2020.11月号

知らなきゃ損する!タイビジネス法務

タイにおける賃貸借契約

知らなきゃ損する!タイビジネス法務

はじめに

タイにおける事業運営において、欠かせない契約の1つが賃貸借契約である。実際、在タイ企業はオフィスなどに関する何かしらの賃貸借契約を締結しているものと思われる。

日本における賃貸借契約には、借地借家法などの賃借人保護のルールが存在するが、タイには同法のような賃借人保護のための特別法は存在しないなど、法律や慣習において差がある。そこで今回は、タイにおける一般的な不動産賃貸借契約の留意点について解説する。

賃貸借契約とサービス契約

タイにおいてオフィス賃貸借契約を締結する時、「賃貸借契約」と同時に「サービス契約」が貸主側から提示されることがある(むしろそのようなケースが多いと言える)。

例えば貸主との協議において、賃料が800バーツ/㎡であると合意されたとしよう。しかし契約書を確認してみると、提示された賃貸借契約書には賃料が400バーツ/㎡としか表記されておらず、その代わりにサービス契約書において、サービス料が400バーツ/㎡(両者を合算すると800バーツ/㎡)と表記されているような場合がある。

このように2種類の契約書が提示される原因は名目上の賃料を引き下げることで、貸主に課せられる土地家屋税を節税するためだと考えられる(ただし、税制が変更された2020年1月以降は、この運用がなくなる可能性がある)。

サービス契約の内容は主にビルの補修やメンテナンスに関するものが明記されているが、日本には見られない慣習であるため、賃貸借契約とサービス契約との契約期間が同一であること、賃貸借契約が終了した場合にはサービス契約も終了することが明記されているかを確認すべきであろう。

賃貸借契約期間が3年である理由

タイにおける賃貸借期間は一般的に3年とされることが多い。

これは、期間が3年を超える不動産賃貸借は管轄の土地事務所に登記する必要があること(民商法538条)が原因となっている。賃貸借契約の登記には手数料が発生し、かつ手間もかかるため、不動産の賃貸借期間を3年以下に抑えることが実務上の慣習になっているわけである。

念のため、3年を超えた長期の賃貸借契約を締結する場合には、その旨の登記が必要であることに留意されたい。

期間内の中途解約

賃貸借契約は特に解約権が明示されていない限り、期間内の中途解約が原則として認められない。そのため、賃貸借契約の中に中途解約条項が存在するか否かは、事前に必ず確認しておく必要がある。

この点、日本においては「賃借人は6ヵ月の予告期間をもって契約期間中においても本契約を解約することができる」などと、賃借人側の中途解約権が契約書上で明記されていることが通常である。しかし、タイの場合は必ずしもそうではなく、むしろ中途解約権が明記されていない場合も多いように思われる。

このような定めがない場合は、賃借人側から期間内に解約することができず、強引に解約しようとすれば、期間内に生じるべき賃料全額を損害賠償として請求されてしまう可能性がある。

中途解約権について合意できるか否かは貸主との交渉次第であるが、貸主としては賃料収入を一定期間は確保したい考えがあるはずなので、交渉が難航する場合には、当初契約期間は中途解約できないが、更新後は賃借人からの中途解約を認めることを定めるなどの折衷案を打診することも有益であろう。

寄稿者プロフィール
  • 藤江 大輔 プロフィール写真
  • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
    代表弁護士藤江 大輔

    2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所のパートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

    URL : https://gvalaw.jp/global/3361
    CONTACT : info@gvathai.com

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