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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

将来的なASEANでのEV普及の見通し

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      本誌2023年4月号の特集でも述べたように、EV補助金の支給などのEV振興策の本格化と中国自動車メーカーの本格参入により、ASEANは2022年にEV普及元年を迎えた。2023年以降もEV市場は全体で伸びているが、タイ市場の伸びが際立っている。
      タイの市場は5月現在2.4万台に到達し、既に昨年の1年間の販売台数の倍以上に達し、全自動車販売に占めるEV比率は約7%まで上昇している。他方で、昨年はEV販売台数でほぼタイと並んでいたインドネシアは、5月現在4,500台とEV比率は1%程度。ASEAN主要国の中でも国により普及のスピードが異なることが見えてきた。
      本稿では、タイとインドネシアを中心にEVを購入するユーザーを分析しながら、今後のEVの将来的な市場を展望する。

      タイのEV購入層

      EVの登録統計を見ると購入層の75%はバンコク首都圏に集中している。自動車の5割がバンコク首都圏で販売されていることを考慮すると、内燃機関に比べてバンコクに集中していることがわかる。

      大学など各機関が実施したEVユーザー調査によれば、EV購入層の所得は自動車(内燃機関)より高く、年齢層は30代半ばが6割程度と、一般の自動車購入層より若い点が注目される。若年層は新しい技術や商品を早く受け入れる傾向が強く、EVがiPhoneの最新モデルのように新たなトレンド商品になっているようだ。この層はSNS世代であり、いわゆるイノベーターなどのインフルエンサーやSNSでつながる知人の影響を最も受けやすい世代である。

      EV販売で昨年1位であったGMWの幹部によると、同社最大の購入層は25~30代の女性であり、購入層が更に偏っている。これはモデル名の「Good Cat」が示す通り、小型でキュートなデザインが女性のユーザーに受けたことが影響している。一定数がEVにデザイン、新しさを追求していることがわかる。なお、クルンシィ銀行の調査によれば、EVを購入する3大要因として、(維持)コストが低いこと、環境に優しいこと、新しい技術であることが挙げられた。

      筆者がバンコクのBYDのディーラーで行ったヒアリングでは、家族持ちでは複数保有が多かった。特に家族持ちは増車として、または子供など家族に買い与える車としてEVを購入する傾向が強い。

      ただし、30代半ば以下の若い層ではICEからの買い換えも一定数いる。筆者がインタビューした典型的なアーリーアダプターのユーザーを描くと、20代後半に小型セダン・ハッチバックを購入し、二代目を7~10年で買い換える際にBYDのような車が最新のEVのテクノロジーを搭載し、しかも価格が100万バーツ前後と手に届く範囲であり、アップグレードするモデルに相応く映る。

      買い替えであれば、一台目を下取りに出せば手に届く範囲だ。今後、より低い価格帯で販売されるEVのモデルが増大すれば、買い換え需要も徐々に増えることが予想される。

      インドネシアのユーザー層

      インドネシアでは、タイと同様に大多数のユーザーが「ジャボデタベック」と称されるジャカルタ首都圏に集中している。ただし、それ以外ではタイと異なったユーザーの傾向がみられる。

      第一に、タイと比べると年齢層は35歳以上と高く、家族持ちで複数保有が大多数を占めている。インドネシアはタイに比べて所得が低いことから、一程期間貯金してからでないと購入できないことが影響している。

      第二に、世帯規模がタイに比べて大きく、一代目は多目的に使える3列7人乗りのMPVやSUVを保有しており、新しい用途に二台目、三台目としてEVを購入する傾向が強い。購入要因としてタイと同様に燃料費の高騰や環境の悪化などを挙げる人が多いが、ジャカルタでは時間帯により偶数・奇数ナンバープレート規制(偶数日は偶数ナンバープレートが通行可)しているが、EVがナンバープレート規制の対象外であることも購入要因となっている。

      売れ筋は、「Wuling Air ev」のような2億4千~3億ルピア(240~300万円)の小型で短距離を走る廉価EVモデルであり、タイのユーザーより実用性・経済性を重視しているようだ。タイのようなイノベーター、アーリーアダプターとしての若年層のユーザーはまだ比較的少ない。

