水産業における「ビジネスと人権」の取組み、サシンでセミナー開催

経済人コー円卓会議(日本委員会およびタイ委員会)、チュラロンコン大学サシン経営大学院日本センター及びサステナビリティ&アントレプレナーシップセンター、明治大学ビジネススクールは6月5日、サシン経営大学院でセミナー「Workshop: Business and Human Rights in Japanese Companies Implementation and Lesson Learnt from Fishing Sector in Thailand」を開催した。参加した約100人の在タイ日系企業の経営幹部や大学院生らを前に、日米タイの国際・政府・教育機関と民間企業の有識者が、人身取引や強制労働が横行するタイにおける「ビジネスと人権」の現状や漁業分野における人権尊重の取組みについて意見を交換した。

「ビジネスと人権」の取り組みがグローバル規模で進んでいる。企業には、変化する事業環境(法規制も含む)や利害関係者の関心事項(環境・社会・ガバナンス(ESG)投資家の関心事項も含む)を把握し、自社の人権リスクを捉え、少しずつでも確実に人権尊重を進めることが求められているという。

ビジネスを通じて社会をより自由かつ公正で透明なものとすることを目的とした、ビジネスリーダーのグローバルネットワークである経済人コー円卓会議日本委員会の石田寛事務局長は、「ビジネス人権」のグローバルトレンドとマネージメントの重要性を訴えた。企業は人権尊重に関して、社会的変化をもたらすことができるが、複雑な問題を解決するためには協働が必要と指摘。複雑な問題に対処するという事はコミットメントであり、長い道のりであると締めくくった。

サシン日本センター所長および明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科准教授の藤岡資正氏は、「コミュニティに受け入れられる企業活動のあり方と、これが生み出す非財務価値:二分法的思考を超えて」を題目に講演。日本資本主義の父といわれる渋沢栄一氏の道徳経済合一説「論語(道徳)と算盤(利)とは一にしてニならず」を取り上げ、算盤(経済活動)は論語(道徳)によって動かされており、論語は算盤によって真の価値が生まれると説いた。

人権侵害や違法漁業などサプライチェーンの浄化が求められている水産業界。海産物を調達・製造する商社や食品製造・小売業者にとって、他人事ではない。パネルディスカッションでは、ツナ缶世界最大手タイ・ユニオン・グループのマクべイン・グローバルダイレクターと開発途上国への資金・技術援助を行う米国国際開発庁(USAID)のパチャリブーン氏が、水産業における人権尊重や人身取引対策などについて議論した。

最後に行われたワークショップでは参加者全員が円卓を囲んで「ビジネス人権をサプライチャーンで実践するにあたり、日本企業が直面する課題」などについて考察した。

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