2021.02月号

【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

第38回 2021年のタイ自動車 生産・販売の見通し

昨年は生産が3割、販売は2割減

2020年のタイの自動車生産は前年比約29%減の約143万台、国内販売は前年比約21%減の約79万台となった。自動車生産は新型コロナウイルスの影響で4月に大きく落ち込んだ以降は右肩上がりに回復し、9月以降は前年並みになった。

けん引したのは国内販売であり、新型コロナウイルスによる制限措置解除後の国内消費の回復や、公共投資などの政府支出の増大などが貢献した。他方で、国内生産の約半分を占める輸出の落ち込みは長引き、11月に初めて前年比増に転じた。

21年の自動車生産の見通しは、新型コロナウイルスの第二波が短期に収束することを前提に160万~170万台程度と見る。昨年10月以降の生産は年換算180万台で推移しているが、今年後半からペースが落ち込む可能性がある。それは政府部門と家計部門の負債、つまり双子の赤字が生産の半分を占める国内市場の回復の重しになると見られるからだ。

政府の財政赤字が新型コロナウイルス対策で既に限界に達しており、第二波への対応でさらに膨れることから、政府支出が今年後半以降減速する可能性が高い。他方で家計の過剰負債は雇用環境の悪化や収入低迷で悪化しており、不良債権率は通常の倍の3%に達している。過剰負債問題は今後数年の国内販売の回復の最大の制約要因となるだろう。

今年注目されるトレンド

今年は引き続きSUV(スポーツ多目的車)ブームが続くことが予想される。昨年1月~11月のSUVの販売台数は前年比7%減に留まり、新型コロナウイルスの影響が相対的に小さかった。世界的なSUV志向の高まりを受けて、トヨタの「カローラ・クロス」、スズキの「XL-7」、マツダの「CX-30」、MG「HS」等の新車効果が効いている。価格は100万台バーツ以上が多いがデザイン、居住性、ハイブリッド(HEV)など新機能の追加で人気が高まった。

乗用車では、エコカーの不調は継続することが予想される。1月~11月の乗用車販売は前年比35%減であり、主要セグメントの中で一番落ち込みが大きかった。なかでも、低価格セグメントであるエコカーへの影響が大きい。ただ興味深い動きとして、エコカーの中でも最も安いスズキ「セレリオ」の販売が前年から3倍増の4,000台以上に急増した。

HEVを含む電動車(xEV)比率は今年も上昇するが、引き続きHEVが中心になると予想される。陸運局によると、昨年の電動車の新規登録台数は35,000台と自動車市場全体の約1.3%に達し、前年を0.2%上回った。ただし、その約9割はHEVで占められる。特に昨年末に発売された「シティ e:HEV」が好調であり、発売開始後1ヵ月余りで5,000台の受注に達した。

長城汽車はHAVALブランドでタイに参入すると見られる

新興の中国ブランドも注目である。以前も取り上げた長城汽車が今年3月のモーターショーで発売を開始する。また、昨年に前年比増を維持したMGが新型SUVなどの新車攻勢で国内販売シェアの順位を上げられるのか目が離せない。

コロナ禍による所得格差の拡大を反映し、中間層では100万バーツ以上のSUVや電動車の人気が高まる一方で、中間層以下では低価格志向も高まっており、排気量1,000ccクラスやMGなどの中国ブランドが伸びている。今年も、市場の両極化が進むことが予想される。

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  • 野村総合研究所タイ
    マネージング・ダイレクター田口 孝紀

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