2016.03月号

【連載25回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記 “タイの経理現場より”

tadano

タールア社編(第4回)「重要なのはアドミンスタッフ!?」

【前回までのあらすじ】
~謄本内容を確認したところ、署名権者が3人ともタイ国外在住であったタールア社。現場では書類に署名が必要な場面も多く、“サイン権者が不在”という多少の不安を覚えながらも、法人としてようやく船出して…~

どうしてこうも、税務関係書類をはじめ、署名しなければならない書類が多いのか―。
税務当局からすれば、税の補足性を高め、かつ税務調査時などに一番つつきやすいところでもあるのがサインであり、これはタイに限った話ではない。にも関わらず、多くの日本人がこの署名作業に慣れておらず、それでも日常的なものとして軽視しがちなのだが、しっかり備えておくことが必要だ。
備えとは何なのか?というと、とにかくアドミニストレーション(庶務)業務がしっかりとできるタイ人スタッフを採用することが肝要だ(秘書的なことを兼務させても良いと思う)。
「えっ、それも含めて会計事務所がやってくれるんでしょう?」と認識されている方も多いのだが、「年に1回や2回ならまだしも、税務申告が毎月発生し、取引毎に税額票を発行する必要があるのです」と言うと、「面倒くさいだけなんですね」や「リソースが足りないんですかね」とかいう反応が返ってきたりする。
だが、決してそんな理由ではなく、本来クライアント自身が責任をもって事業をする意思があれば、避けて通れないリスク管理業務の一環とも言えるだろう(※1)。
ここでタールア社に話を戻して説明しよう。まず、タールア社には日本語が割と堪能な、サリーさんというタイ人スタッフがいる。秘書的な通訳業務以外にも、それまでの会社設立に絡む書類提出のサポートや、一般事務手続きなど諸々を対応してきていて、請求書の発行といった業務も、ちょうどこれから手がけようというところである(※2)。
タールア社は本社のオフショア開発を担っているので、請求先の相手はほとんど日本本社だ。それに請求書発行や管理の面からみても、取引先情報はそもそも営業と一体となって機能していることが多く、これを外注するというのは非効率であり、選択肢としては考えにくい。
もっと具体的に言うとこういうことである。
賃料や複合機のリース代、遠出をした時のレンタカー代など、サプライヤーとの取引が始まっていなくても、企業活動にはこれら基本的な支出が伴うのは以前も触れた通りだ。この時の支払い先である相手方に、支払側の義務として課されるのが源泉票の発行である。慣れたアドミンスタッフであれば、何も言わなくても対応してくれていることもあるのだが、立ち上げ時の会社で、アドミンスタッフも新卒で採用した場合は、まずここを理解しておく必要がある。サリーさんはこの面での心配はなかった。少なくとも、彼女が機能している間は―。 ( 次回に続く)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります。

(※1)
前回も触れた通り、タイのようなTax Invoice発行方式の税務会計基準寄りのベースがある国では、とにかく書類に関与する機会が多くなりがちだ。日本では電子書類も帳簿として認められるようになっているが、タイでは未だに書類至上主義のきらいがあるように思える。特に現地MDに就くのは営業や企画畑出身の駐在員が多く、ただでさえ日本でも書類の山には無縁だった方が多いので、思わずその方面には目をつむりたくなる気持ちも分かる。ただし、リスク管理という認識が希薄で看過していると、後々しっぺ返しを受けることもあることを忘れてはならない。
(※2)
立ち上げの会社で一番多い採用パターンとしては、日本語を話せる人材を秘書や庶務などの便利屋として活用する事例だ。ただし、日本語が上手なことと、仕事ができることは必ずしもイコールでないのは周知のことだろう。それが分かっていながらも、採用時はある程度、日本語が上手なら、日本人のマインドも分かっているだろうと思いがちになってしまう。実際にはあくまでも日本語の話せるタイ人であって、日本人の心の機微が分かるということではない。寧ろ日本語が全くできなくても、日系での就業経験が長いタイ人の方が日本人的業務の進め方などが分かっている場合が多い。
手前味噌だが、当社でのスタッフは日本語が全くできないが、日系企業相手の納期遵守や品質管理の要諦を理解しているので、悪い情報や悪くなりそうな雲行きの際は事前にアラートを出してくれる。これは職種や業種もあるかもしれないが、根気よく教育を続け、時には失敗も重ねながら辛抱強い姿勢でマネージメントしていれば、誰もが到達可能なことでもある。縁もあるが、最初から何でもできる人を採用するというのは、なかなか難しいものなのである。

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan@aporter.co.th
http://aporter.co.th/

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但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

 

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