特集 2019.09月号

文化・経済面で大きな貢献 タイの中のインド

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インドシナ半島東部に位置するベトナムからカンボジア、タイを横断し、アンダマン海に面する西部のミャンマーに至る大動脈「南部経済回廊」。ミャンマー側の整備が遅れているが、その先にあるインドに熱視線が送られている。インド国内の人口は現在、12億人と言われるが、祖国を離れて世界中に離散した印系の海外移住者は約3,010万人いる(インド外務省2018年12月時点)。タイには約20万人が居住しており、バンコクなどに大きなコミュニティを形成している。そこで今回はタイ社会に同化した在タイ・インド人が与える経済的・文化的な影響などを紹介する。

文化と背景

タイとインドは、アンダマン海とベンガル湾にある海上境界線を共有するほか、ミャンマーを経由して陸路でもつながっている。在タイ・インド大使館によると、泰印関係は、長い歴史と社会的・文化的な結びつき、および幅広い人々の交流に根差している。

祭司や一般国民、貿易業者の移動や交流は、何世紀にもわたって双方向に行われてきた。インド北東部の部族であるアホームは、およそ8百年前にタイから来た移住者であると信じられている。

また、古代インドの文献には、タイが「スワンナプーム(黄金の地)」として記載されている。紀元前329年には、アショーカ王が仏教を普及させる目的で、使徒をスワンナプームに送ったと言われる。

インド土着であるヒンズー教と仏教という共通の信仰で結ばれており、多くのタイ人がインドの仏教聖地へ定期的に巡礼。さらにヒンズー教の要素が、タイの建築、芸術、彫刻、踊り、演劇、文学に反映されていることがわかる。

タイ語はパーリ語とサンスクリット語の影響を受けており、タイに住んで働いている離散インド人がもう一つの重要な縁結び役になっている。タイの国民的古典叙事詩である「ラマキエン」は、「ラーマーヤナ」から派生したもので、タイの文学、芸術、ドラマに大きな影響を与えている。両国の社会文化的な習慣や祭りに共通点が多くみられる。

1872年には、チュラロンコン国王(ラマ5世)がインドを訪問。インド政府は1956年に東北部ブッダガヤに僧院を建設するようタイ政府に提案。受け入れられると、インドは1万8千平方メートルの広大な土地を提供した。

インド独立の父で、宗教家・政治指導者のマハトマ・ガンジーや初代首相のジャワハルラール・ネルーなどによるインドの古典や作品の多くはタイ語に翻訳されており、芸術、文化、サンスクリット語を学んだタイ人の学者​​や僧侶は少なくない。これら古くからの文化的な結びつきを強化するために、インドとタイは1977年4月に文化協定を調印し、96~97年にはインドの祭典がタイで初めて開催された。

タイの主要大学はサンスクリット語、ヒンディー語そしてインド研究コースを提供。93年には国立タマサート大学にインド研究センターが設立されるなど、多面的な交流が続いている。また、ボリウッド映画の撮影地や新婚旅行先として人気がある。

貿易と投資拡大

過去20年間の定期的な政治的なつながりや貿易と投資の拡大により、インドとタイの関係は現在、包括的なパートナーシップへと発展した。2014年に発足したナレンドラ・モディ政権が推進する外交政策「アクト・イースト」は、東アジア・東南アジア諸国との関係を強化すること。経済連携を図るタイの「アクト・ウェスト」政策によって補完され、両国は南アジアと東南アジアを結ぶ重要な地域パートナーとなり、その距離がさらに近づいた。

両国は「東南アジア諸国連合(ASEAN)」に加え、「東アジア首脳会議(EAS)」、東南アジアと南アジアにまたがる7ヵ国が加盟する「ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)」、「メコン・ガンジス川協力(MGC)」、アジアの外務大臣が関心事項について定期的に意見交換を行う非公式な対話の枠組「アジア協力対話(ACD)」、「環インド洋連合(IORA)」で密接に協力している。

10年1月にはインド・ASEAN物品貿易協定が実施され、14年9月にインドとASEANのサービスと投資に関する自由貿易協定(FTA)が調印され、15年7月に発効した。

外交通商関係の樹立

インドとタイは2017年に外交関係が樹立してから70年目にあたる節目の年を迎えた。インドの「ルック・イースト」政策(1993年以降)とタイの「ルック・ウェスト」政策(96年以降)は、それぞれ「アクト・イースト」と「アクト・ウエスト」に変わり、経済・商業面での関係を含め、二国間関係の強化に貢献している。

