ArayZオリジナル特集

“中進国の罠”からの脱却を目指すタイ 2016年アジアビジネスの中心になるのはどこか

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2016年、タイはどうなる?

少子高齢化に伴う労働人口の減少、高齢化社会から高齢社会への移行期間の短さなど、社会構造的な課題へのより迅速かつ戦略的な対応が不可避となります。タイ1国のみでこうした社会構造上の問題を解決し、経済成長を担保しながら産業の高度化を図っていくことは難しいでしょう。また、タイがさらに経済成長していくためには、まず第1に周辺国から労働者を受け入れること。その際に、社会的に弱い立場になる外国人労働者をしっかりと保護していく政策を講じていかなくてはなりません。第2に、周辺国との良好な関係を構築できるかどうか。RCEPやTPPなどの自由貿易協定をめぐる動きとも関連してきます。第3に、タイがCLMVと同じ船に乗っており、一緒に対等な立場で成長していこうという意識を持てるかどうかだと思います。タイは途上国から中進国へと移行しました。今後は、1人当たりGDPの成長率が鈍化していきます。途上国という子供だった時代は成長率も高く成長が早いですが、青年から大人へと変わっていく移行期に成長が鈍化するのと同じです。量の追求から質を伴う中身のある経済成長をしていかなくてはなりません。タイ政府としては固定資産税や相続税の導入なども検討していますが、困難な社会構造上の課題へ対応していくには避けて通ることのできない議論だと思います。これまでタイは政治と経済が緩やかに結び付いていると言われていましたが、経済成長が鈍化していく将来において、どのような社会的、政治的、経済的、制度的なコンテクストを構築していくのかというビジョンを示すことが以前に増して求められることになると思います。

日系企業へのメッセージ

タイを基点とするメコン地域の経営環境の変化は、企業が地域戦略を構想するに際し、日本を主、タイを従とした縦の関係をベースとした本社主導の海外拠点のあり方を超えて、メコン域内の衛星拠点をリージョン(メコン地域)という戦略空間単位で捉えながら、横の連携を強化していくことを要請するでしょう。こうした企業レベルでの戦略を実践していくには、メコン大での俯瞰的視点(鳥瞰)と企業レベルでの仰瞰的視点との往復運動が不可避となります。
世界経済がモノ・資本のパラダイムから情報・ヒトのパラダイムに移行していることを正しく理解すれば、これまでのハードパワーからソフトなパワー、つまり資本の力による統制から、パートナーとして選ばれる力を高めていくことが大切になることが理解できるはずです。
まさに、メコン地域をめぐる企業経営は、製品・サービスをめぐる競争から、コラボレーションをめぐる競争へと移っていくでしょう。
単に、日本からモノやサービスを売りに新興国へ来るのではなく、日本企業の強みを活かしたソリューションの提供を通じて新たな価値を共創していくヒトづくりとイノベーションが、持続的な競争優位の確立には不可避になるのです。
こうした観点から、サシン日本センターでは、日本経済新聞社( 日経ビジネススクール)や日本の経営大学院と協力をして、アジアで価値共創を担う高度人材育成に力を入れていきます。最後に、日タイの戦略的互恵関係の構築を通じてメコン地域の包括的・互恵的・持続的な発展を目指すというビジョンは、結局は地域住民の幸福という絶対価値の追求なくして、実現しないということを忘れてはなりません。地域住民の幸福から遊離する利己的な経済価値の追求を目指すと、こうしたビジョンは空虚な抽象概念に過ぎないのだということを指摘しておきたいと思います。

arayz dec 2015 tokushu日経ビジネススクール」アジア特別講座で講演する藤岡所長

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