【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む
モーターエキスポ2022にみる中国系BYDの躍進

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バンコクモーターエキスポが11月30日から12月12日まで開催され、全体で前年比16.13%増の36,679台が販売された。今回注目されたのは、電気自動車の大幅な増大販売である。中でも、1ヵ月前にタイ市場に参入したばかりの中国最大NEVメーカー(新エネルギー車)、BYDの躍進について今回は著述したい。
BYDの「トリプルワン」
モーターエキスポの最終日に、BYDの展示ブースのスクリーンに、「ATTO3、1ヵ月12日間で10,305台販売」という表示が映し出された。BYDの関連ディーラー一同が集まり集合写真を撮った時の場面である。たった1モデルを1ヵ月で、1万台販売という意味での「トリプル・ワン」を達成したということになる。また、モーターエキスポ期間中の売り上げランキングではトヨタ、ホンダに続いてBYDが3位に。新興メーカーとしては1年ほど前に先に進出した中国系メーカーGWM(長城汽車)を上回る快挙である。
2022年10月号の拙稿で指摘したように、中国最大のNEVメーカーの「黒船の到来」の予兆を感じさせる展示会デビューであった。逆に、これまでタイでのEV販売でトップを快走していたGWMは大きく伸びず、早々にBYDに国内EV首位の座を譲ることになることが予想される。
タイのユーザーが重視する購入要因
タイ人の「新しい物好き」を反映しただけなのか、実力を伴ったものなのかを確認したく、今回モーターショーで発売されたATTO3を購入したユーザーに直接インタビューを行った。面談したユーザーは30代前半、独身男性、ラヨーン県の工場に勤務するマネージャー。若年層のネット世代、テクノロジー好きという典型的なEVユーザー像に当てはまる。図表1に回答内容を引用する。
回答はあくまでも一名のユーザーから聞いた話なので、そのまま一般化はできないが、タイのユーザーは価格、グラウンドクリアランスの高さ、バッテリーの信頼性、航続距離を重視。また、10月号の拙稿でも指摘したが、BYDはバッテリーなどの基幹部品を内製しており、サプライチェーンの強靭性が販売拡大につながっていることを確認できる。
テスラは1日で4,000台受注
世界最大のBEVメーカーであるTeslaも負けていない。12月7日に正式ディストリビューターがタイでモデル3とモデルYの販売を開始し、わずか一日で4,000台以上予約をオンラインで受け付けた。主な販売購入理由は、テスラに対するブランド信仰に加えて、これまでグレーマーケットで入ってきていたために新車価格が200万バーツ(モデル3の場合)と大幅に下がったことが大きい。
他方、日系メーカーは今回のモーターエキスポでトヨタの「bZ4X」の本格販売やホンダの「SUV e:プロトタイプ」の展示など、EVの商品の投入に本腰を入れ始めた。ただし、日系とほぼ同じ値段のテスラ、100万バーツ以下の中国系、200万バーツ以上の欧州系との競争・差別化をどう図るのかが試される。
中国NEV最大手BYDのタイ進出〜日系メーカーにとって黒船到来となるのか〜
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野村総合研究所タイ
マネージング・ダイレクター田口 孝紀
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野村総合研究所タイ
シニアマネージャー 山本 肇
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URL : www.nri.co.jp
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《業務内容》
経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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