2020.12月号

SMBC タイ経済概況

Vol.5 自由貿易の流れが戻ってくるか? ~RCEPがついに合意~

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タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)は11月16日、2020年第3四半期の経済成長率が前年同期比▲6.4%であったと発表。1月~9月の経済成長率については同▲6.7%となった。また、20年通年の経済成長率予測に関しては、8月時点の前年比▲7.3%~▲7.8%から▲6.0%に引き上げられた。

東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)が11月15日に開催された首脳会合でついに合意・署名に至った。インドが抜けてASEAN10ヵ国と日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランドの計15ヵ国となったが、世界人口の約3割、経済規模や貿易額でも世界の約3割を占める巨大自由貿易協定(FTA)となる。

ここで貿易とFTAの意味を考えてみたい。例えば、同じ労力(例:10人で合計100時間)をかけてA国ではⅩという商品であれば月に10個、Yという商品であれば6個作れる能力があるとする。

一方、B国では同じ労力でXは5個、Yなら9個作れるとする。この場合、A国ではXのみを、B国ではYのみを生産して交換(貿易)すると全体の生産量を最大化できる。

単純化するために2つの国と商品で解説したが、国数や商品数が増えても基本的に同じで、要するに「各国は他国と比較して得意なことに集中することで全体の生産性を最大化できる」ということになる。

自由貿易協定は締結国の間では可能な限り貿易の障壁を取り除き、自由に貿易をすることで協定に参加する国々の生産性を高めることに繋がる。そして、非締結国から輸入されるモノに対しては関税をかける等で域内生産を優遇することになる。このため、参加国は1つの経済圏を形成するとも言える。

一方、この経済圏に参加できないと不利が生じることがある。例えば、タイはEUとの間にFTAが無い。しかし、ベトナムはEUとのFTAを今年8月に発効させた。

このためタイで生産したモノをヨーロッパに輸出すると関税が課せられるが、ベトナムで生産されたモノであれば関税は課せられない、ということが起こっている。つまりヨーロッパ向けの輸出ではタイはベトナムに比べて不利になっている。

とはいえ、何でも自由に貿易すれば良いかというとそうではない。先の例でA国の中にYを作っている人々がたくさんいる場合、多数の失業者が出る等、大きな影響が出てしまう。

このためFTAでは一部の産業に対しては例外を設けることが許されており、RCEPでは日本はコメ、乳製品等が関税削減対象から除かれた。

こうして弱い部分を保護しながら自由貿易を志向する国や地域で1つの経済圏を創り、ともに繁栄していこうという考え方がFTAの根本にある。タイも日本も貿易で大きな恩恵を受けている国だ。

米国でバイデン大統領の就任後、再び自由貿易の流れが戻ってくることを願っている。

なお、蛇足ながらこの貿易の考え方は日々の業務にも応用でき、ある仕事が得意な人にその仕事を集中してやってもらった方が全体の生産性は上がる。

寄稿者プロフィール
  • 長谷場 純一郎 プロフィール写真
  • SBCS Co., Ltd.
    Manager, Business Promotion Division
    長谷場 純一郎

    奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、10年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。12年から18年までジェトロ・バンコク勤務。19年5月より現職。

SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

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9月〜11月  経済・政治関連トピック 2020

経済

 

タイ商務省は輸出入管理法に基づき、428品目の電子廃棄物の輸入を全面的に禁止することを決定した。9月14日付で官報に布告が掲示され、翌15日に施行となった。電気・電子部品やプリント基板等の廃棄物が禁輸の対象。

タイでは既に2018年より、中国の廃棄物輸入規制に伴う輸入量急増を受け、天然資源・環境省が電子廃棄物と廃プラスチックの輸入を原則禁止していた。


ASEAN加盟国間で、9月20日から認定輸出者(Certified Exporter:CE)が自ら原産地証明書を作成することが可能となる、ASEAN地域自己証明制度(ASEAN-Wide Self Certification:AWSC)が正式に導入された。原産地証明の手続を簡素化する制度として、企業活動や域内貿易の活性化が期待される。

なお、AWSCを活用するにはASEAN各国の当局よりCEの認可を受ける必要がある。


国際通貨基金(IMF)は10月21日、アジア太平洋地域経済見通しを発表。タイの経済成長率について、20年は▲7.1%、21年は+4.0%と予測した。また、タイ財務省財政局(Fiscal Policy Office : FPO)は10月29日、タイの経済成長率につき、20年は▲7.7%(予想レンジ▲7.2%~▲8.2%)、21年は+4.5%(同+4.0%~+5.0%)との予測を発表。今年7月時点では20年の経済成長率予測を▲8.5%としており、0.8ポイントの上方修正となった。

さらに同局は20年の輸出額を▲7.8%(同▲7.3%~▲8.3%)、民間消費を▲3.0%(同▲2.5%~▲3.5%)、民間投資を▲9.8%(同▲9.3%~▲10.3%)と予測している。


タイ国投資委員会(BOI)が発表した投資統計によれば、第3四半期まで(1~9月)の新規投資申請件数は前年同期比+1%の1,098件、申請金額は同▲15%の2,237億バーツだった。

このうちタイ政府が誘致を強化している重点産業への申請が金額ベースで58%を占め、中でもBOIが4月に新たな奨励策を発表していた医療産業については、申請件数が同2.3倍の65件、申請金額も同+75%の147億バーツと大幅に増加。また、1月~9月の海外直接投資(FDI)は新規申請件数が同▲1%の657件、申請金額は同▲29%の1,185億バーツであった。

国・地域別では日本が申請件数139件、申請金額375億バーツで件数・金額ともに最多だったが、前年同期比では件数が同▲12%、申請金額も同▲33%と落ち込んだ。


タイ国鉄は10月28日、高速鉄道の敷設に関する事業費506億バーツの契約「コントラクト2.3」を中国の請負業者と締結。同契約はバンコクと東北部ナコンラチャシマ間を結ぶ第1期区間の敷設計画の一部で、線路、電気システム、機械の購入、車両の調達および人材訓練等の費用負担を含むもので、中国側との交渉が難航していた。

最終的にタイ国内においては、バンコクからラオスとの国境であるノンカイまでをつなぐ607キロメートルの高速鉄道の敷設が予定されているが、まずは26年中に第1期区間、253キロメートルの竣工を目指す。

政治

タイ財務省令(20年6月10日付)に基づき、10月より源泉徴収税の電子納税システム「e-Withholding Tax」が導入された。これにより歳入局への納税が三井住友銀行を含む11の銀行経由で可能になったほか、同局のウェブサイト上で納税履歴が確認できるようになった。

また同システムを利用して納税する場合、21年末までサービス提供や請負等の源泉徴収税率が通常の3%から2%に軽減される促進策も実施されている。


タイ政府は10月5日付の官報で、同1日付で財務相にアーコム元運輸相が任命されたと発表した。8月に新閣僚として就任したプリディー前財務相は、9月2日付で同ポストを辞職していた。

アーコム新財務相は国家経済社会開発委員会(NESDC)長官等を経て、2014年に発足した軍事政権で運輸相を務めた経歴を持つ。


タイ政府は10月29日付で、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を11月30日まで延長する旨を官報に掲載した。非常事態宣言の延長は7度目。

※11月23日に21年1月15日までの延長が決定された。

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