日刊工業新聞

グローバル経営 適地生産適地販売 フォスター電機―車載スピーカー生産加速

ASEAN拡張、米に拠点

フォスター電機はグローバル生産・供給体制の最適化を進めている。昨今、スマートフォン向け部品需要の成長鈍化が鮮明になっていることから、事業の主軸を車載向けスピーカーに置こうと、車載用ビジネスを強化している。2017年12月にミャンマー・ティラワ工場の拡張を実施したほか、米国でも20年春の稼働を目指し、テキサス州エルパソで生産体制の構築を進めている。

 フォスター電機は車載用・民生用スピーカーと、ヘッドホン・ヘッドセットなどを生産している。18年3月期連結決算におけるスピーカー事業の売上高は全体の約41%を占める約755億円。このうち既に8割以上が車載用スピーカーの売り上げだ。

 今後、電気自動車(EV)や自動運転の時代が到来することから、吉沢博三社長は「警報音スピーカーや接近通報音用スピーカーなどの需要が増え、車1台当たりのスピーカー搭載個数が劇的に増える」と予測。需要に見合った供給体制を整備中だ。

 車載用スピーカーの生産は、中国、ベトナム、ミャンマーで行っている。3ヵ国の中でも人件費の高まる中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)へ生産シフトを急ぐ。車載用を中心としたスピーカー生産は、ベトナム・バクニン工場が現状月産500万個体制にあり、今後もこれを維持する計画。ミャンマー・ティラワ工場は17年に拡張工事を終え、同100万個の体制にある。19年度中に同150万個体制とし、さらに中国からの生産シフトで22年度には同2倍に引き上げ、ASEANの主力製造拠点に育成する計画だ。

 一方、北米ではテキサス州のエルパソの物流センターを活用して車載用スピーカーの生産体制の構築を進めている。年内にも設備導入を終え、20年春の稼働を目指している。きっかけは、通商問題などを視野に地産地消を事業戦略とする同社と北米自動車メーカーによるスピーカーの現地生産化のニーズが合致したことにある。

 求められたのはプラスチック成形品と一体化したスピーカーの生産だ。そこで、フォスター電機はアジアで生産した基幹部品を北米に輸送。プラスチック成形品などを現地で調達し組み立てるビジネスモデルが最適と判断した。また現地の人件費が高いことからオペレーター2人を付けて日本で開発中の最新鋭の自動化設備を導入する方針。近い将来、月産50万個を目指している。

 これに先行して中国で試験的に機械化・省力化を進めてきたこともあり、吉沢社長は「人間が担当する部分と機械が担当する部分がかなり分かってきた」と話す。人と機械を調和させる生産体制の構築を目指している。

 最適な生産体制を作るため、基幹部品をアジアで生産し、現地で組み立てるビジネスモデルと機械化・省人化のモデルを今後、中国やASEAN、将来は欧州エリアでも活用していく。
※記事提供:日刊工業新聞(山谷逸平2019/5/1)


車載用スピーカーを今後のビジネスの主軸にしていく(ミャンマー・ティラワ工場)

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