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TPPからのシフト、アジアのメガFTA 東南アジア地域包括的経済連携 RCEPとは

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RCEPとTPP

TPP(Trans-Pacific Partnership環太平洋パートナーシップ協定)は、アメリカ、日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの合計12ヵ国で、高い水準の包括的なバランスの取れたFTAを目指し、交渉が進められてきた。

TPPを主導してきたのはアメリカだ。2002年にシンガポール、チリ、ブルネイ、ニュージーランドの4ヵ国がAPECサミットの際に交渉を開始し、06年に発効した環太平洋戦略的経済連携協定(TPSEP、通称「P4」)に参加するかたちで、08年3月、ブッシュ政権がFTA構想を提唱。オバマ政権に入った09年11月には、TPP参加を明らかにした。日本は13年7月に参加を表明、15年10月のアトランタ閣僚会合においては大筋合意に至っていたが、今年1月、ドナルド・トランプ新大統領がTPPの離脱を決定。TPPの発効には、加盟12ヵ国のGDPの85%以上を占める、少なくとも6ヵ国以上の承認が必要なため、アメリカが離脱を決定したことで、TPPは現在、発効の目処が立たなくなっている状況だ。

TPPは、非関税分野や新しい分野を含む包括的な協定であり、FTAの基本的な構成要素である物品市場アクセス(物品の関税の撤廃・削減)やサービス貿易のみでなく、投資、競争、知的財産、政府調達といった非関税分野のルールづくりのほか、環境、労働、分野横断的事項などの新しい分野を含む包括的協定として交渉されてきた。

日本はTPP参加国のうち、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、オーストラリア、メキシコ、ペルー、チリの8ヵ国とすでに二ヵ国間FTAを締結しており、関税の撤廃が進められている(図表1参照)。TPP参加国だけでなく、日本はRCEP参加国とも二ヵ国間FTAを締結しているが、相手国は日本よりも規模の小さい国が主で、また原産地規則などにおいて、それぞれ違ったルールが定められていることが企業活動の障壁になっているという意見もある。
一方でRCEPやTPPは多国間の協定であり、それぞれRCEPは中国、TPPはアメリカという大国を含んでいることから、実質的にはRCEPは中国とのFTA、TPPはアメリカとのFTAとも考えられている。日本にとって、RCEPには二ヵ国間FTAを締結していない、中国、韓国、ニュージーランドが含まれ、特に中国の存在は大きい。また、TPPはやはり、締結していないアメリカとのFTAを意味していると言っても過言ではない。

もし、このままTPPが発効されなければ、RCEPが東アジアにおいて唯一の広域FTAとなる。また世界的にも唯一のメガFTAになる可能性があり、日本経済および日本企業にとってRCEPが重要な意味を持つであろうことは、世界経済における広域FTAの構成割合をみれば納得がいく(17・表3)。

GTA(現IHSマリタイム・トレード)が発表した14年時のTPP参加国、RCEP参加国との日本の貿易を見ると、輸出では対TPPが2136億ドル、対RCEPが3075億ドルと、RCEPがTPPを大きく上回っている。輸入では対TPPが2044億ドル、RCEPが3883億ドルと、さらに格差が広がる。多国間協定で企業にとって使いやすいルールが統一されれば、越境サプライチェーンが促進されるだけでなく、貿易の拡大、対内外直接投資活性化、国内産業の競争力強化といった経済効果が期待できるということだ(表4)。

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