タイはインドにとってASEAN地域でシンガポール、ベトナム、インドネシア、マレーシアに次いで5番目の貿易相手国で、インドを南アジアおよびそれ以西への玄関口と見なしている。15年に発足されたASEAN経済共同体(AEC)が、物理的な連結性や経済・文化・教育面での結びつきといった形で、加盟国のさらなる統合・恩恵をもたらすことが期待される時期に、2国間の関係は強化されている。

また、10年1月に合意に達したASEAN・インド自由貿易協定(FTA)の恩恵を受け、タイ製品のインド輸出は増加した。04年9月より実施されたインド・タイFTAのアーリー・ハーベスト・スキーム(関税先行引き下げ。家電製品・自動車部品など83製品が対象)も、二国間貿易に驚異的な拡大をもたらした。

両国による関税率の引き下げといった新たな取り組みの結果として、近年、両国間の貿易はあらゆる分野で増加。18年の二国間貿易総額は、00年の約8倍、前年比20・2%増の124・6億ドルに達した。タイの輸出額は17・3%増の76億バーツ、輸入額は48・6億バーツで25%増。貿易黒字額は27・7億バーツだった。今年1~4月の貿易総額は42・7億米ドル。タイの輸出額は前年同期比2・4%増の26・5億バーツ。輸入は9・4%増の16・2億バーツと、堅調な伸びを見せている(図表1)。

タイの主な輸出品は、自動車とその部品および付属品、自動データ処理機械およびその部品、宝石および宝飾品、ゴム製品、エチレン、プロピレンなど一次形態のポリマー、電子集積回路、機械およびその部品、化学製品、精製燃料、ゴム、鉄鋼およびその製品、コメ、空調機器およびその部品、ピストン式火花点火内燃機関、プラスチック製品などだ。

主な輸入品は、原油、機械および部品、電気機械および部品、化学薬品、銀製の棒および金を含む宝飾品、鉄鋼および製品、自動車部品および付属品、電子集積回路、その他の金属鉱石、金属廃棄物および製品、コンピュータとその部品および付属品、家庭用電化製品、野菜および生鮮製品、航空機、グライダー、器具および部品、完成油、プラスチック製品などと幅広い分野に渡る。

一方、米国はインドを一般特恵関税制度(GSP)の対象から除外する措置を今年6月から適用している。GSPを利用した18年の輸出額は、運賃保険料込み条件(CIF)ベースで前年比10%増の約66億米ドルで、対象国の中で最も大きかった。

英字紙バンコクポストによると、タイ・インドビジネス協議会のプリム会長は、インドの製造業に投資しているタイ大手企業への悪影響はないと楽観視。サイアムセメントグループやCPグループ、シリタイ・グループと言った複合企業は、インド国内市場を対象とした製品を生産しており、影響を受けるのは電子・ゴム製品など一部の輸出向け製品に限られると述べた。タイ商工会議所のサナン副会頭も、インドを輸出拠点として見ているタイ企業はほとんどなく、食品・衣料・靴などの販売市場とみなしていると付け加えた。

魅力的な巨大市場

インフラ(社会基盤)、観光、小売といった分野での巨大な商機を考えると、急成長しているインド市場は依然としてタイの投資家にとって魅力的で、興味深い進出先であり続けると期待される。過去数年間にタイで承認されたインドの投資額は2018年、1334万ドルと前年の3217万ドルから大幅減。一方、インドへのタイ投資は近年急増している。18年は前年比13%増の9222万ドルで、主にインフラ、不動産、食品加工、化学薬品、ホテルおよびホスピタリティ分野に投資された(図表2)。

タイで事業を展開している主要なインド系財閥・企業は、

•タタ・グループ:ムンバイを拠点とする世界有数のコングロマリット(複合企業)で傘下にタタ・モーターズ・タイランド、タタ・スチール・タイランド、タタ・コンサルタンシー・サービシーズなどがある

