ArayZオリジナル特集

Q&Aと実務解説 タイ・ビジネス関連法務

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労務編

Q5
タイにおける時間外労働に関する制度(上限時間や手当)はどのようになっていますか。

A5
そもそもタイにおいては、日本のいわゆる三六(サブロク)協定のような労働時間を延長させるような制度がないため、時間外労働を行わせるためには、原則として、個々の労働者の同意が必要となります。そのうえで、時間外労働を行わせる場合であっても、その時間数(休日勤務、休日時間外労働を含む)は、1週間で合計して36時間を超えてはならないとされています。
タイにおける時間外労働及び休日の時間外労働手当は、1998年労働者保護法(Labour Protection Act B.E. 2541)の基準に沿って支払われなければなりません。すなわち、通常勤務日の時間外労働については通常賃金の1.5倍以上、休日の時間外労働については通常賃金の3倍以上を支払わなくてはなりません。
また、休日の時間外労働の前提として、休日の勤務手当として、そもそも休日分の賃金を得る権利がある労働者(給料を月単位で受け取っている労働者)に対しては通常賃金の1倍以上、休日分の賃金を得る権利がない労働者(給料を日や週単位で受け取っている労働者)に対しては、通常賃金の2倍以上を支払う必要があります。
なお、雇用、賞与の支給、または解雇に関して使用者を代表する権限のある、いわゆる管理職は、使用者の同意がない限り、時間外勤務手当を受け取ることはできません。
時間外労働に関連してタイの日本企業において最も問題となるのは、会社で雇用しているドライバーの時間外勤務と思われますが、ドライバーも一般の従業員と同様の規制に服するため、時間外労働につい ては注意する必要があります。

労務編

Q6
従業員を解雇したいと考えています。どのようにすべきでしょうか。

A6
従業員を解雇するためには、解雇の公正な理由を備えたうえで、手続的な要件を満たす必要があります。

【1】公正な理由
タイにおいて従業員を解雇するためには、公正な理由が必要とされています。公正な理由の定義は法律で定められていないため、各事例ごとにその有無が判断されます。例えば、労働者の不正行為や背信行為、能力不足といった事情は、公正な理由として認められることも多いでしょう。他方で、会社のルール違反であっても軽微なものや内部的な手続規定に違反している解雇は、公正な理由が認められない可能性も高くなります。

【2】解雇の手続的要件
また、手続的な要件としては、一賃金期間以上前に解雇予告通知を行い、解雇時には解雇補償金を支払う必要があります。解雇補償金の金額は、法律で図表のとおり定められています。
解雇予告通知については、その期間に相当する賃金を支払うことにより免除されます。また解雇補償金も、法律で定められている懲戒解雇といえるような場合には、会社側が支払う必要はありません。

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①職務上の不正または使用者に対する故意の犯罪を行った場合
②使用者に対して故意に損害を与えた場合
③使用者に対して過失により重大な損害を与えた場合
④使用者が警告書を与えていたにもかかわらず、それから1年以内に就業規則や使用者の合法かつ適切な命令に違反した場合。ただし、重大な違反については警告は不要となります。
⑤正当な理由なく、3労働日連続して職務を放棄した場合6過失犯や軽犯罪を除き、禁錮刑以上の確定判決を受けた場合。また、勤務日数が119日以下の労働者については、解雇補償金を支払う必要はありません。

労務編

Q7
工場の従業員に備品が盗まれました。どのように対処すべきでしょうか。

A7
会社が被害者となる犯罪が生じた場合、警察の捜査を進めてもらうためには、まずは警察に被害届を出すことが必要となります。
仮に従業員が行ったと確定できるのであれば、犯罪行為は雇用契約や就業規則における解雇事由であることが通常であるでしょうから、解雇補償金の支払いをすることなく、従業員を解雇することができます。
しかし、上記のように解雇をするためには、その犯罪が当該従業員によってなされたと確定的に言えることが必要ですので、従業員が犯罪をしたといえるための証拠の収集をする必要があります。例えば、本人の話のほか、防犯カメラを解析したり、当時働いていた警備員の話を聞いたりして、客観的な証拠を収集することが必要です。また、警察とも連携をして、捜査を進めてもらうことも必要でしょう。

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