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タイ自動車市場〜潮目が変わった2023年と日系メーカーの挽回策〜

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        本稿では、タイのEV市場の最新動向、タイランドEV3.5を中心としたEV奨励策を概観した後、2024年以降に注目されるタイのEVにおけるトレンドを取り上げて、最後にEVで後発に回った日系メーカーの挽回策について触れる。

      23年は、日系メーカーが長らく高いシェアを誇ってきたASEANで、潮目が変わった年として自動車産業史に残るかもしれない。その第一波がタイに押し寄せ、インドネシアや他のASEAN市場にドミノ倒しのように広がっていく。そのようなホラーシナリオを十二分に感じさせる展開となった。

      モーターエキスポで際立った中国勢の展示

      それを筆者が肌で感じたのは、2023年11月30日~12月12日まで開催されたバンコクモーターエキスポであった。タイにおける中国系三大ブランドのBYD、GWM、MGに加えて、今年から初参加の長安汽車(Changan)、広州汽車(GAC-Aion)が最も目立つ奥のブースの半分以上を占領し、斬新なEVのデザインと派手な演出で、集客力で圧倒していた。特にChanganの「Deepal S07」は、高級車のようなデザインでありながら、130万バーツ代の手頃な値段で発売されたことから話題となり、展示会ではモデルに近寄れないほどの人気ぶりであった。

      そのあおりを食ったのは、常連の日系メーカーであった。地味な演出で、並べているモデルも代わり映えがないこともあり、多くのブースは閑散としており、新旧交代を目の当たりにした感があった。
      新車の成約台数にも早速表れた。モーターエキスポ期間中の中国系5社の成約台数は2万1,000台以上に達し、全体の成約台数の4割以上を占め、3位BYD、4位AION、5位MG、6位Changan、7位GWMと中国勢が上位を占めた。1位と2位はトヨタとホンダが取ったが、その他日系メーカーは8位以下と振るわなかった。

      タイのEV旋風を巻き起こした中国系メーカー

      中国勢の躍進は、言うまでもなくタイでEV旋風を巻き起こすことに成功したことによる。タイ政府がEVに対する補助金を昨年4月から開始し、中国メーカーは間髪を入れずにタイへの進出を決め、新規EVモデルを相次いで投入。その結果、EVの販売比率は、昨年の約1%から、23年10月には12%まで上がり、1~2%にとどまっている他のASEAN諸国に比べて突出している(下図)。

      中国勢主要4社(BYD、MG、NETA、GWM)のシェアは今年10月までの累計で11%、10月の単月ベースでは16%まで伸びている。EVの販売台数では、中国系は6割以上を占めており、中国メーカーの独壇場となった。
      中国メーカーのEVのシェア上昇は、昨今のローン審査の厳格化も後押しした形となった。家計の負債比率の上昇を背景にローンの焦げ付きが増えており、ディーラーのローン審査が厳しくなっている。EVを購入する顧客は、一戸建て住まいの中間所得層以上が多く、ローン返済リスクが低いために、内燃機関の購入者に比べてローン審査が通りやすくなるからだ。

      タイの市場で注目されるのは、市場の両極化が進んでいることである。ボリュームゾーンはBYD「ATTO 3」のような100万バーツ前後のCセグメントのSUVであるが、Teslaの「Model Y」のように200万バーツ以上の高級モデルが5位内の上位にある反面、NETAの「NETA V」やBYD「Dolphin」のような55~70万バーツの低価格モデルが販売を伸ばしている。

      タイのEV販売動向

      2023年のタイのEV販売台数は、補助金などによるBEVの小売価格の引き下げにより急増し、7万6千台に達した。
      BYDの「ATTO 3」が販売トップであり、Tesla以外は中国メーカーが上位を占める。

      タイのEV販売台数(2024年1月現在)と タイのモデル別EV販売台数トップ5(2023年1月~12月)

      タイのセグメント/価格別のEV市場マップ

      タイのEV市場は、プレミアムセグメントのTesla、ミディアムセグメントのBYD「ATTO 3」、ローセグメントの「NETA V」と3セグメントに分かれている。ボリュームセグメントはミディアムセグメント。