•アディティア・ビルラ・グループ:タタと並んで3大財閥の一つ。繊維・化学と非鉄を中心に、通信、電力から小売、衣料まで多角的に事業を展開

•マヒンドラサティヤム:グローバルな複合企業体で、情報処理に関するソフトウェアの開発やデータ入力並びに計算処理の受託とオンラインサービスなどが主な事業内容

ほか、後発医薬品(ジェネリック)大手のランバクシー、ルピン、日用品最大手ダブール、中堅ITサービス企業のNIITテクノロジーズ、水道や発電などのインフラプロジェクトを手掛けるキルロスカ・ブラザーズ、建設・エンジニアリング大手のパンジャ・ロイド、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム大手のポリプレックス、鋼索(ワイヤロープ)大手ウシャ・マーティン(現地法人ウシャ・サイアム・スチール・インダストリーズ)、鉄鋼大手ジンダル・グループ、商用車メーカーのアショック・レイランド、自動車などを生産するマヒンドラ・グループといった企業が知られている。インドが得意とするIT・ソフトウェア系の大手企業・スタートアップ企業も少なくない(図表3)。

労働許可証を取得しているインド人は1万3550人(17年)と日本、中国、フィリピンに次ぐ4位だった。また、インド企業がタイに進出する際に在タイ・インド企業・起業家とパートナーを組むケースもみられる。タイを拠点にインド人が事業を展開する企業の中で、代表的なのはポリエステルやPET素材といった石油化学製品大手インドラマ・ベンチャーズ。世界31ヵ国で事業を展開している。

一方、成長するインドに進出しているタイの大手企業は、農産物加工、建設、自動車、エンジニアリング、銀行などの分野で事業を展開している(図表4)。ほか、タイで一番人気の「ミスティン」ブランドの化粧品を直販するベター・ウェイ・タイランドは、インド国内での販売に向け地場企業2社と提携を模索中。タイを訪れる外国人観光客の中でインド人は、中国人、ベトナム人に次いで3番目の上客で昨年は売上の5%を占めた。

インドは「ルック・イースト」政策の一環として、ASEANへの関与も急速に拡大している。1992年に当時のASEAN(加盟6ヵ国)のセクター別対話パートナーに、3年後には完全対話パートナーに格上げ。翌年にはASEAN地域フォーラム(ARF)のメンバーとなった。

hv 2002年より年1回、首脳級の会合を開催しており、主な協力分野は貿易、投資、観光、科学技術など。インドはまた、日本、中国など6ヵ国首脳が出席する東アジア首脳会議(EAS)にも参加している。


ヒンドゥー教の寺院「スリ・マハー・マリアマン(通称ワットケーク)」

在タイ・インド商工会議所


数世代に渡ってタイに根付いてきたインド系住民は約50万人(多重国籍者含む)とも言われる。在タイ・インド大使館によると、タイで活動するインド系協会は、インド・タイ・ビジネス協会、両国の文化交流を促進するタイ・バラット・カルチュラル・ロッジ(TBCL)から、ヒンドゥー教協会(AHAT)、インド女性クラブなどまで59に上る。中でも1969年(前身はインド商工会議所で74年に改称)に設立され、会員数300強(一般316、準会員17、個人6)を誇る在タイ・インド商工会議所(ITCC)は最大規模。その月例会議にお邪魔した。

「他の商工会議所との接点を探っており、在タイの日本商工会議所と日系企業との協業を熱望します」――タイ生まれのラヴィ・セーガル会頭を始め、執行委員会の役員(10名)は、諸手を挙げる。

ITCCの主な役割は会員企業・個人事業者のタイでの商業・貿易活動を後方支援すること。タイ政府の政策・規制の変更を注視し、経営に役立つ最新の情報を会員に提供するほか、会員間の紛争の相談に乗り、調停を行う。

また、インドへの投資を検討するタイ企業の支援といった、インド・タイ両国間のさらなる経済発展の触媒としての役割を果たす。

タイで活動するインド関連企業は個人事業者を含めると1万以上といわれる。タイに居住するインド系住民は、△タイ人に帰化した永住者△在タイ・インド企業の駐在員△インド国籍の永住者――の3つに分類され、バンコクだけでなく、北部チェンマイ、ランパン、南部プーケット、ハトヤイなどに点在するという。

同会頭は、タイ商工会議所のメンバーで貿易を行う企業を集めたタイ貿易委員会(BOT)の元役員で、ITCCの会員に連なるサイアムセメントグループなどタイの大手企業とのパイプは太い。幅広い人脈と独自のプラットフォームを活用して、政府および民間企業と協力して事業を強化。会員のビジネス上の障害を取り除き、タイでの事業機会を最大限に活かせるよう努めている。

