第2回人材育成円卓会議、他業界に流れる工学部卒業生への魅力提示を

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2015年11月に日本政府が発表したの産業人材育成協力イニシアチブの実現に向け、日タイの人材育成協力の方向性を議論するため、在タイ日本国大使館とJICAの共催による“第2回人材育成円卓会議”が20日、バンコク都内にて開催された。

若手エンジニアなどをパネリストに招聘し、“製造業における若手タイ人技術者のキャリア開発”をテーマに行われたパネルディスカッションでは、はじめに日本国大使館の内川昭彦公使が、2016年にAdeco Thailand社がタイの児童に対し行った“将来の夢”についての調査で、エンジニアは医者、アスリート、シェフに続く4位だったことを紹介。

これに対し、パネリストらは児童にとって“世の中にないものを発明する”エンジニアは夢の職業でるのにエンジニアが不足しているというのは、タイではまだ研究開発の面では発展途上でることから、エンジニアが生産の現場をメーンとした職業になっており、そこに現実と夢のギャップがると指摘。そのほか、給料や特に日系企業においてはキャリアパスがはっきりしていないといった不満がるのでは―といった意見が挙げられた。タイでは“早く成功を手に入れたい”と考える若い人たちが多いこともり、それに応えられるものがれば、給料に代わる魅力になる可能性がるとの提案もった。

 

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“日タイ人材育成イニシアチブ”をテーマに行われたパネルディスカッションでは、Pichet Durongkaveroj・タイ科学技術省大臣、Thavorn Chalassathien・タイ工業連盟副会長、Suchatvee Suwansawat・キングモンクット工科大学ラカバン校(KMITL)学長、丁野良助・東レ・インダストリーズ・タイランド代表取締役、三島良直・東京工業大学学長、佐渡島志郎・在タイ日本国大使館特命全権大使がパネリストとして登壇。若手エンジニアらのパネルディスカッションに続き、司会はSuthichai Yoon・ネーションCEOが務めた。

タイのエンジニア人材について、“質・量ともに足りない”という課題がまずは挙げられた。丁野代表取締役は「大学に要請しても絶対量が足りていない。自動車産業や電子産業に人材が流れ、繊維業を行う当社まで人材が回ってこず、必要なエンジニアの数が満たせていない」と話した。三島学長は企業が求める人材を大学が育てられていないことが課題としたうえで、「企業のグローバル化に伴い、企業内研修での人材育成には限界がきている」と大学の役割について述べた。

Suchatvee学長は工学部卒の学生が製造業より報酬の高い金融業界や政治、起業経営などの道に進んでいる現状がるとし、製造業界が若い人たちにチャレンジできる魅力的なステージを用意する必要がるとの考えを示した。また、佐渡島大使は「タイはサプライヤーが揃う製造業にとって魅力的な国ではるが、近隣国に比べ、教育への投資が高くない」と指摘した上で、日本政府として経済的支援だけでなく、産官学一丸となって協力する用意がることを強調した。

 

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同会議では冒頭、日本政府が第1回の内容を踏まえ、①タイ産業構造の高度化への貢献、②産業界の正確なニーズの把握、③質と量を両立させたエンジニア育成、④教育への投資増加、⑤タイがASEANにおける人材育成ハブを目指す―の5つのコンセプトによる提案も発表された。

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