      中国勢の成功要因

      BYDの4P戦略

      中国勢のEVがタイで飛躍的に伸びているのは、政府の手厚い補助金や通りやすいローン審査などの外部環境もあるが、的を射た4P(Product、Price、Promotion、Place)戦略が効いたからだ。つまり、一時的なブームにたまたま乗れただけでなく、それを最大限に活用できる能力と戦略を持っているから伸びたのである。中でも中国勢で首位を走るBYDは、この4P戦略で際立っている。

      タイの新たなEV普及策「EV3.5」

      タイの中心的なEV奨励策は2021年に発表された「30@30」であり、その実現のためにEV関連投資への法人税免税などの投資奨励策、補助金の支給、EV物品税・関税の引き下げ、充電網の整備、部品の国産化の推進などが行われている。22年以降、タイにEVの急速な普及をもたらしたのは、22年3月から施行された「Thailand EV3.0」のスキームの下での補助金の支給である。当スキームは24年1月末に終了し、同年2月から始まる新しいEV投資奨励策の「EV3.5」に引き継がれ、補助金は従来の15万バーツから10万バーツに減額されたが、27年まで継続される予定である。「EV3.0」と同様に、補助金支給を受ける自動車メーカーは、26~27年までに現地生産を開始し、24~25年までの輸入完成車台数の2~3倍の生産をすることが条件となる。

      タイの政策動向

      2024年以降のタイのEV動向の注目点

      (1)EVブームは継続するのか

      2024年のタイの自動車業界の動向でまず注目されるのは、24年以降もEVの販売ブームが続くか否かである。2月以降補助金が15万バーツから10万バーツへ引き下げられることによる影響が業界で関心を集めている。結論から言えば、EVを購入する顧客は、初期購入価格のみならず、ランニングコストやメンテナンスコストを重視しているため、補助金の削減はさほど影響が出ない可能性が高い。むしろ、より低価格の投入モデルが増えることや中国系のディーラー網がより全国に拡充することにより、販売台数は増える可能性がある。なお、タイ電気自動車協会(EVAT)のウタモテ・クリサダ会長は今年の販売台数を昨年の倍の15万台と予測している。

      EVの今年以降の拡大は、最近のEV購入者の購入層の変化からも裏打ちされる。本誌2023年8月号の拙稿でも触れたように、現在のタイのEVの普及段階は普及初期から普及加速期に移行している。普及初期は、複数保有の富裕層が中心であったが、23年の後半以降から、NETAのような50万バーツ代の廉価なEVや、70万バーツ以下のBYDの「Dolphin」が発売されたこともあり、EVのユーザーの中で初期購入者が増大し、より若い世代であるミレニアム世代、つまり40歳以下の都市中間層(オフィスワーカー、マネージャー層)にまで広がっている。購入において重視する要件も普及初期のユーザーのように技術、環境、デザインなど、イノベーターが重視する要因からランニングコスト(対燃料費)のような経済性や実用性をより重視するようになっている(下図)。

      近年の購入層の変化

      燃料代に比べると、EV電気代は3分の1にとどまる。EVの価格が若干上がったとしても、現在のように燃料価格が高止まりするのであれば、EVに乗る方が経済的と考える顧客が多い。特に初期購入者層は、所得が相対的に低いこともあり、ランニングコストを含めた総所有コスト(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ:TCO)をより重視する。また、2台目需要の多くは、遠距離はICE、100km以下の近距離ではEVと使い分けることができるため、EVへの切り替えは今後も順調に進むことが予想される。

