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知らなきゃ損する!タイビジネス法務

知的財産権に対する刑事手続き

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      当職担当の回ではタイの知的財産権法それぞれについて詳細に説明している。  タイにおいても知的財産の侵害については刑事罰の適用があるものがある。この刑事手続きについて解説を行う。

      1. 和解可能な犯罪と和解が不可能な犯罪

      タイの法律において、刑事犯罪は、和解可能な犯罪と和解が不可能な犯罪の2つのタイプに分類することができる。この点、主要な知的財産権、すなわち、著作権、商標権及び特許権(小特許及び意匠特許に関する権利を含む)についていえば、著作権に関する犯罪は和解可能な犯罪であり(タイ著作権法66条参照)、商標権と特許権に関する犯罪は和解が不可能な犯罪である。  知的財産権を侵害する犯罪が発生した場合、和解可能な犯罪か和解が不可能な犯罪かによって、それぞれ異なる手続に沿って事件が処理されることになる。

      2. 裁判の開始

      和解可能な犯罪である「著作権に関する犯罪」が発生した場合、手続は著作権者(被侵害者)が警察に被害を報告しなければ開始されない(いわゆる親告罪)。報告を受けた捜査当局は、証拠を調査・収集した後、事件を検察官に送致する。その後、提出された証拠を検察官が精査し、犯罪発生の事実を立証可能と判断する場合、検察官は知的財産国際取引裁判所(IP & IT Court)に起訴することになる。なお、別ルートとして、著作権者が直接IP & IT Courtに提訴するルートもある。

      一方で、和解が不可能な犯罪である「商標権及び特許権に関する犯罪」の場合、捜査機関が犯罪の発生を現認したときは、被害者の告訴なく被疑者を逮捕することができるとされている。ただし、実際には、侵害の事実が発生していると考えられる場合であっても、権利者からの被害申告がない場合は、警察が措置を講じることは原則としてない。これは、知的財産に関する専門的な知識のない警察が侵害の有無を判断することが困難であるためである。特に、侵害の判断について専門的な知識が要求される特許に関する犯罪についてはこれが顕著といえる。

      上記を前提にすれば、いずれの知的財産権の侵害であっても、証拠資料を十分に揃えたうえで、捜査機関に自ら申告することが重要になるといえよう。

      3. 裁判の終結

      著作権に関する犯罪は和解可能な犯罪であるため、ほとんどの場合は被害者に対する補償が行われることで事件が解決する。被告人が被害者に補償をし、被害者がこれに満足した場合、被害者は一般的に裁判の取り下げに同意する。なお裁判所と検察は、増加する訴訟件数を減らすために、積極的に和解を進める傾向にあるようである。

      一方で、商標権及び特許権に関する犯罪は和解が不可能な犯罪であるため、事件が裁判所に持ち込まれた場合、裁判所は最終的に判決を下す必要がある。和解によって事件を終了させることはできない。原告(検察官または権利者)は侵害の事実を合理的な疑いを超える程度に証明する必要があり、これに達しない程度の証明しか成し得ない場合、被告人は無罪になる(「疑わしきは被告人の利益に」の原則。タイ刑事訴訟法227条2項等参照)。

      以上より、「疑わしきは被告人の利益に」の原則のもと、証明がされなかったことによる利益は被告人に与えられることになり、被告人は商標権侵害の責任を負わないと判断された。

      4. おわりに

      上記の通り、侵害の事実が十分に証明されない場合、当然のことながら無罪ということになる。タイにおいて知的財産に関する法的措置を検討するにあたっては、その開始段階・公判段階・終了段階等において十分な法制度の理解と実務に関する理解が必要となるため、これらの理解に努めることが知的財産権の実効的な保護に役立つといえよう。

      寄稿者プロフィール
      • 永田 貴久 プロフィール写真
      • TNY国際法律事務所
        日本国弁護士・弁理士
        永田 貴久

        京都工芸繊維大学物質工学科卒業、2006年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co., Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニアの各オフィスの共同代表も務める。

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