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【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

インドネシアの二輪車EV市場の現状と将来の普及の課題

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      インドネシア政府は、今年4月から電動バイク購入者向けの補助金制度を導入し、電動バイクの普及拡大に注力している。その背景となっているのは、内燃機関を含む二輪車の市場が600万台に達しており、世界ではインドに次ぐ規模で、将来の市場ポテンシャルが高いからだ。また、電動バイク市場が拡大すれば、政府が国策で進めている国内のニッケル資源を活用したバッテリー生産拠点化につなげることを目論んでいる。

      インドネシアの電動バイク市場の概要

      インドネシアの電動バイク市場は、2022年1~9月には28,000台に到達した。市場規模はまだ二輪車市場全体の0.5%に過ぎないものの、既に30社以上の二輪車メーカーが参入しており、報道によると現地の電動バイクの生産能力は100万台に達している。インドネシアの電動バイク市場の特徴は、このように多数のメーカーが参入し、既に初期普及段階で過当競争に入っていることだ。もう一つの特徴として挙げられるのは、現地メーカーが大多数を占めていることである。ホンダ、ヤマハなどの日系が市場の95%以上を占めている内燃機関の二輪に比べると、現地ローカルメーカーが参入しやすい環境だからだ。

      代表的なメーカーとしては、国営企業系のGesits、スタートアップ企業系で交換式電池サービス(スワップ式バッテリー)を提供するSmoot、Volta、上級電動バイクを販売するAlvaなどがある。Gesitsは従来から国営企業の傘下にあるが、22年12月に国営バッテリー企業であるIndonesia Bettery Corporation(IBC)が50%以上の株を取得したことで、IBCが主導するインドネシアのバッテリーの国産化及びEVエコシステム形成でより主導的な役割を果たすことが予想される。その一方で、SmootとVoltaの両社は、スワップ式バッテリーのEVバイクで最近市場でのプレゼンスを増している。

      SmootとVoltaは既にそれぞれ800ヵ所、300ヵ所のスワップステーションを設置しており、先行投資により、エコシステムへの囲い込みを目論んでいる。この他に、アジア最大のスワップ式バッテリーサービスを提供する台湾系Gogoroが、現地のライドシェアリング大手のGojekと21年11月に提携し、現地生産も計画するなど、インドネシアへの参入を進めている。Alvaはイタリアのデザインという触れ込みで、最近、3,000万ルピア以上する電動バイクを投入した。

      電動バイクの普及の課題になっているのは、航続距離が短いことと、バッテリーの価格が高いことだ。内燃機関のバイクは300㎞以上走るのに対して、電動バイクは40~50㎞にとどまる。また、電動バイクの中心価格は2,000~3,000万ルピアであり、1,800万~2,500万ルピアの内燃機関より若干高い。航続距離の制約への対応策として、各社は電池交換ステーションを設置することにより、特に長距離を走る宅配やバイクタクシー等のフリート需要に応えようとしている。また、初期購入コストを抑えたい購入者に対しては、バッテリーのコストを支払わない代わりに、スワップ方式により、電池の使用量によりチャージするシステムを提供している。

      スワップ式バッテリーで首位にたつSmootは、ライドシェアリング大手のGrabと提携して、バッテリーのリースをGrabのバイク運転手に展開しており、最近、ジャカルタの街中でみかけるようになった。筆者がジャカルタでインタビューしたGrabのバイク運転手によれば、毎日5万ルピアを支払ってバイクを借りており、1日3回コンビニなどに設置されているバッテリースワップステーションでバッテリーを交換している、とのことである。このようなヘビーなユーザーに対して、初期購入コストを抑えれば、電動バイクが普及することが予想される。

      政府の電動EV普及策

      政府は、20年までに電動バイクの販売台数を200万台まで拡大する計画を立てている。今現在、まだ年間販売が2万台程度と普及が想定したほど進んでいないことから、政府は補助金を供与することで、その普及を後押ししようとしている。政府は今年の3月から7,000万ルピアを補助金として給付し、補助金付きのEVバイク20万台の登録を目標としている。しかし、補助金の条件として電動バイクの国産化率が40%以上と定められており、現地生産を本格化していない日系ブランドは除外されている。なお、補助金受給資格者は、事実上中間所得層以下という条件が付けられていることから、補助金への申請は少なく、6月23日現在815台しか認可を受けられていない。

      また、電動バイクの普及にはバッテリー充電ステーションの普及が鍵となることから、政府はバッテリーの充電ステーションの整備を進めるために、国営電力会社のPLNを中心に取り組んでいる。政府の計画では2025年までにバッテリースワップ式ステーションを1万ヵ所、バッテリー充電式ステーション4,000ヵ所を目指している。

      電動バイク普及の課題

      政府の計画を見る限りスワップバッテリーに力点を置いているようにみえるが、電動バイク普及の課題は、バッテリーの規格が統一されていないことである。例えば、バッテリーの電圧(V)や充電のコネクターの取り付け位置が、各社で異なっている。これは、政府がバッテリーやスワップステーションの規格を策定する前に、各社がバッテリーなどを中国や台湾の別々の提携先から輸入し、現地で事業展開しているためだ。規格が統一されていないと、ユーザーにとって利用できる交換ステーションが限定され、電動二輪の普及の足かせになる。今年3月にIBCが中心となりローカル企業4社によるコンソーシアムを立ち上げて、コネクター、スワップステーション、バッテリーの統一規格を進める取り組みが行われているが、このコンソーシアムには日系メーカーは加入しておらず、日系の規格と異なる統一規格が進むことが懸念される。

      以上のように、インドネシアでは電動二輪の普及の兆しが見えているが、より普及を加速させるためには政策・制度(補助金、バッテリーの規格)、電動二輪の製品・性能(価格、航続距離)などの課題への対応が必要である。また、日系企業はローカル企業や台湾・中国企業に比べて出遅れ感があり、現地で規格や電動バイクのエコシステムの制度が確立される前に、日系が有する製品・サービスや規格の優位性を現地側に理解してもらうような活動が必要だろう。

      寄稿者プロフィール
      • 三宅 洋一郎プロフィール写真
      • 野村総合研究所タイ
        マネージング・ダイレクター三宅 洋一郎

      • 山本 肇 プロフィール写真
      • 野村総合研究所タイ
        シニアマネージャー 山本 肇

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      • TEL : 02-611-2951

        URL : www.nri.co.jp

        399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

      《業務内容》
      経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

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