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贈収賄に関する規則の改正について

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    タイの贈収賄規制に関して、2023年1月13日、「公務員への贈答品の授受に関する規則(Giving or Receiving Gifts of State Officials B.E. 2565)」という新しい規則(以下「本規則」)が公表され、23年1月14日から施行されている。そこで、今回は本規則のポイントについて解説する。

    1. 贈収賄に関する規則の改正

    タイでは、刑法や汚職防止法(the Organic Act on Anti-Corruption B.E. 2561)等により、公務員への贈収賄が禁止されているところ、本規則は、法律による贈収賄規制を補足するものと位置付けられる。なお、この分野に関しては、過去、2001年に施行された同名の規則(以下「旧規則」という)が存在していたが、本規則の施行により旧規則は廃止された。

    2. 本規則のルール

    本規則では、違法な贈答品の授受があった場合に公務員が取るべき自己申告に関するガイドライン、気づかないまま違法に贈答品を受領した場合に公務員が取るべき手段、違法な贈答品の授受があった場合の公務員の懲戒処分が定められているほか、贈答品の範囲などについて明確化が図られた。

    まず、贈収賄が問題となる「贈答品」とは、有形・無形を問わず価値のある財産や利益を全て含むこととされており、金銭や物に限らず、「割引をすること」、「研修やセミナーを提供すること」、「遊興や旅行を提供すること」なども幅広く贈答品に含まれる。

    また、贈収賄が問題となる場面には、公務員自身による贈答品の授受だけではなく、その家族により贈答品が授受されたという場面も含まれるところ、本規則では、法的な配偶者だけではなく、法的な配偶者のように同棲しているパートナー、つまり、内縁関係(事実婚関係)にある者も、この「家族」に該当するものとして明示された。したがって、例えば「公務員と内縁関係にある者を自社主催のセミナーに無料で参加させる」といった場合も、違法な贈答品の提供として贈賄に該当する可能性が生じることとなる。

    ただし本規則上、公務員(又はその家族)による贈答品の受領が、社会的儀礼・慣習に基づき行われる場合には、例外的に違法とはならないこととされている。この点、旧規則ではこの社会的儀礼・慣習に基づく贈答品の受領が許容される場合の一つとして、「3,000バーツを超えない範囲での利益を受領する場合」を挙げていたところ、本規則でもこの基準が維持されている。したがって、今後も引き続き「贈答品の価値が3,000バーツ以内かどうか」が一応の目安として機能することとなる。

    ただし、この例外はあくまでも贈答品の提供を受ける公務員側に関するものであって、贈答品を提供する側に関する例外を定めるものではない。そのため、会社や個人が3,000バーツ以内の贈答品を社会的儀礼・慣習に基づき公務員に提供したとしても、その提供が問題視されるリスクは現実的に低いかもしれないが、少なくとも軽々に贈答品を提供することは控えるべきであろう。

    また、この例外はあくまでも社会的儀礼・慣習に基づいて贈答品が授受されることを前提としている。そのため、社会的儀礼・慣習としてではなく贈答品が授受される場合には、贈答品の価値が3,000バーツ以内でも違法となり得る。たとえ数百バーツの提供であったとしても、公務員の職務に対する見返りとして提供した場合には違法とみられかねない。

    3. まとめ

    今回は新たに施行された汚職防止法の関連する規則について概観した。タイで事業を営んでいると、様々な場面で公務員から金銭等の提供を無心されることがある。

    いくら管理職の立場にある者が贈賄を行わないよう気をつけていたとしても、そのような無心を受けた従業員が軽々と応じてしまう可能性もあるため、17年に汚職防止委員会(NACC)が公表した「贈賄行為防止のための内部統制措置に関するガイドライン」等を参照しつつ、従業員の管理や教育を行なっていくことが大切である。

    寄稿者プロフィール
    • 藤江 大輔プロフィール写真
    • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
      代表弁護士  藤江 大輔

      2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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