ArayZオリジナル特集

産業集積、消費市場としてのタイ+1 CLMVの基礎知識&最新事情

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ベトナム編

arayz apr 2016

成長を加速させるインフラ整備

2015年の一人当たりGDPは、北に位置する首都ハノイ市で3348米ドル、南に位置する経済都市ホーチミン市で5200米ドルと(全国平均2171米ドル)、南北で異なる顔を持つのがベトナムの特徴だ。
経済成長率は2012年時5.2%、13年時5.4%、14年時6.0%、15年時6.7%で、マクロ経済からみれば、〝この3年間は安定的成長と成長加速の目標を達成した〞と捉えることができる。物価や為替も安定している。
経済成長に伴い、自動車販売台数も13年時10万台、14年時16万台、15年時24万台と年々増加。しかし、この急激な自動車の普及により渋滞が増加、都市インフラ整備が課題となった。そのソリューションのひとつとして現在、日本のODAでホーチミン市地下鉄1号線工事が行われており、20年に開通予定だ。また、ハノイ市―ホーチミン市を結ぶ南北統一鉄道(単線、無電化)は橋梁の架け替えが進んでいるが、同区間の移動には30時間という所要時間がかかるため、時速160kmの高速鉄道化が検討されている。
15年に開通したハノイ〜ハイフォン高速道路をはじめ、都市近郊から郊外に延びる道路が大幅に改善している。北は中国から南はホーチミンまでを全4車線で繋ぐ全長約2500kmの高速道路建設プロジェクトも進められている(15年時で720kmまで開通済み)。
ホーチミン市のタンソニャット空港が間もなく許容量の限界を迎えるため、ロンタン新国際空港建設計画が進められているほか、ハノイ市のノイバイ空港では日本のODAにより新ターミナルが稼働。港湾では、ベトナム全国のコンテナ取扱量のうち南部ホーチミン市周辺が7割のシェアを占めており、南部カイメップチーバイ港(深さ14〜16m)が国際的重要港湾として稼働しているほか、北部ハイフォンのラックフェン港が開発中だ。

2015年に改正された投資法と企業法

投資法と企業法が約10年ぶりに全面改正された。2015年7月1日付で05年に施行された共通投資法(59/2005/QH11)および統一企業法(60/2005/QH11)に代わり、改正投資法(67/2014/QH13)および改正企業法(68/2014/QH13)が施行される。ベトナム政府は今回の改正の趣旨について、「透明な投資環境を整備し、外国からの投資先としての魅力を高めること」と説明している。今回の改正に際しては、草案策定の段階からベトナム日本商工会(JBAV)が、当地法律専門家や日本大使館、ジェトロなどと協力して、策定に携わるベトナム政府関係機関に対する意見書を14年10月に提出していた。
同意見書には、企業側の関心が高い投資保護や外国法適用、企業設立手続きなどに関する要望が盛り込まれていたが、改正法にはその多くが反映されるかたちとなった。
また、ベトナム政府は16年1月25日付で外国企業の駐在員事務所・支店設立に関する政令(07/2016/ND-CP)(以下、政令7号)を公布、3月10日から施行されている。日系企業で案件が多い駐在員事務所設立に関し、政令7号では活動内容や設立要件などが一部厳格化されることとなった。

arayz apr 2016

 

タイに近い投資奨励政策

2015年7月1日に有効となった投資法(67/2014/QH13)に基づき、新素材、新エネルギー、ハイテク製品、バイオテクノロジー、IT技術などが奨励業種に指定された。
奨励投資地域には、困難な経済・社会状況の地域(奨励投資地域)、特別困難な経済・社会状況の地域(特別奨励投資地域)のほか、工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済区が定められている。
優遇措置としては、①期限付きまたは投資プロジェクトの実施期間全部について通常の税率より低い法人所得税率適用、法人所得税の減免、②固定資産を設置するための輸入商品、投資プロジェクトを実施するための原材料、部品に対する輸入税の免除、③土地賃貸料、土地使用料、土地使用税の減免がある。

続く法人税の引き下げ

ベトナムの日本商工会会員数は2016年2月時点で1543社、法人、駐在員事務所を含む日系企業法人数は全体で2500程度と増加傾向にある。
25%だった法人税は引き下げが続いており、13年7月から中小企業で20%、16年1月から一般企業でも20%ととなり、優遇企業では17%となっている。

ジェトロ(日本貿易振興機構)・ホーチミン事務所の安栖宏隆所長に聞いた
日系企業の目線で見るベトナム進出

arayz apr 2016
ジェトロ・ホーチミン
安栖宏隆事務所長

―ベトナム進出の魅力とは?

ベトナム政府は10のFTAとTPP締結し、経済連携を強化しています。これは、単に貿易投資を促進するのみでなく、各種制度を世界標準に合わせるために、ある意味、外圧を活用して国内の改革を加速するのが目的です。ベトナム戦争など、停滞期の遅れを取り戻すための努力を続けていることは評価に値します。ただし、ベトナムの弱点は法制度が整備されても、その実施面で不透明さが残ってしまう点があり、ビジネス環境の改善のため、ジェトロ、商工会などでは中央・地方政府と頻繁にコミュニケーションを行っています。
また、AECによる関税削減効果のある製品は、タイからベトナムへ輸出するとメリットがありますが、安い賃金に加えてTPPも踏まえると、タイからベトナムへの部品供給よりもベトナムでの製造により優位性が確保できるため、ベトナム投資を検討する企業がさらに増加すると思われます。

―タイ+1としてのベトナム進出メリットとは?

自動車部品や家電分野では、タイの工場の能力が上限に達し、次の工場をどこかに作る必要がある状況の中で、生産コストが安く、国内需要の大きな伸び代が期待できるベトナムが選択されるケースが多いと感じます。タイの自然災害や政治的問題などで生産が満足に行えない状況に備えて、バックアップ工場という位置づけも含めてベトナムに工場をつくるケースもあり、実際に2011年のタイの大洪水の際、ベトナム工場にて代替納品可能であったため被害を最小限に抑えられた、などリスクヘッジの効果の声がありました。

―ベトナム進出を検討する企業に耳よりな情報を教えてください。

ベトナム南部では、ホーチミン市のタンソンニャット空港がロンタン空港に移転されることが決まっています。ロンタンはドンナイ省南部に位置し、すでにホーチミン市からの高速道路も整備され、中心部からは20~30分程度の距離です。また、その南方面には深海港のカイメップ・チーバイ国際港があり、欧米方面への直行便もあるため、ホーチミン市東部方面は都市との距離や海・空インフラで大きなメリットがあります。この周辺の工業団地は日系、タイ系、地場系とさまざまな企業が操業しており、進出計画を進める企業も多くあります。
都市近郊の交通インフラ整備が進展した結果、ハノイ市やホーチミン市から2時間圏内に、カンボジアやラオスより土地借地料や最低賃金が有利な地域もあります。
ベトナムはタイやCLMよりも休日が少なく(年間10日)、ワーカーの生産性が高いため、まだまだ割安感の高い進出先エリアが拡大していると思います。

【情報提供・取材協力】
日本貿易振興機構(ジェトロ)・ホーチミン事務所
14th Floor, Sun Wah T ower, 115 Nguyen Hue Street, District 1, Ho Chi Minh City
+84-8-3821-9363
www.jetro.go.jp/jetro/overseas/vn_hochiminh/

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