      ASEANでのEV普及シナリオ

      ASEANでのEVの普及シナリオを次頁図表2に示す。

      第一段階は、都市部の富裕層(複数保有層)でEVの普及が始まり、第二段階では、新しい技術を搭載しながらも、より手頃である100万バーツ前後のモデルの投入により若年層を中心とするアーリーアダプターに普及。第三段階では、中国などのEV普及国でみられるように、都市部を中心に中間層マジョリティまで普及し、第四段階では地方にまで幅広く普及する。

      以上の普及モデルでみると、タイとインドネシアのEVの普及の段階が異なることがわかる。タイでは富裕層で複数保有の所得から、2023年以降はイノベーター・アーリーアダプターの若年層の代替え需要まで広がりをみせようとしている。

      ASEANでは、アーリーアダプターまでの普及は国によりスピードの速さは若干異なるものの、比較的早く進むことが予想される。しかし、EV市場がアーリアダプターに行き渡った後、都市部の中間層マジョリティから地方への普及にはいくつかの障壁に直面することが予想される。例えば、バンコクで中間層マジョリティが多く住む集合住宅やアパートでは充電ステーションを設置しにくく、充電環境が貧弱である。一方インドネシアでは、一戸建てに住む世帯が大半を占めるが、電力消費量(VA)により電気料金単価が定められており、電気自動車の充電量が増えると電気料金も上がる。

      このことから、インドネシアでは「Wuling Air ev」のような家庭用の電気プラグでもチャージできる小さいバッテリーを搭載した軽の電気自動車の人気が高い。地方では、バッテリー充電のインフラ整備が課題となる。都市部より地方ユーザーは移動距離が長いため、バッテリー充電ステーションの普及が不可欠となるが、現在充電ステーションは都市部に集中している。

      EV普及台数の予測

      以上から、タイでは今後2~3年の25年まではEVの普及率が急速に上がることが予想される。ただし、25年以降の中間層マジョリティの普及の段階で普及のスピードが緩慢になる可能性がある。更に地方では、燃費が良いディーゼルエンジンの乗商兼用のピックアップの人気が高く、地方の販売の6割を占めており、EV浸透が進みにくいとみる。

      ざっくり見積もると、都市部の富裕層、アーリアダプターなどを合わせて約20~25万台、すなわち全体の最大で20~25%(バンコク販売の約半分)まで普及すれば、それ以降は普及が伸び悩む可能性がある。現在支給されている補助金が廃止・削減されれば、26年以降普及が急速に減速する可能性もある。もちろん、20年代末以降に全個体電池などの技術ブレイクスルーがあり、EVの価格が下がり性能が向上すれば、再びEVの普及が勢いづく可能性はある。その一方で、インドネシアでは、アーリアダプターの層が小さく充電インフラの制約もより高いことから、タイより普及はより緩やかに進むことが予想される。

      富裕層からアーリーアダプターに急速にEVが普及する段階では、BYD、GWM、Wulingなどの中国メーカーや、現代自動車などの韓国メーカーが主導してきた。最近では、TeslaもASEANに本格参入し、富裕層のEVへの関心を高めている。日系メーカーは、富裕層にもアーリーアダプターにも選ばれるようなEVモデルを投入できず、周回遅れ感がある。EVがアーリーアダプターに行き渡った後、都市の中間層マジョリティまでEVが普及するのに時間がかかれば、日系としては挽回するまでに時間稼ぎができるかもしれないが、必ずしもそうとは限らない。

      EVがアーリーアダプターに普及する間に、日系ブランドが中国や韓国・米国より技術の先進性で劣るというイメージが低下すれば、ハイブリッドなどのEV以外の分野にもそのイメージが拡がり、非日系ブランドの参入を許すかもしないからだ。

      GWMなどの中国メーカーは、EVに加えてハイブリッドやPHEVにも力を入れており、EVで培ったブランドの技術的な先進性をアピールしながら、EVの普及のスピードが低下したら、EV以外のセグメントにも積極展開する可能性も否めない。中期的にEVの普及が減速しても、日系としては予断を許さない状況であることは変わりなく、EV及びEV以外のモデルの双方で先進的な技術や新しい商品を早期に投入して、ブランドイメージを刷新していくことが求められる。

      寄稿者プロフィール
      • 三宅 洋一郎プロフィール写真
      • 野村総合研究所タイ
        マネージング・ダイレクター三宅 洋一郎

      • 山本 肇 プロフィール写真
      • 野村総合研究所タイ
        シニアマネージャー 山本 肇

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      • TEL : 02-611-2951

        URL : www.nri.co.jp

        399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

      《業務内容》
      経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

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