2020.05月号

日刊工業新聞

アフターコロナを展望する 野村総合研究所(NRI)社長・此本臣吾氏に聞く

アフターコロナを展望する 野村総合研究所(NRI)社長・此本臣吾氏に聞く

対策3段階「まずは雇用」財政的な措置必須

「新型コロナウィルスによる経済ショックは、対人接触の遮断で通常の経済活動を中止したことによる“供給ショック”であり、需要の落ち込みによる景気後退とは性質が異なる」―。野村総合研究所(NRI)は緊急提言でこう指摘する。このまま放置すれば自粛中の事業者の売上高が喪失し、雇用が失われる。コロナ関連倒産なども相次げばアフターコロナ(コロナ以降)への展望は潰えてしまう。これに歯止めをかけ、経済回復につなげる道筋をNRIの此本臣吾社長に聞いた。

野村総合研究所社長・此本臣吾氏
▲ 野村総合研究所社長・此本臣吾氏

―コロナショックをどうみていますか。

人とモノの動きが完全に止まり、今までなかったことが起きている。この1年は経済がリーマンショック級に強烈に落ち込むだろう。これに金融危機が重なると大変だが、今回はリーマンの時のように金融機関の資産が傷んでいるわけではない。金融システムが正常であれば、2021年度から回復する可能性はある。

―NRIの業績への影響は。

当社に限らず、情報サービス業界はBtoB(企業間)ビジネスが中心であり、プロジェクトの足が長く、直近の3月期末への影響はそう大きくはない。だが、4月以降はIT投資の先送りなどが避けられない。リーマン時の日本経済は08、09年度と2年連続のマイナス成長だった。当時、起きたことが業績面での目安になる。

―コロナ対策の緊急提言は大きく3段階で言及していますが。

まず雇用対策だ。企業の資金繰りに行き詰まると、コロナ収束後の需要の立ち上がりに後遺症となる。これを押さえ込むことが政策として最も重要だ。第2段階は飲食、宿泊、観光などのダメージが大きい業種に対する需要喚起。第3段階は海外展開する製造業への影響。市場停滞に伴う輸出減や海外生産への影響が広がると大打撃だ。情勢に応じた政策パッケージとしての打ち手が急がれる。

―雇用維持は深刻で、かつ輸出産業への影響も懸念されます。

米国は経済が落ち込むと、レイオフする。日本は雇用を維持して、まず賃金で調整する。このため雇用を守った会社には現金給付などの財政的な措置が必要だ。雇用弾性値を下げないように施策を打つことが最優先となる。

一方、輸出産業へのダメージは短期では解決しない。逆に言えば内需を復活させねばならず、そこは財政出動しかない。

【記者の目/緊急提言、1ヵ月で11回】

NRIはシンクタンクの役割として、「雇用維持宣言」の提言を皮切りに、約1ヵ月で計11回も緊急提言を矢継ぎ早に打ち出している。これとは別に、3月に出版した此本社長監修の「デジタル国富論」では、デジタル社会資本を国としてどう整備するかについて言及している。これらを合わせて、アフターコロナを展望したい(編集委員・斉藤実)。

※記事提供:日刊工業新聞(2020/4/22)

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