2016.05月号

知的財産経営in東南アジア 「下町ロケット」のあのシーン、会社で起こったらどうしますか?【第3回】|Masuvalley

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中小企業でも良い特許があれば、 大企業と対等以上に戦えるって本当なの?

前回のコラムで、ビジネスが対象になる知的財産権の案件では、発生した損害の基礎となる対象がその売り上げ金額になるとお話しました。ドラマ・下町ロケットの第一話で、佃製作所の主力商品であるステラエンジンがナカシマ工業から特許侵害で訴えられ、その損害に対する賠償金として90億円を求められたのも、知的財産の世界では実際にあり得る話です。
しかし、第二話では、佃製作所がナカシマ工業の主力製品であるエルマーⅡエンジンに対して、佃製作所の保有している特許権を侵害していると訴え返し、その主張が裁判官に認められます。結局、佃製作所は56億円の損害賠償金をナカシマ工業から得ることとなり、最終的には和解に至りました。ナカシマ工業からしてみれば、自分たちから訴えたはずが、佃製作所からもナカシマ工業の主力製品に対する訴えを起こされてしまい、企業イメージが低下、結果として大損してしまったことになります。現実にもこんなことは起こり得るのでしょうか?
大企業同士の特許のクロスライセンス交渉においても、両者の特許力が同じ場合、発生する損害の基礎がその売り上げ金額となるため、売上が大きい企業が不利になります。

例えば、大企業であるナカシマ工業のエルマーⅡエンジンの売り上げが年間100億円、中小企業である佃製作所のステラエンジンの売り上げが年間10億円あるとします。その上で両社に同じレベルの特許があった場合、必ず佃製作所が勝ちます。裁判所が両者の損害賠償額を計算する際、同じレベルの特許であれば料率も同じレベル(例えば5%)になる可能性があるからです。

ナカシマ工業の売上額 × 裁判所の料率 = 佃製作所が得る損害賠償額
佃製作所の売上額 × 裁判所の料率 = ナカシマ工業が得る損害賠償額

料率が同じレベル(例えば5%)であれば、佃製作所が得る損害賠償額は年間5億円で、ナカシマ工業が得る損害賠償額は年間5千万円ということになります。 つまり、売上高が大きい大企業の方が圧倒的に不利なのです。この例えなら、裁判所が両者の金額を差し引いた結果、佃製作所に対して年間4億5千万円を支払うよう、ナカシマ工業に命じることになりますね。 中小企業であっても良い特許があれば、大企業と対等以上に戦うことができることが理解いただけたか と思います。
(次回はArayZ 6 月号に掲載されます)

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執筆者:舛谷威志
東南アジア、日本、アメリカ、中国に拠点を持つMasuvalley and Partnerのオーナー兼パートナー。2004年にアメリカで起業した後、多国間にまたがる技術法務の現地事務所を各国に設立。現在、弁護士・弁理士は、日本人5名、アメリカ人5名、中国人・タイ人合わせて5名の、合計15名が所属。

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