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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

中国NEV最大手BYDのタイ進出〜日系メーカーにとって黒船到来となるのか〜

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    ここに来て、中国メーカーのタイへの進出がさらに加速している。今年8月末に中国最大のNEV(New Energy Vehicle:プラグインHV、BEV、FCVなどを指す「新エネルギー車」の総称)メーカーであるBYD(比亜迪汽車)が、タイで2024年までに年産15万台規模の工場を設立すると発表した。

    BYDのタイ進出の背景

    特筆すべきは、同社初の海外工場をタイに立地したことである。同社は今秋から欧州市場への本格参入を発表するなど、従来の中国市場中心の事業から海外展開を始動する。その布石として、タイに右ハンドル車の生産拠点を構え、ASEANや欧州等に輸出を拡大する狙いである。

    タイへの工場進出を後押ししたのは、22年初めに発表されたEVに対する物品税引き下げ・補助金供与を中心とした投資恩典制度であることは間違いない。タイ政府は将来的な現地生産を条件として、完成車輸入関税の一時的減税(中国からの輸入場合は同恩典制度前から無税)、物品税の8%から2%への引き下げ、最大15万バーツの補助金を供与する。

    それに加えて、日欧米等で進む供給網からの中国の切り離し、いわゆる「チャイナ・デカップリング(分断)」の動きが中国勢のタイへの進出を加速させていると筆者は見ている。中国本土以外で強靭なサプライチェーンを構築することで、先進国市場から締め出される将来的なリスクを回避できるからだ。

    タイでサプライチェーンを本格構築しようとしていることは、同社がタイ東部ラヨーン県にあるWHA工業団地から600ライ(96ヘクタール)の広大な用地を購入し、将来的には、サプライヤー向け用地も含めてさらに500ライを追加購入する計画からも窺える。

    また販売において、タイの大手自動車メーカーSiam Motors Groupと組むことも話題を呼んでいる(図表1)。

    BYDのタイにおける事業体制

    BYDの独占販売権を持つRever Automotive社をグループ企業に抱え、日産やコマツ、ダイキンといった日系企業の合弁相手であり、リケンやGSバッテリー等の自動車部品メーカーにも出資するなど自動車産業との関わりが深い。同グループの持つ幅広い業界及びファミリー経営による社会的なネットワークを最大限活用しながら、タイ国内市場への浸透を図る戦略だろう。

    10月にEVモデル「Atto 3」を販売すると発表(中国では「元PLUS(Yuan Plus)」として今年初頭から販売)し、初年度に販売数1万台、5年以内にタイ国内販売でトップ5入りを目指す。

    黒船の到来となるのか

    BYDの進出は、タイ・ASEAN市場を牙城としている日系メーカーにとって黒船の到来を意味するかもしれない。

    その第1の理由が、随一のスケール・展開スピード力である。同社は、2022年1~8月のNEVにおける世界販売台数で約100万台に達し(昨年比の約3倍増)、米Teslaを追い抜き首位に立っている。

    第2として、同社はバッテリーやモーター、BMS(バッテリーマネジメントシステム)などの主要部品を全て内製している。これにより、他メーカーに比べていち早くEVサプライチェーンを確立し、域内の生産ハブとしてコスト競争力を高めることができる。

    第3に、同社の価格競争力である。同社が生産するバッテリーは「リン酸鉄系」であり、コバルトやマンガン、ニッケルを使う「三元系」と比較してエネルギー密度が低く、航続距離は短いものの希少金属を利用しないためコストを安く抑えられる。

    日本市場では22年末から「Atto 3」を販売する予定であるが、想定価格は450万円程度。600万円程のトヨタのEV車「bZ4X」や500万円を超える日産のEV車「ARIYA(アリア)」と比べると格安である。タイでは補助金を加味すると、100万バーツ程度で売り出されることが予想される。「Atto 3」の後にさらに低価格のコンパクトEV「Dolphin」の投入も予定しており、同社のタイ進出により国内EV市場の普及に弾みがつくかもしれない。

    際立つGWMの躍進

    バンコクの高級商業施設ICON SIAM内にオープンしたGWMの旗艦店

    バンコクの高級商業施設ICON SIAM内にオープンしたGWMの旗艦店

    今年のタイ市場における中国メーカーの動向として、もう一つ無視できないのがGWM(長城汽車)の躍進である。同社は昨年から国内販売を開始したにも関わらず、22年1〜7月の販売台数においてトップ10入り。その躍進をけん引しているのは、HAVALブランドで販売されている「HAVAL H6」と「HAVAL Jolion」のSUV車であり、1~7月までに4,500台以上を販売。また昨年末から販売を開始したORAブランドのEV車「Good Cat」も同月までに1,500台以上を販売するなど好調だ(図表2)。

    タイNEV市場における2022年1〜7月の販売台数

    同社が掲げるブランドポリシーは、「カスタマー・セントリック(顧客中心主義)」。5年間の車の保証期間、無料のデジタルアプリケーションの全車種への標準搭載、単一の車両価格などで、顧客の関心を買っている。またディーラーを「パートナー」と呼び、ディーラーに在庫を持たせず、販売はGWMが自ら実施。ディーラーは納車、アフターサービス、CRに専念する新しい売り方で業界に旋風を巻き起こしており、今後進出するBYDも同じようなディーラー制度を展開することが予想される。

    日系メーカーは長年にわたってタイの自動車の産業の基盤を築いてきたことから、まだ当分日系優位が続くという見方が業界では多い。しかし、中国系メーカーが業界の常識を打ち破り猛追していることは、もはや否定できない状況にある。

    寄稿者プロフィール
    • 田口 孝紀 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      マネージング・ダイレクター田口 孝紀

    • 山本 肇 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      シニアマネージャー 山本 肇

    • 野村総合研究所タイロゴマーク
    • TEL : 02-611-2951

      URL : www.nri.co.jp

      399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

    《業務内容》
    経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

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