【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む
回復傾向が著しいタイのトラック市場

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タイではトラック市場が急回復している(図表1)。
コロナ禍の最中にはロックダウンなどの経済活動の低迷により、2019年の35,000台から30,000台に落ち込んだが、今年は過去のピークである18~19年の水準近くまで回復すると見込まれている。タイの中型〜大型トラック市場はASEAN最大であり、同域内の生産拠点としての注目も高まっている。
近年の市場回復を牽引する小型トラックセグメント
タイのトラック市場において特に最近伸びているのが、3.5~6トンの小型トラックセグメントである。21年の小型トラック市場は15年比で71%増大しているのに対し、同時期の中型トラック(6〜15 トン)は7%増に留まっている。大型トラック(15 トン超)に至っては11%減だった。
小型トラック市場の拡大は、コロナ禍期間中の巣籠り需要によるEコマース及びその他コンビニ、スーパーといった小売り向け物流需要が急増したことが背景にある。また、日系トラックメーカーを中心に都市型物流向けの軽量トラックが市場に投入されたことも、その拡大に貢献している。バンコクでは、一般のトラックは渋滞回避のために午前6時~9時まで、午後4時~8時まで市内の通行を規制されているが、ピックアップなどの車重量が2.2リッター以下の商用車は規制の対象となっていない。そのため、日系大手トラックメーカーは架装などの軽量化を図ることで車重量を2.2リッター以下に引き下げている。
20年1月にいすゞが「エルフNLRライト」、同年6月に日野が「300 ATOM」を発売したことにより軽量トラックを使うことで従来は運べなかった日中にも配送ができるようになった。また、ピックアップでは1~2トンの積載物しか運搬できないが、軽量級トラックでは2~3トン以上の積み込みが可能なため、輸送効率を1.5倍以上に上げられるというメリットもある。
中型~大型トラックの生産拠点としてのタイ
タイの小型トラックにおける市場規模は、56,000台に達するインドネシア市場の5分の1程度。これに対して、10トン以上の中型~大型トラック市場は2万台を超え、同域内最大規模である。タイの中型~大型トラックでは、農業・建設・運搬業などの幅広い業種で使われているフルトレーラーや、工場・コンテナ運搬などに使われているセミトレーラーが中心になっていることが特徴だ。
大手トラックメーカーは現在、タイで中型~大型トラックの生産拠点化及び開発拠点の設立に動いている。日野自動車は115億円を投資し、21年末にチャチュンサオ県に新工場及び開発・地域統括拠点を設立。国内・地域向けのトラックの開発及び中型~大型トラックの生産拡大を図っている。欧州トラックメーカーのScania(スカニア)も、タイに地域向け生産拠点とR&D拠点の設立を発表。中国の福田汽車(Beiqi Foton Motor)は19年にタイのCPグループと合弁でタイに進出し、「AUMARK」ブランドの生産・販売に加えて、21年11月に5つのEVトラックモデルを発表し、22年末にもEVトラックの生産を開始する予定である。
同域内では、生産・開発拠点としてインドネシアとの競争が注目される。業界関係者の話によれば、インドネシア製トラックは過積載などの特殊な国内市場の仕様を合わせているため海外展開がしづらく、必ずしも有利な立場にいるわけではないという。他方で、タイはASEAN周辺国との近接性、高度に発達したサプライチェーン、研究開発といった高度産業人材確保の面で優位性があるため、トラックメーカーはタイに輸出拠点を集中する傾向にある。
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野村総合研究所タイ
マネージング・ダイレクター田口 孝紀
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野村総合研究所タイ
シニアマネージャー 山本 肇
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TEL : 02-611-2951
URL : www.nri.co.jp
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《業務内容》
経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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