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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

タイのEV保有者の傾向と特徴~オンラインユーザー調査に基づいた分析

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      本誌2023年8月号では、イノベーター理論の普及カーブを用いて、タイ・インドネシアのEVの普及モデルを描いた。そこでは、EVは富裕層から若年層のアーリーアダプターを中心に普及しており、将来的には都市部の中所得層マジョリティや地方への普及が課題になるだろうということを述べた。
      本稿では、オンラインで実施した少数アンケートの結果を用いて、所得、年齢、自動車保有、充電などの側面から、タイのEV保有者の特徴をより多角的に分析する。サンプル数は14と少ないので、一般化はできないことをあらかじめお断りする。結論を先に述べると、タイのEVのユーザーは所得、年齢で既に多様化しており、当面は、多様なセグメントのモデルを投入すれば、若年層のアーリーアダプターを中心に裾野は早いペースで拡がることが推測される。

      EV購入の年齢層~多様な年齢層

      タイのEVユーザー層の年齢はばらけており、40代以上が6割を超え、39歳以下が4割以下であった(図表1)。50歳以上の中高年齢層でも、EV購入者が一定数あることは注目される。

      年齢層がばらけた理由として、高級EVモデルを購入した人の回答が多かったことが挙げられる。よりサンプル数を多くして、回答者のEV保有モデルがEV市場全般傾向を反映していれば、結果はもう少し変わっていた可能性がある。

      市場で最も販売台数の多いBYD「ATTO 3」のユーザーに限ってみれば、回答者全員が34歳以下であった。他方で、Tesla、Volvo、BMWの高級EV車のユーザーに限ってみれば、全員が40歳代以上である。年齢が高まると所得は高くなり、購入する車両セグメントも高級化するという一般的な傾向は、EV保有者にも当てはまる。

      なお、男性と女性の比率は6:4となっており、性別による差はあまり大きくない。

      EV購入の所得層 ~5万バーツ以降の中高所得が中心

      所得(個人月収)は、5万バーツ~10万バーツ未満の所得者が全体の3分の1、10万バーツ以上が全体の3分の1を占め、5万バーツ以上の中高所得者が多数を占める(図表2)。

      しかし、5万バーツと回答している人でも、複数保有者が多く、世帯としては中所得以上の所得層であることが想定される。  モデル別保有者の傾向をみれば、BYDの購入層は10万バーツ以下の中所得であるのに対して、TeslaやVolvoなどの高級EV車の購入層は10万バーツ以上の高所得層が多い。所得、年齢、購入モデルの結果を総合すると、EV市場は、中所得(5~10万バーツ)、中高年以下(49歳以下)がコア購入層となる中価格セグメント(BYD「ATTO 3」等の120万バーツ以下の車両)と、高所得層中高年齢(10万バーツ以上)が購入する高級セグメントに二分化されることが窺われる。

      複数保有者の代替・増車が中心

      車両の保有台数では、想定通り複数保有(2~3台)が3分の2を占めた(図表3)。増車/代替/新規では、代替が最も多く、次に増車、新車(初めて購入)はゼロであった(図表4)。つまり、複数保有層が増車、既存保有者の代替としてEVを購入していることが窺われる。

      購入理由としては、「メンテナンスコストが安い」、「性能」、「環境に優しい」の3つの要因が高く、「デザイン」、「新技術」、「新しい運転の経験」は相対的に低かった。経済性に適っており(=低いメンテナンスコスト)、かつ性能が高く、環境に優しいことがEV購入要因となっていることが覗われる。

      充電場所は自宅が中心

      充電場所は、大多数のユーザーが自宅で充電しており(図表5)、そのほとんどが外部の充電ステーションで充電する頻度は1週間に1度程度であった。この結果は、現在のところ、外部の充電ステーションの制約はEVを利用するうえで大きな障害になっていないことを意味している。他方で、EV購入の最大の懸念点としては、外部の充電ステーションの設置場所が少ないことが最も多い。以上から、EVは自宅で充電して移動できる範囲で使用されていることが窺われる。

      EVのオンライン調査結果と市場へのインプリケーション

      以上のオンライン調査の結果から、タイのEVユーザー像の注目される傾向を4点挙げるとすると、

      1.所得や年齢にかかわらず、自動車の既保有者の代替、増車としてEVが購入されていること

      2.中高所得者数の購入者層が多いが、そのなかで高所得層はTeslaやVolvoなどの高級の欧米ブランドのEVと、中所得層は中価格帯の中国系ブランドのEVを購入しており、市場は二分化していること

      3.5万バーツ以下の若年層でも購入されており、裾野が広がる傾向がみえること

      4.自宅で充電しているユーザーが大多数を占め、外部の充電ステーションの設置数は制約となっていないこと

      が挙げられる。

      将来的なEV市場の普及では、都市部で自宅で充電できる範囲で利用する中高所得層のユーザーであれば、EVは比較的に早く、代替ないし増車として普及することが予想される。近い将来には、5万バーツ以下の若年層(ただし、世帯所得は5万バーツを上回ると推測)にも普及する可能性もある。当面は、多様なセグメントのEVの投入により、アーリーアダプターを中心に、EVの購入層の裾野が早いペースで拡がることが予想される。

      寄稿者プロフィール
      • 三宅 洋一郎プロフィール写真
      • 野村総合研究所タイ
        マネージング・ダイレクター三宅 洋一郎

      • 山本 肇 プロフィール写真
      • 野村総合研究所タイ
        シニアマネージャー 山本 肇

      • 野村総合研究所タイロゴマーク
      • TEL : 02-611-2951

        URL : www.nri.co.jp

        399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

      《業務内容》
      経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

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