【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む
タイのEV充電ステーションの方向性

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タイ政府は現在、EVエコシステムを強化し、タイをASEANのEVハブにすることを目指し、2030年までに直流タイプ(DC型)のEV急速充電器を全国で13,000基以上、同タイプの充電器を備えたEV急速充電ステーションを約1,400ヵ所まで整備することを目標としている。そしてこのほど、事業者に対して一定のインセンティブの供与と規制緩和を行った。このようなタイ政府による電気自動車の普及促進措置は、EV充電ステーションの事業者に対して投資及び成長機会を提供していると言えるだろう。
政府による最近の動向
電気自動車の充電事業を活性化させるための推進策として、大きく2つが挙げられる。まず、最低3年間取得できる法人税免税措置に加え、タイ投資委員会(BOI)からの条件を企業が満たせば、最大5年間取得することができるというもの。また22年3月以降、EV充電設備投資に対するメリットを得るために、その他の給付条件やISO 18000規格取得といった要件を緩和している。
EVステーションの現状と政府の目標
タイ電気自動車協会(EVAT)によると、タイ国内でも充電器は交流タイプ(AC型)が主流である。タイのEV産業がまだ初期段階にあることを勘案すれば、この状況はやむ得ないと言えよう。しかし、EVの長距離走行へのニーズが高まれば、EV急速充電ステーションやEV急速充電器の増設が不可欠となる。政府は、特定の観光都市に集中するより全国に普及させたい考えであり、一部の充電インフラ企業や大手自動車メーカーと連携し、充電インフラの普及拡大に取り組んでいる。
30@30 EV普及促進政策の下、政府は30年までに主要都市、観光地、サービスエリア、コミュニティエリアなどに12,000基の公共EV急速充電器の設置を目指す。また、エネルギー政策企画事務局(EPPO)の計画では、政府は全国のEV急速充電ステーションの設置箇所を22年の827ヵ所から30年には1,394ヵ所に増やす方針。567ヵ所の取引精度の増設は、13,251基の急速充電器に相当し、その大半は大都市圏に集中する予定だ。
このような奨励策を機会に、多くの大手事業者はEV充電ステーションの全国展開に注力している(図表1)。地方配電公社(PEA)は、75県のサービスをカバーするために22〜23年の間に190のEV充電ステーション「PEA VOLTA」を設置。同社は幹線道路だけでなく、二級道路、官公庁、コミュニティモール、観光スポーツ、国境の交易所などでも近い将来にPEA VOLTAを運営する計画だ。
民間スタートアップ企業Evoltは、主要な観光地を中心にEV充電ステーションを展開(大部分がAC型)。イギリス大手MGとのコラボレーションを通じて、全国で100以上のEV急速充電ステーションにサービスを提供しており、22年末には500ヵ所、30年には全国で12,000ヵ所へ拡大することを目指している。
石油公社PTTは、所有するEV充電ステーション100ヵ所(2022年5月時点)を、年内に300ヵ所まで拡大する方針だ。またPTT傘下のArun Plusは、22年にはOn-ion型EV充電ステーションを1,000ヵ所に拡大する計画である。
今後の課題
以上のように、多くのEV充電ステーション事業者が複数のパートナーと提携・拡大することにより、EVエコシステムが整備されることが期待される。その一方で、投資負担の多いEV急速充電器の設置や、安定的に電力供給できる電力インフラの整備が実現できるかに加えて、集合住宅における設置への制約をクリアできるかが大きな課題である。
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野村総合研究所タイ
シニアマネージャー 山本 肇
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野村総合研究所タイ
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《業務内容》
経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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