「タイプラスワン戦略における日タイ企業の連携可能性」 交流会開催

東京都中小企業振興公社タイ事務所とタイ工業省は11月18日、バンコク市内のホテルニッコートンローで毎年恒例の「日タイ企業交流会」を共催した。4年目となる今回のテーマは、「タイプラスワン戦略」で、タイ周辺国での日タイ企業の連携可能性などを探った。

近年、安価な労働コストや急速な経済発展を背景に、生産拠点のみならず市場として、日本企業およびタイ企業が注目しているのが、カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)だ。こうした新興国を活用して効果的に事業を展開するためには、日本企業とタイ企業がどのように手を組むべきかを、経営コンサルティング事業などを展開する野村総合研究所タイへの委託調査の報告や、グローバルな自動車部品サプライヤーであるデンソーのASEAN戦略を参考にセミナーが行われた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所の竹谷厚所長、日タイ企業の交流・取引促進に取り組んでいる東京都中小企業振興公社の保坂政彦理事長とタイ工業省産業振興局(DIP)のナタポン局長の挨拶に続いて、登壇した野村総合研究所(NRI)タイ の加藤 悠史グループマネージャーは、進出形態を①市場拡大型②製造工程移管型③輸出加工型――に区分したが、3カ国とも進出先として一長一短があると指摘した。

カンボジアはタイとベトナムとの近接性による物流や技術移転が容易だが、最低賃金が最も高い。内陸のラオスは港湾がなく、労働人口が少ない。一方、労働集約型産業に適しており、タイ語が通じるのがメリット。ミャンマーは人口規模などで、消費市場としてもっとも魅力がある。最低賃金が最も低いため、輸出加工に一番適しているが、サプライチェーンが依然脆弱だ。

多くの日系企業がコスト削減を目的にタイ周辺国に進出する「守りのタイ+1」戦略をとる一方、タイ企業は売上増を狙い、市場を拡大している「攻めのタイ+1」を展開。日系企業はその強みを活用し、人材面に加え、製品現地化の実績が豊富なタイ企業と協業する形を模索することが求められている。

「デンソーのタイ+1戦略」を題目に講演したデンソー・インターナショナル・アジアの末松正夫上級副社長によると、同社はASEANとインドを中心にアジア域内で42拠点体制を構築。域内関税がゼロのASEANでの基本戦略は、エアコンなどのバルキー製品は「顧客隣接」、コンプレッサーなどの小型高機能製品は「集中生産」。人手の掛かる事業を域内に生産移管する「玉突き戦略」で、ASEANの成長を加速させている。

域内のリーダー的な存在のタイはマレーシア、インドネシアとともに「勝ち組」と位置づけられ、人口が一億人規模のベトナムとフィリピンが「次なる地域成長エンジン」として期待される。新・新興国のCLMは、「更なる競争力強化の追求基地」としての役割を担う。CLMの中で、内需は小さいがインフラが整備されているカンボジアに一部の部品を移管したデンソーだが、工場のオペレーションはタイ人がカンボジア人を指導し、協同で運営している。

タイには付加価値のある製品の生産を期待しており、重要性は変わらないと強調した。一方、円高で、日本が海外に製造先と市場を求めたように、タイも同じ道をたどると予測する。 デンソーはASEAN域外との市場統合を推進する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の動きを注視するなか、農産物の生産から販売まで手掛けるなど、非車載分野に力を入れている。

午後には、スリヤ工業相が会場を訪れたほか、日タイ企業25社が商談に臨んだ。包装材などを製造するCGAゼネラルマネージャーのパンワッド氏は、「すでに数社の日系企業と取引をしているが、さらに事業の拡大を図りたい」と、協業に意欲を示した。

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