タイ政府機関には、△タイ語による税務などの書類提出の義務△タイに新たに進出するインド企業社員の入管手続きの簡素化△不安定な政局――などを憂慮する点とし、改善を呼びかけている。

非インド人社会との交流深める

執行委員会のメンバーは民主的に選出され、在任期間は2年。「タイ人の副会頭を含め女性役員が2名も選出されたのは初めてのことです。新体制になって70日が過ぎましたが、全員が同じゴールに向かって進んでいます。タイ社会だけではなく、シンガポールといった他の外国人商工会議所との交流促進、各役員の役割と責任の明確化など、時代の変化に対応する開かれた商工会議所に生まれ変わりました」と胸を張る。

ITCCが重視する分野は、①農業②IT・ソフトウェア③サービス(ホテルなどのおもてなし)④宝飾品⑤建設⑥工業⑦繊維⑧食品・飲料――。斜陽産業の繊維関連企業の多くは撤退を余儀なくされたが、ITなどデジタル分野で優秀な技術を持つ人材が豊富なインド。

日本企業からアウトソーシングを請け負っている会員企業もあり、「日本は同分野で人材不足に悩んでいると聞いています」と、インド企業が最適なパートナーになると自信を示す(図表5)。

日本とは異なる言語、文化と言っ た課題が横たわる。また、インドと日本の企業の接点は第3国であるタイにあまりなく、「商工会議所同士の交流の場も限られています。相互利益につながる、情報・データの共有や商談会の共催などの好機をうかがっています。それぞれの強みを生かし、協業すれば相乗効果をもたらし、新たな事業機会を創出できるかもしれません」と期待を寄せる。


サトン通り沿いにあるITCC

バンコクに広がるインド人コミュニティ 市場に寺院、多民族が共存

アショカ王が使者をスワンナプーム(黄金の地)に送った約25千年前以降、インド人の僧侶、商人、一般人はタイで歓迎されてきた。自らの意思で移住もしくは定住したインド人は、ほとんどが1920年以降にタイにやってきたといわれる。その中で、労働集約的な産業で働いたインド人はわずかで、大多数は商業に従事した。


「スリ・マハー・マリアマン(通称ワットケーク)」

今日、インド人のコミュニティ規模は数十万人以上と推定され、タイ各地で宝飾品、繊維、不動産などの分野で活躍し、タイ社会に大きく貢献。国連など国際的な組織や多国籍企業、民間の情報技術(IT)、金融機関などで専門家として働くインド系の住民も少なくない。

バンコクのヤワラ(中華街)に隣接するパフラット地区には「リトルインディア」と呼ばれるインド人街がある。北部パンジャブ州出身のシーク教徒が中心で、シルクなどの布地や民族衣装、神像、小物、菓子、香辛料などを扱う店が路地に並ぶ。

色とりどりのスイーツを販売する女性によると、店内で20年以上に渡り、自家製の商品を作ってきた。おススメの白いココナッツの味がするスイーツは一個35バーツと少し高めだが、人気の商品と胸を張った。タイ人や中国人が経営する店も点在しており、不思議な空間に迷い込んだような錯覚を覚える。


自家製のスイーツを販売する女性

チャクラペット通り沿いには、インド人街の陸標、シーク教寺院「グルドワラ・シリ・グルー・シン・サバ」がそびえ立つ。ドーム型で、短パンなど露出が激しい服装でなければ、異教徒でも寺院内に足を踏み入れることができる。その隣にある世俗的な商業施設「インディア・エンポリアム」がコントラストをなす。さらに裏道を入ると、「ロイヤル・インディア」や隣国の「リトル・ブータン」といったレストランから本場の香りが漂ってくる。


「インディア・エンポリアム」(左)と「グルドワラ・シリ・グルー・シン・サバ」

パフラットから南に数キロ下ったビジネス街のシーロム通り沿いには、ヒンドゥー教の寺院「スリ・マハー・マリアマン(通称ワット・ケーク)」がある。この地区にも、多くのインド人が腰を落ち着け、南インド料理店などを経営している。19世紀の終わりに建立されたという寺院の狭い塔門をくぐり、靴を脱ぐと線香の匂いとマントラ(真言)の声が出迎えてくれる。ヒンドゥー教の女神などの神像が祀られており、参拝者が神妙な面持ちで祈りを捧げている。

人気観光地のラチャプラソン交差点周辺には、「願い事がかなう神様」として知られるヒンドゥー教の神ブラフマーを祀る祠「エラワン廟」や、恋愛の神様が木曜日の夜に降臨すると言われる祠「プラ・トリーム・ラティ」があり、タイがいかにインドの影響を受けていることが垣間見える。

