2016.01月号

カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2014年9月号

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タイ経済・月間レポート(2014年9月号)

2014年7月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2014年7月の重要な経済指標によると、タイ経済は依然として徐々に回復する兆しを示しました。民間支出は過去数ヵ月連続の信頼感改善により、緩やかな回復を示しました。
しかし、世界市場の購買力が完全に回復していないこと、および一部のタイ企業が生産制約に直面していることにより、輸出の回復は遅くなる可能性があります。

クーデターの後、タイ経済は徐々に回復

  • 2014年7月の一部のタイ経済部門は、回復傾向が継続していることを示しました。一部の民間支出指数は過去数ヵ月連続の信頼感改善により、回復しました。しかし、タイの輸出に関しては、米国とユーロ圏の購買力が回復を続けているにもかかわらず、アジア市場の需要の弱さにより減少しました。
  • 新政府が成立し政策が明確になったことにより、今年残りの国内支出活動が刺激を受ける可能性があります。また、今年残りのタイ経済へのインフレ圧力は以前の予想より低下する見通しです。
    しかし、タイ輸出は依然として不安定な動きが見られています。その主な要因は、世界の農産物価格が鈍化傾向、中国や日本などタイの主要輸出先の経済回復テンポが依然として不安定な状態などの下押し圧力によります。従って、カシコンリサーチセンターは、2014年のタイ輸出予想を以前の予測である前年比3.0%増から、新たな予測の同0.3%減に下方修正しました。
  • アジア市場向けの輸出が全体的に低迷を続けていたため総輸出額は減少しましたが、タイと国境を接する隣国(カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM))との貿易は引き続き拡大する傾向があります。国境貿易は現在タイの貿易総額の約6.6%を占めています。

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7月の民間支出は徐々に回復を続けている兆しが見えました。政治状況の安定化が、消費者と企業のタイ経済への懸念を軽減させる主な要因となりました。7月の消費者信頼感指数は6月の75.1から78.2に上昇し、過去11ヵ月ぶりの最高水準となりました。また、7月のタイ産業信頼感指数も、6月の88.4から89.7に上昇し、過去8ヵ月ぶりの最高水準となりました。信頼感が連続して回復したことから、消費者が非耐久消費財の購入に前向きになる見通しです。それにより、7月の民間消費は6月の前年同月比1.4%減から同0.2%増に転じ、過去10ヵ月連続のマイナス成長からプラス成長に転じました。しかしながら、家計債務問題および融資基準の厳格化が主な要因となり、耐久消費財向けの支払い金額は減少しました。
民間投資に関しては、信頼感が回復していたにもかかわらず、大部分の企業は未だに経済動向および政府の明確な政策を注視する姿勢を続けました。その結果、7月の民間消費は6月の前年同月比2.7%減から同3.4%減となりました。
7月の工業生産は6月の前年同月比6.3%減から同5.2%減となりました。国内向けの工業生産は同8.0%減少しました。メンテナンスのために製油所がシャットダウンされ、石油およびプラスチック製品の生産量が減少したことが要因の一つになりました。国内および輸出向けの工業生産も、自動車の国内販売台数が減少したため同18.4%減少しました。一方、輸出向けの工業生産は電子製品、電子回路およびハードディスク駆動装置(HDD)の生産が増加したため、6月の同2.7%減から同3.6%増に転じました。
輸出に関して、7月の輸出額は6月の前年同月比3.8%増から0.5%減に転じました。その主な理由は、アジア地域の市場の需要が弱くなったことにより、農産物や電気製品などの輸出品の輸出額が減少したためです。また、タイの技術開発力の水準が依然として世界市場の需要を満たすことができなかったため、電子回路やHDDなどの電子製品の輸出は減少しました。
さらに、石油の輸出も2014年8月の上旬までメンテナンスのために製油所がシャットダウンされたことの影響を受け、減少しました。
一方で、機械・部品、石油化学製品や自動車・部品などの主な輸出品は、世界景気の回復により引続き増加しました。

 

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商務省が発表した2014年8月の貿易統計によると、タイの輸出額(189億4300万米ドル)は前年同月と比べ、7月の0.85%減から7.40%減に大幅に減少しました。8月に大幅に減少した輸出品は、石油(16.1%減)と金(92.9%減)です。石油と金の輸出額を除いた場合、8月の輸出額は前年同月と比べ1.48%減少しました。
8月のタイ輸出を品目別に見ると、農産物・加工品の総輸出額は、前年同月比2.7%増加し、3ヵ月連続の増加となりました。特に、コメとタピオカはそれぞれ同30.6%増と32.9%増となりました。
一方、主要工業製品の総輸出額は、前年同月比8.7%減に転じました。特に、総輸出額の12.8%を占めている自動車・部品は、インドネシアとオーストラリアなどの主な輸出先向けの輸出が減少したため、前月の同14.5%増から同8.9%減に転じ、2ヵ月連続のプラス成長からマイナス成長に転じました。また、エアコン・部品、化学製品や繊維などもそれぞれ同10.9%減、4.0%減、6.0%減となりました。成長を続けたタイの主要輸出先は、CLMV諸国やフィリピンなどです。しかし、米国、日本、ユーロ圏や中国などタイの主要輸出先向けの輸出は減少しました。 バーツ相場の変動については、タイバーツは、2014年8月末には1ドル=31.93バーツの終値をつけ、7月末の終値1ドル=32.08バーツから引続き上昇しました。ウクライナや中東情勢の緊張緩和、2014年8月中旬の外国直接投資の流入およびタイ経済の回復傾向によりタイの金融市場と株式市場に資金が流入したため、タイバーツが引続き上昇しました。
この過去8ヵ月間のタイ輸出は、依然として不安定な動きが見られています。その主な要因は、世界の農産物価格が鈍化傾向、中国や日本などタイの主要輸出先の経済復テンポが依然として不安定な状態などの下押し圧力によります。従って、カシコンリサーチセンターは、2014年のタイ輸出予想を以前の予測である前年比3.0%増から、新たな予測の同0.3%減に下方修正しました。
しかしながら、2014年下半期のタイ経済見通しに関して、7月の民間消費の回復兆候が、先行きの不透明な輸出による影響を軽減させる可能性があります。カシコンリサーチセンターでは、2014年下半期のタイ経済成長率が前年比4.0%増以上になると予想します。
その主な理由は、比較ベースとなる前年同期の水準が低いことによる低ベース効果、民間投資の増加、国内需要の回復傾向の維持および今後の政府による経済刺激策等です。
尚、新政府の景気刺激策の影響、輸出および観光事業の回復傾向は依然として注意深く見守る必要があります。また、今後のタイ経済活動の回復動向が以前の予想より遅くなる場合、カシコンリサーチセンターは2014年通年の経済成長率の予測(現在の予測は2.3%増)を見直す可能性があります。

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