ArayZオリジナル特集

8人の専門家が解説するタイの過去そして未来

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産業高度化に人材育成不可欠 変わらぬ日本企業の重要性

ジダパーカムポンカンチャナー
Frasers Property
Frasers Property
マーケティング
ジダパー
カムポンカンチャナー
Jidapa Kumponkanjana, Ph.D.

チュラロンコン大学政治学部卒業。在学中、京都の龍谷大学に1年間交換留学を経験。外資系企業に勤務後、再び日本に留学し、東北大学大学院で博士号を取得。その後、日系商社勤務などを経て、2019年から現職。

工業団地 Last 10 Years
中国企業の進出増加 周辺国との競争激化

弊社Frasers Propertyの賃貸工場・倉庫では海外からの投資者の構成が変わってきました。元々、日本企業が60%と最も比率が高かったのですが、最近では中国からの企業の進出がどんどん増えており、19年に日本企業の割合は50%まで下がりました。

日本企業がタイを選択しなくなった理由の一つは、タイの周辺国であるCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の国々に関心を持つようになり、特にベトナムに進出して行きました。タイは周辺国との競争がますます激しくなっています。それでも、道路網などのインフラ整備が周辺国より進んでいるため、生産拠点としてタイは最も適切だと考えています。

タイ投資委員会(BOI)のインセンティブは2015年に制度が変わり、地域の発展度合いに応じたゾーン制から業種に重きを置いた制度になりました。生物工学や航空宇宙、医療、ロボット及び自動化、未来の食品などを重視しています。しかし、新しいBOIの投資奨励策にも弱点があります。それらの産業で働く人材を育成しようとしない点です。人材がいなければ企業のニーズに応えることができません。

社会の面から見れば、タイの医療技術が向上し、タイ人の寿命が長くなりました。アメリカや日本など海外で医学を学んだタイ人医師も多く、海外から富裕層の患者を受け入れる医療ハブに成長しました。

また、Eコマースが大変発達しました。かつては郵便局しか配達しておらず、配送の仕組みが不十分でしたが、今ではGrabをはじめとして多くの企業が手掛けています。タイではスマートフォンが浸透し、インターネット利用時間も長く、Eコマース市場が拡大しています。それに伴って、製品をPRするインフルエンサーという新しい職業も生まれました。

工業団地 Next 10 Years
Eコマースや食品向けを拡大 社会はサステナビリティ重視

中国企業の進出は確かに増えていますが、日本企業は最も信頼できるパートナーです。日本企業の倉庫を見ると、ゴミがなく、とてもきれいです。オフィスの中も整理整頓されています。他国の企業だともっと乱雑です。私共は今後も日本企業の誘致に力を入れていきます。日本でのマーケティングも今後さらに進めていきます。

これまで自動車部品産業のお客様が中心でしたが、タイ政府及び各国は現在、電気自動車(EV)産業を推進しています。EVでは従来と比べ部品点数が少なくなるため、これからは自動車部品だけに頼ることはできません。冷凍冷蔵倉庫や自動倉庫といったEコマースや食品、医薬品など成長が期待される産業向けの倉庫を、アクセスの優れたバンコク近郊で提供していきます。また、タイの社会もサステナビリティ(持続可能性)を重視するようになってきており、私共としても賃貸倉庫に太陽光発電や排水のリサイクル設備を設置するなど、環境保護に取り組んでいます

将来に亘ってタイの産業競争力を維持するためには、東部経済回廊(EEC)や高速鉄道などのインフラを今後の10年で完成させる必要があります。すべての発展は強固なインフラから始まります。成長著しいCLMVと比較して、タイはインフラの優位性によって、日本を含めた海外の投資家をひきつけなければいけません。さらに、タイ政府が進めるタイランド4.0政策の重点産業分野に従事する人材の育成を至急行わなければなりません。人材が足りなければ、BOIの政策も十分な成果を生むことはできないでしょう。

優れた医療技術がタイにはあります。これまでの医療ハブ促進に加えて、これからは高齢化社会に突入するため、高齢者福祉関連のビジネス、施設が望まれます。日本の事例からも学ぶべきだと思います。

ArayZへ一言

タイと日本の理解を深める重要な媒体です。今後も両国の発展に貢献してください。

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