中間所得層の増加、ビザ免除、直行便が後押し 中国人観光客減、インド人が補う

南部プーケットなどリゾート地への中国人観光客が、自国の景気後退などを背景に減少するなか、インド人観光客が「救世主」として崇められている。米オンライン旅行大手エクスペディアによると、国別の外国人宿泊者数(2018年10月~19年3月)でインドは10位に入った(米国、中国、日本が上位3ヵ国)。うち、55%が4ツ星または5ツ星の高級ホテルを予約した。主要な目的地はバンコク、プーケット、パタヤ。インド人観光客による観光収入額は18年、660億バーツと前年比16・55%増の大きな伸びを見せた(図表6)。

18年11月15日~20年4月30日まで免除されている2千バーツの査証手数料も追い風になっており、タイ観光・スポーツ省によると、今年1~6月の入国者数も24・1%増の97万8785人と堅調だった。通年では昨年比25%増の2百万人台に乗るとの期待が高まっている。

また、中間所得層の増加などで、パッケージツアーで前年比160%増と2番目に急成長する市場になっている。タイ旅行代理店協会(ATTA)加盟会社のサービスを1月~4月20日に利用したインド人は7万63百人の11%増と、過去10年間で年5~10%の伸びを見せている。目的別では「慰安」「余暇」「結婚式(繁忙期は11~1月)」が上位を占め、各観光地には2~3日ごとに移動を好むため、小旅行パッケージを組むことが求められる。

観光と商用を目的とする訪問者が急増していることを反映して、両国間の運航便数は、週330便に増えている。
主要な航空会社は、エアインディア、タイ国際航空、タイスマイル、バンコクエアウェイズなどが、両国の主要都市を結ぶ直行便を運航している。

中でも格安航空会社(LCC)のタイエアアジア(バンコク~インド9都市に週47便)、ゴーエア(プーケット~同3都市、バンコク~コルカタなど5都市)、インディゴ(プーケット~ニューデリー、バンコク~ムンバイなど5都市)が勢力を伸ばしている。

ガガン氏、タイで最も著名なインド人


ミシュラン・ガイドの星獲得で常連のインドレストラン「ガガン(Gaggan)」のオーナー兼シェフのアナンド・ガガン氏は、タイで最も有名なインド人だろう。西ベンガル州の州都コルカタ出身で、下積みを経て、2010年に同店をオープン。斬新で独創的なフュージョン料理は評判を呼び、あっという間にアジアで一番のレストランの称号を得た。

予約は2~3ヵ月先まで埋まっているが、来年で同店を閉めるという大胆さ。同氏の和食に対する関心は高く、福岡県に新たな店舗をオープンする予定という。また昨年、同県で豆腐料理専門店を展開する「三原豆腐店」をバンコクに誘致し、世界初となる豆腐のお任せコースを提供。豆腐はもちろん、お茶や出汁など料理に使用する水を定期的に佐賀県から空輸するこだわりが、舌の肥えたタイ人の間で話題となっている。

伝統的なインド式結婚式をタイで! カップル誘致するタイ・インド・ウェディング協会


「インド人にとって結婚式は単なるお祝いの場ではなく、宗教・伝統・文化・儀式・行事・祝賀を一体化した人生最大のイベントです」――。結婚式を海外で挙げるカップルは増加しており、中でもタイは一番人気で毎年300組が契りを交わす。成長するタイのインド人婚礼産業を促進・保護し持続的に成長させていくことを目的に、2015年にバンコクでタイ・インド・ウェディング協会(TIWA)を設立したラム・サチデフ会長に、インド人の結婚事情などを聞いた。

「香辛料の利いた料理、陽光に輝く海辺、歴史的な文化財、気軽に買い物が楽しめる商業施設が豊富で、タイ人は卓越したおもてなしの精神で応対してくれます。東南アジアの中心にあり、複数の航空会社が直行便を運航しており、アクセスが抜群。インド人新郎新婦にとって望ましい国です」と、ラム会長はその魅力を強調する。インド人は世界各地に離散しており、タイで式を挙げるインド人のうち、インドに住むカップルの割合は45%程度。残りは世界中からで主に香港、シンガポール、ドバイ、インドネシアなどに住むインド系が半数以上を占める。