      (2)EVの普及はどのような段階で減速するのか ~EVのリセールバリューの問題の顕在化

      EVの普及は、2023年後半に減速した米国市場にみられるように、イノベーターやアーリーアダプターに一通り普及したら、普及障壁(右頁上図)に直面する可能性がある。イノベーター理論では、イノベーターからアーリーアダプターまでの人口は全体の17.5%とされており、それ以上広がるかどうかは、補助金などの政策要因、EVプレーヤーの戦略要因(投入する商品)、充電などのインフラ要因、ユーザーの意識・生活様式の変化要因などにかかっていると想定される。現在のEVユーザーの多くは、1日の走行距離が100~150kmであり、ユーザーの8割以上は家で充電しており、公共充電ステーションでの充電をあまり必要としていない。しかし、移動距離が長いヘビーユーザーであれば、購入ファクター(KBF)において、公共充電ステーションの普及や、充電時間の重要度が高まることが予想される。

      また、EVの普及に従い、EVの問題点もより顕在化することになるだろう。その一つは、今はタイのユーザーがあまり重視していないEVのリセールバリューである。EVの購入層は、複数保有の富裕層ないし初めて車を購入するミレニアム世代以下の世代であるために、リセールバリューはまだ重要な購入要因(KBF)として考慮されていない。しかし、車を買い替えるユーザーであれば、EVの5~6年後のリセールバリューをより重視するだろう。また、ローン会社は現在、EV購入者に対する審査は厳しくないが、将来的にはEVのリセールバリューが大きく下がることがあれば、ローン条件がより厳しくなる可能性もある。

      中国系合衆新能源汽車傘下の新興EVブランドNETAの参入 と BYD廉価EVハッチバック 「Dolphin」の投入

      近年の購入層の変化

      (3)環境負荷軽減やバッテリーの価値維持のために必要なバッテリーの3R

      中長期的にEVの残存価値を高めるためには、車両価格の4割以上を占めるバッテリーを有効にリユース、リパーパス、リサイクルする3Rのサーキュラーエコノミーの確立が不可欠となる。中国でEVのゴミ捨て場が社会問題化しているように、EVの残存価値が低く、バッテリーが捨てられるようになれば、環境悪化にもつながる。バッテリーのリサイクルはリサイクルコストが高いために、当面有望視されているのは電池のリユースと、太陽発電などに使われるバッテリーエネルギーストレージシステム(BESS)やフォークリフトなどその他輸送機器へのリパーパスである。

      しかし、そのためには、バッテリーの劣化状態(SOH)を正確に診断する技術や設備への投資、使い済みバッテリーを回収・選別・配送する商流と物流の構築が不可欠となり、投資が必要なほか、一定以上のEVの使用済みのバッテリーのスケールメリットが望ましいことから時間もかかる。日系メーカーとしては、このような車のライフサイクルを考慮したバリューチェーンを最初から構築すれば、環境負荷の低減につながり、タイ政府や環境意識の高いユーザーの信頼を勝ち得ることになるだろう。中国メーカーは本国でそうであるように、まだしっかりとしたバッテリーのバリューチェーンを構築できていない。

      バッテリーのライフサイクル

      (4)2024年からの中国メーカーの現地生産の影響~中国EVの現地生産はもろ刃の剣

      タイ政府は、EVに対する補助金の給付の条件として、現地生産を義務付けており、下表のとおり中国メーカーは2024~25年にかけて相次いで生産を開始する。また、新たに韓国のHyundai/Kiaも工場建設を発表している。BOIの統計によれば、395億バーツの投資金額により、24年のEVの生産能力は35万9,000台に到達する。

      中国メーカーは現在中国からEVを完成車として輸入販売しているが、完成車輸入から国内生産への切り替えは、中国メーカーにとってもろ刃の剣となる可能性がある。まず、ネガティブ要因(デメリット)としては、中国メーカーの強みは本国で集中生産することによる量産効果であることから、タイでの現地生産により採算性が下がることが挙げられる。例えば、BYDは本国で50万台規模の工場において集中生産し、社内にサプライチェーンを持つことが同社の競争力の源泉となっている。さらに、中国メーカーは昨年、国内での過当競争を背景に採算性の高い輸出を増やすことで収益を補塡していた。タイ現地での工場の稼働を維持するためには量産しなければならず、供給圧力が増え、タイ国内でのEV市場が伸び悩めば国内での過当競争に陥る可能性がある。

