主要輸出先市場の落ち込み
自動車メーカーは4月~6月まで需要急減による在庫の積み上げに直面し、厳しい減産を強いられた。タイの6月の生産台数は前年比58.5%減の71,704台、輸出台数は同48.7%減の50,049台と依然厳しい状況にある。
地域別では主要輸出先の落ち込みが大きい。タイ最大の輸出先であるオセアニア市場は1月~6月の累計で前年比44%減。しかし、オーストラリアの6月の国内販売は同6.4%減まで回復し、「タイ産自動車の在庫は非常に不足している状態」(豪州市場関係者情報)にあり、輸出の回復が期待される。ただ、7月は感染再拡大の影響で12.8%減に悪化した。
第二の輸出地域であるアジアは主要輸出先であるマレーシア、フィリピン、ベトナムなどでのロックダウンの影響で1月~6月は前年比42%減となっている。しかし、フィリピンやベトナムでは自動車関連税制軽減措置により国内市場は急回復しており、今後各社は積極的に輸出拡大を図ると予想される。
第三の輸出地域である中東は、サウジアラビアでのVAT導入前駆け込み需要の影響もあり、1月~6月の輸出は前年比6.7%と唯一のプラスとなっている。ただし、足元ではロックダウンの購買意欲への波及、石油価格の頭打ち、政治の不安定化などから、市場は同10%以上減に転じている。
今後の回復の展望
輸出の回復は市場回復から数ヵ月のタイムラグがあり、タイからの自動車輸出は7月以降により回復のペースが速まることが予想される。このまま主要市場の回復が続けば、通年では前年比30%減程の60万~70万台に落ち着くと見られる。
ただし、オーストラリアが第二波の発生で7月に再度市場が収縮したように、まだ予断を許さない状況にある。感染が遅れて拡がるアフリカや中南米など新興国でもさらなる景気悪化が懸念される。また、中期的には周辺国での保護主義の強化による完成車輸入の削減や、周辺国に対するバーツ高により来年以降のタイの自動車輸出の回復が制約を受ける可能性がある。(10月号へ続く)
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