市場規模は成長軌道に乗って数十億バーツと伸び盛り。近親者・親戚・友人・仕事関係者が参列する結婚式の費用は平均5百万~6百万バーツで、参列者は百~5百人。最短で3日、最長で7日間に渡り、4~5ツ星ホテルの宴会場で行われる。バンコクほか、中部ホアヒン、南部プーケット、東部パタヤと海のリゾート地が人気だ。

世界市場を席巻するボリウッド映画に出てくる映像を上回る贅沢なものもあり、「著名人が昨年、約14百万米ドルを投じて豪華な式を行いました。世界各地から来た招待客が参列してとても華やかなものでした」と裕福なカップルにとってもタイは魅力的な“式場”に映るようだ。

カギを握るウェディングプランナー

そのようなインド式の豪華な通過儀式を行うには、開催地・会場(部屋数や宴会場の規模など)の選択が絶対的に重要だ。タイにはそのような大人数が一堂に集まり、カップルを祝福できる施設が多くない。

結婚までに辿り着くには時間と手間がかかり、ホテルの予約は6~8ヵ月前が当たり前。挙式前に、「予算」「日程」「衣装」「招待状」「食事」など、様々なことを決める必要がある。

このため、滞りなく挙式を進めるには、要望を聞きながら当日までの準備と本番の業務までを取り仕切る計画策定者「ウェディングプランナー」が重要な役割を担う。また、披露宴は朝方まで続くことがあるので、よく訓練され、長時間働けるスタッフが欠かせないという。

ラム氏は、インド人を誘致したいホテルやその従業員に独特なインド式の慣習を理解し、慣れ親しんで結婚式を実施してもらうために人材の訓練とコンサルティングサービスを提供。「タイのインド婚礼業界のマーケティングおよびプロモーションを裏方として支え、関心のある国々でロードショーも行っています」。

婚礼関連企業の間でネットワークを構築することはとても重要という。タイ生まれのラム氏の祖先はインド北部の出身。広大な土地には多様な文化が存在し、8つの主要な言語(方言)がある。「地域によって、言葉も習慣も異なり、タイで結婚式を挙げる際に注意する点は少なくありません」。

従って、現地の業者や式場、慣習、食事と宿泊地の手配、交通機関、地理などを理解するウェディングプランナーになるための資格を標準化するほか、仕出し業者の衛生度などを監視する役目も担う。  利点はインド式の挙式で必要なモノは、司祭を含め、ほとんでタイ国内で手配が可能なこと。

一方、裕福なインド人に悪い印象を与える二重価格設定や追加の請求などが、持続的な業界の成長を阻害するマイナス要因になると懸念する。テロ攻撃の標的となり、観光客数が激減したスリランカなどが巻き返しを狙っており、「より高い運用基準と正しい行動規範を達成する」ことが求めれている。

ラム氏は出版業などにも力を入れていて、在タイ・インド人向けの隔月情報誌「Masala(混合香辛料)」ほか、年に一度、結婚式を特集する「Weddings in Thailand」を発行し、貴重な情報源(ウェブサイト、ニュースレター、ソーシャルメディア)となっている。また、タイ政府観光庁(TAT)と、さまざまなマーケティングおよびプロモーション事業で協力体制を構築。

6月にはバンコクのホテルで90の関連業者(撮影、仕出しなど)が出展したフェアを主催した。「堅苦しいこともタブーもありません。是非、一度インド人の結婚式に参列してほしい」と在タイ日本人に呼び掛ける。


ボリウッド映画を彷彿させる豪華な挙式

日系企業も巨大市場に熱い視線

1952年の国交樹立以来、日インド両国は友好関係を維持してきた。在インド日本国大使館及び日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、インドに進出している日系企業数合計(2018年10月現在)は前年比5%増の1,441社。07年比で約4倍となった。拠点数合計も同5%増の5,102拠点と堅調に推移。特に北西部ハリヤナ州と中西部マハラシュトラ州の企業数・拠点数の伸びが顕著だ。

全国の企業の半分、拠点の三分の一は製造業。業種別に見ると、金属製造業に加え、各種サービス業の新規参入も伸びている。一方で、企業再編や出資関係の変更などにより日系でなくなった企業もあった。

インド進出ラッシュは製造業に留まらない。「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋が、三井物産とカレーの本場に20年を目途に出店するほか、衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテーリングがデリーに一号店を今年10月ににオープンする計画を発表している。

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