      また、現地調達40%の達成目標は現地でのサプライチェーンを有していない中国メーカーにとってハードルが高く、到達できなければ現地生産車として認定を得られず、補助金を受けられなくなるリスクがある。もちろん、それはタイ政府がどの程度厳密に現地調達率を審査するかにもかかわってくる。以上のような状況から、将来中国メーカーは淘汰される可能性がある。

      その一方で、ポジティブ要因(メリット)として、EVの現地生産に伴い、中国メーカーは中長期的により安定した供給体制を構築することになる。さらに、そのことがディーラーおよびユーザーから信頼をより勝ち取ることにつながる。現地生産により、モデルの継続的な供給、販売およびサービスが顧客およびディーラーに対して保証されるからである。また、現地生産することで現地により適合した製品の開発と供給がより可能となる。現にBYDやGWMは、タイでの現地生産の後にR&D拠点の設立を計画しており、生産と開発を両輪で進める方針だ。タイでは、タイの嗜好を反映したアクセサリーなどの一部の部品の設計やコネクテッドなどのソフトウェア回りを開発する可能性がある。生産と開発の両者がうまくかみ合えば、日系にとって一層の脅威となる。

      主要EVメーカーのタイでの生産計画

      ネガティブな要因 と ポジティブな要因

      (5)中国系のEVの現地生産によるサプライチェーンへの影響は限定的か?

      中国系メーカーの進出により、EV関連のサプライチェーンがタイで今後どのように発展しているのか関心が高い。EVの部品点数は元々内燃機関の4割程度と言われており、しかも当面はほとんどの部品が中国からのノックダウンで輸入されていることから、EV関連のサプライチェーンの広がりは当面限定的とみられる。タイでは40%以上の国産化率が義務付けられ、またモーター、バッテリーマネジメントシステム(BMS)などの基幹部品の現地化が求められているが、最大手のBYDは本国でバッテリー、半導体、モーター、BMSを含めてほとんどの基幹部品を内製化していることから、BYDの系列会社を連れてきて自社工場内で最終加工・組付けする可能性が高い。中国メーカーは本国から安い部品を調達して、現地では最低限の組み付けにとどめることが望ましい。

      日系に比べてコストの安いローカルメーカーには一部のボディ部品などが外注される可能性は残されているが、金型は中国から調達し、現地ではスタンピングや塗装などの最終加工のみといったようなプロセスにとどまるだろう。中国メーカーがより本格的に現地化を進めるのは、20万~30万台以上の量産規模が達成してからであると想定される。

      (6)日系メーカーのシェアの低下に拍車をかけるディーラーのくら替え

      24年以降も、日系メーカーのシェアの一層の低下は避けられないように見える。その傾向を助長しているのが、最近のディーラーの動向である。BYDなどの中国勢の進出と好調な販売を目の当たりにして、EVに商機を見たディーラーが日系から中国勢に続々とくら替えするケースが相次いでいる。例えば、日産のメインディーラーであるSiam Motorsを経営するPornprapa一族はBYDの独占的なディストリビューターのReverとなったことは記憶に新しい。地方のディーラーでもその傾向がみられ、長安汽車の「Deepal」のコンケーン県のディーラーは、日系メーカーの大手ディーラー出身であるとみられる。

      それに加え、優秀なセールス人材も、売れる中国ディーラーに流れているという話が関係者から聞き漏れてくる。つまり、中国系のEV市場参入により有力なEV商品を持たない日系のシェアが下がり、それがディーラー離れを引き起こし、さらに日系のシェアがダウンするという悪循環が起きようとしている。例えば、野村総研タイがシンガポール日本商工会議所向けに発表した資料では、中国系のシェアは22年現在の5%から28年までに24%までの上昇を予測している。このままいけば、日系メーカーの何社かはタイ市場から撤退する可能性もあるだろう。

