界経済の回復が思いのほか弱いなどの理由から1.5〜2.0%に下方修正した。また中央銀行の金融政策レポート(6月)によると、年央には経済は回復に向かうと予測。行政機能が回復したことから、経済の回復は予想より早く15年には5.5%の成長が見込まれるとしている。
タイ国投資委員会(BOI)の集計によると、14年上半期(1〜6月)の事業投資(外国資本10%以上)認可件数は、415件と前年同期比マイナス38.4%、同認可金額は1519億8200万バーツとマイナス41.5%に落ち込んだ。新規投資は172件(478億1400万バーツ)で、拡張投資は243件(1041億6800万バーツ)となっている。
タイ商務省の貿易統計(7月)によると、14年上半期(1〜6月)の輸出は、前年同期比0.4%減の1127億ドル。
また、6 月の輸出は4ヵ月ぶりの増加(前年同月比3.8%増)となった。タイ政府は今後、下半期の輸出が増加基調に転じ、停滞するタイ経済を牽引するものと期待している。
一方、輸入(14年1〜4月)は742億ドル(15.2%減)となり大幅に減少。
タイの景気後退による国内需要の減退に伴う、消費財の輸入の減少が理由に挙げられる。国・地域別にみてみると、最大の輸入相手国で輸入額全体額の15.9%を占める日本が118億ドル(21.5%減)と大幅に減少。続く中国、米国、UAEもそれぞれ3.5%減、8.4%減、26.5%減と軒並み減少した。投資の減少を背景に、機械・同部品(9.5%減)や鉄・鉄鋼(22.3%減)などの資本財の輸入も減少している。投資の減少が生産や輸出の先行き、さらには経済全体を押し下げる要因となることが懸念されている。
15年末のASEAN経済共同体(AEC)の設立に向け、物品貿易の分野では13年末時点で、タイでは既にアセアン域内からの輸入品に対し99.9%の関税を撤廃。他方、非関税障壁やサービスの自由化の分野では、AECのイニシアチブが国内の実質的な規制緩和には結び付いていないのが実態であり、政府による取り組みの加速が求められている。
また今後、政情不安により遅れていた政府予算の執行や策定、観光客の回復などが経済成長に寄与するものと期待されている。

【情報・出典】
ジェトロ「経済状況」および「世界貿易投資報告2014年版」

タイ自動車産業の近況

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タイの産業界を牽引する自動車産業。
国内市場は2013年に政策の後押しで過去最高の自動車販売台数を記録したことから落ち込みが明らかだが、日系だけでなく欧米系完成車メーカーも、成長するメコンエリア、さらには中東を見据えた重要な生産輸出拠点としてタイを位置づけている。

2013年のタイ国内自動車販売台数は、過去最高の前年(144万台、前年比80.9%増)に比べ、133万台と7.4%減少した。輸出に関しては12年に初めて100万台を突破し、13年には112万台を達成。生産台数では12年245万台に比べ、246万台と微増となっている(表1)。

 

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タイ投資委員会(BOI)によると13年は、ホンダオートモービルのプラチンブリ県における四輪車工場の建設案件が13年で最大の332億4800万バーツの投資認可を受けたことや、トヨタ・モーター・タイランドがタイ東部チェチュンサオ県にゲートウェイ第2工場を建設、生産能力の増強を図ったことなど、自動車産業の生産拡大の動きがあった。ほかにも、トヨタ自動車のエンジン製造の合弁会社、サイアム・トヨタ・マニュファクチャリングのディーゼルエンジン生産関連、日産自動車のピックアップトラックなどの生産工場の建設などの大型投資の認可が相次いだ。
14年1〜8月期のタイ国内新車販売台数においては、マイナス38.3%(57万9273台)、日本車ではマイナス38.8%(51万4903台)となっており、新車販売の落ち込みは上半期の政情不安と景気低迷、同購入支援策の反動減が影響していると思われる。タイ工業連盟(FTI)、およびタイ自動車産業協会(TAIA)は14年の生産台数を220万台と予測しているが、輸出拡大でも国内販売数の減少をカバーできず、生産台数は13年に比べ大幅に減少するだろうとの見方が多い(表2)。

 

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自動車産業界でも〝タイ+1〞の動きは見られ、日産は15年よりミャンマーでの生産・販売を開始予定。素材系メーカーも人件費の高騰から部品製造の矢崎総業や、総合モーターメーカーの日本電産がカンボジアに進出を果たしている。

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