JICA、インド向け公共交通機関の整備支援における円借款契約に調印

国際協力機構(JICA)は4日、デリーにてインド政府との間で2事業、総額1,024億1,500万円を限度とする円借款貸付契約に調印した。この2事業は、インド西部グジャラート州アーメダバード市において、大量高速輸送システムを建設することにより、増加する輸送需要への対応を図ることにより、交通渋滞の緩和と交通公害の減少を通じた地域経済の発展および都市環境の改善を目指す。

インド西部のグジャラート州アーメダバード市および周辺地域も含めたアーメダバード都市圏、インド国内で第4の人口規模を持つインド南部のタミル・ナド州チェンナイ市および周辺地域を含めたチェンナイ都市圏では、人口の増加および産業の発展に伴い、年々自動車、二輪車の数が増加し、市内の交通渋滞が悪化。また、両都市圏では、交通渋滞の悪化に伴い、大気汚染や騒音、振動などの交通公害も深刻化しており、早急な対策が必要となっている。この2事業では、両都市圏に大量高速輸送システムを整備することにより、問題の抜本的な対策を行っていく。

この2事業では、駅部へのエレベーターや点字ブロックの設置、車内での車椅子スペースの確保など、高齢者・障害者に配慮したユニバーサルデザインを取り⼊れた設計としているほか、女性専用車両や監視カメラの導入など、女性が安全に利用できる環境づくりを目指している。

インドは、2005年から07年にかけて9%を超える高い経済成長率を達成し、00年代以降成長著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の一員として注目を浴びてきた。08年以降は世界的な景気後退の影響を受けて経済成長は減速したが、14年に入り、経済重視の姿勢を掲げるモディ政権が成立して以降、再び7%を超える高い経済成長を続けている。

インド政府は、国家開発計画でる第12次5ヵ年計画(12~16年度)において、「Faster, Sustainable and More Inclusive Growth」を目標として掲げている。また、今次5ヵ年計画内の対象期間内に約1兆ドルのインフラ整備を進める予定だ。

1960年のグジャラート州発⾜時に州都となったアーメダバードは、1970年にガンディナガールに州都が移されてからも経済活動の中心地として発展し、同州最大の都市となっている。2001年に現インド首相のナレンドラ・モディ氏が州首相に着任してからは積極的なインフラ投資と外資誘致政策を展開し、15年1月時点で日系企業だけでも220社進出するなど、全州の中でも顕著な経済成長を成し遂げている。

経済成長による都市化の進展に伴い、アーメダバード市の人口は91年の342万人から11年時点で559万人へと約63%増加し、車両の登録台数も02年の129万台から14年には336万台と3倍近くに急増。

一方で、市内の用地不足により既存道路網の拡張余地は少なく、交通渋滞が深刻化し、経済損失の増大と深刻な大気汚染が問題となっている。今後も人口や自動車の増加は続く見込みでることから、大量高速輸送システムの整備が喫緊の課題となっていた。

チェンナイ都市圏の人口は870万人(2011年)と、ムンバイ、デリー、コルカタに次ぐインド第四位の規模でり、インド南部最大の都市圏として南インドの政治・経済の中心となっている。同市では、インド国鉄がチェンナイ中心部と郊外地域を結ぶ郊外鉄道およびチェンナイ市周辺部における都市鉄道を運営しているが、増大する需要に応じたネットワークが形成されていないなど、都市内の移動手段としての利便性が確保されておらず、道路交通に依存する状況が続いている。

また、チェンナイ都市圏の人口増加および所得向上に伴い、自動車登録台数の伸びが著しいことに加えて、急速に商業・工業地区が分散・拡大していることから、交通渋滞は著しく悪化しており、市内での車両の平均走行速度は時速15km程度にとどまっている。

このような状況の下、インドのほかの大都市同様、渋滞による経済損失、大気汚染や騒音といった自動車に起因する公害による健康被害が問題となっており、大量高速輸送システムの整備が必要となっている。

本事業に対しては、第一期(2008年11月貸付契約調印、217.51億円)、第二期(10年3月貸付契約調印、598.51億円)、第三期(2013年3月貸付契約調印、486.91億円)の円借款を供与済み。また、15年6月に2号線のコヤンベドゥ駅~アランドゥール駅間が部分開業済みとなっている。

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