      ネガティブな要因 と ポジティブな要因

      中国メーカーの国産化戦略

      日系メーカーの巻き返し策

      EVのゼロベースの開発とその中継ぎとしてのハイブリッドの再強化

      以上のような中国メーカーのEVでの攻勢と直近の日系のシェアダウンに対して、日系メーカーはどのような巻き返したらいいのか。そのカギとなるのが、24年1月10日、ラスベガスで開催されたCESでホンダが発表したEVのグローバルモデル「0(ゼロ)シリーズ」だろう。現在のEV市場はコスト・スペック競争が激化しており、既に中国勢にコストではもちろんのこと、スペックでも後発の日系としては充電距離の長さなど既存のスペック競争で差別化することも難しい。そこで、ホンダは「既存のスペック競争には参加せず、EVをゼロベースで作ること」を宣言した。26年から北米で展開を開始する。トヨタも同様に、26年を目処にEV向け次世代プラットフォームを開発する。また、27年から全個体電池を搭載したモデルも投入する予定だ。

      さらにFCV(燃料電池)、水素エンジンなどの開発・商品化を進めることで、真の「マルチパスウェイ」を展開していくことは望ましいが、技術難度はさらに高いことから、より長期の30年以降の課題となる。

      これら新しいプラットフォームのEVの展開が開始する26~27年まで、日系メーカーは持ちこたえられるのか。その間に手を打たないと、中国にシェアを奪われ、挽回の余地が難しいほど地盤沈下が進む可能性がある。23年末から24年初めにかけて、トヨタとホンダがEVの現地生産を始めるが、既存のラインでの生産が予定されており、本格的な量産とは言い難い。しかし、EVで大きなシェアを取れなくても、日系のEVのサービスの良さ、バッテリーの耐久性などで他社とうまく差別化することができれば、今後のEVでの日系の巻き返しのスタート地点に立つことができる。

      日系の中国メーカーへの対応策・EV挽回策

      短期のスパンでみれば、日系が強みとしているハイブリッドのコスト競争力を再強化することも選択肢としてありえる。世界の動向やタイのEV奨励策と逆行しているように見えるが、EVの普及が壁にぶつかれば、HEVが再評価される余地はある。実際に、米国では昨年、ハイブリッドの販売が伸びた。中国では昨年後半以降にPHEVの販売が伸びている。現状ではEVは補助金が支給されていることから、補助金を受けて70万バーツ以下のBYD「Dolphin」と比べると、ホンダ「City e:HEV」は76万9,000バーツであり、割高である。そこで、部品の現地化と量産化を果敢に進めて、コストを引き下げることが重要だ。また、製品の価格競争力に加えて、アフター・サービスのコストを引き下げ、ユーザーのTCOを引き下げることが望ましい。ホンダは、昨年末に5年間のサービス・パーツ無料キャンペーンを展開している。EVのローンチに比べると、地味な取り組みではあるが、日系が強みとしているアフター・サービスをフルに活用した戦い方として注目される。

      最後に

      中国メーカーの追い上げは激しい。このままいけば、日系メーカーの何社かはタイから撤退する可能性もあり得る。しかし、タイユーザーの日系ブランドに対する信頼は高く、短期的には中国系に対して差別化できる商品およびサービスの展開や、サービスを含めたコストの引き下げによりユーザーのTCO(Total Cost of Ownership)への訴求を強める。さらに長期的には、既存のスペック競争に距離を置いた新しい製品・技術軸を打ち出せば、日系は挽回できる可能性は十分にある。

      寄稿者プロフィール

      野村総合研究所タイ

      • プリンシパル 山本 肇t
      • 野村総合研究所タイプリンシパル 山本 肇

        国内のシンクタンクの研究員として従事した後、2004年からチュラロンコン大学サシン経営大学院(MBA)に留学。06年からCSM Automotive(後にIHSに改称)のバンコクオフィスのダイレクター。13年から野村総合研究所タイに勤務。アセアンの自動車産業の調査(設計開発、サプライチェーン、市場戦略など)、産業政策策定支援を専門としており、野村俊郎・山本共著『トヨタの新興国適応~創発による進化~』などの著書あり。

      野村総合研究所タイ

      《業務内容》
      経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

      399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110
      TEL: 02-611-2951
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