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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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日系企業が切り拓くタイの社会課題 解決

第2回 日本唯一のメーカーがタイ酪農の品質・生産性 向上に寄与

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       タイにおける酪農の歴史はそう古くはない。1960年代、王室交流をきっかけに北欧デンマークから技術者が派遣され、ノウハウを伝えたのが始まりだ。気候の違いや零細農家が多いという特殊性から大きな成長を見ることなく今日に至ったものの、近年になってタイ政府は主要な輸出産業の一つに育てたいとの意向を固めている。そこに白羽の矢が立ったのが、日本国内で唯一酪農機器を生産するオリオン機械株式会社だった。タイの搾乳機シェア率を着実に伸ばしている同社のタイにおける貢献の在り方とは。

      木下 タイの酪農はどのような課題を抱えていたのでしょうか。

      坂口 熱帯のタイにおいて酪農は主力な産業とは言えず、多くの酪農農家は生産性の低さに起因する低収入と生乳の品質に悩まされてきました。日本のような農家を助けるための補助金制度もなく、あっても低利融資がせいぜい。だから、十分な搾乳機すら購入できない、搾った牛乳を冷やすためのバルククーラーさえ買えない農家が存在していました。

      搾ったばかりの生乳は、直ちに冷却しなければなりません。細菌が増殖し、品質が低下してしまうからです。日本では搾乳をした後は冷却タンクで保存し、そうならないように努めていますが、タイでは集乳車が到着するまで外気にさらされた状態です。ですので、タイでは安全性も考慮し、高温・超高温殺菌の牛乳が主流で、風味がいいとされる中低温殺菌牛乳は市場にはほとんど供給されていませんでした。


      JICA事業で導入したパクチョン試験場の搾乳風景

      木下 どのようにタイの酪農業と接点を持つようになったのですか。

      坂口 2015年に日本の農林水産省を経由して、タイの農業・協同組合省から打診があったのが始まりです。当時、タイでは酪農の生産性と品質を引き上げるための国家プロジェクトが進行していました。ところが、ローカル企業の知識やサービス不足などから上手く進まず、結果を出せずにいました。そこへ、長年の実績とノウハウを持ち、日本国内唯一の酪農機械メーカーである当社へ連絡がありました。その事業及びタイでの酪農事業を加速させるためにJICAの企業支援制度を活用させていただきました。

      プロジェクトへの参加は翌16年から始まり、東部サケーオ県にあるワンナムエン農協に所属する53牧場を対象に搾乳機の提供や技術指導を行いました。意欲のある農家も少なくなく、一定の改善を見ることができました。しかし、大半の農家は個人経営で資金力に乏しく、自前で設備投資を継続してくことは難しいのが実情です。融資金の返済など多くの課題は山積したままとなっています。

      木下 その後のタイでの取り組みはいかがでしょうか。

      坂口 同様に酪農が盛んなサラブリー県で行われているタイデンマークプロジェクトにも参加をしています。乳牛の後継牛となる子牛の繁殖率と健康管理を高めるプロジェクトで、首用のタグとITを活用してそれを実現させようというものです。今後、搾乳頭数が増加し、収入アップが見込める牧場には搾乳機の提案をしていく予定でいます。

      このプロジェクトは24年1月5日にサラブリで行われた共進会でシリントン王女様にもご覧いただき、今後のタイの酪農の在り方に強い影響を与えるものと考えます。雌の牛が発情を迎えた時に自動的にアラートが鳴り、酪農従事者はもとより獣医にもそれを知らせるというものです。また、将来的にはセンサーを通じて牛乳の管理も行えることから、生産性のアップも期待されています。

      木下 タイで事業展開する際の難しさや心がけていること、やりがいなどは。

      坂口 時間軸の違いを理解することが重要です。当社は民間企業ですからどうしても効率を意識し、短時間での結果を求めがちです。ところが、相手が他国で風土も習慣も異なるとなると、そうともいきません。結論を急ぐのではなく、相手の立場に立ちながら辛抱強く接していく必要があります。

      国際協力機構(JICA)など日本の政府系機関を通じ、タイの行政機関と関係を構築していくことも大切です。普段は会えないような政府高官でも、JICA事業を活用することで対話の道が開けます。海外における人的コネクションの重要性を実感しています。

      タイの酪農に関与することについては、社内にもさまざまな意見がありました。確かに利益はそう大きくはないでしょう。しかし、少しでも良い牛乳をと努力するタイの酪農家を支援することも社会的意義のあることだと思っています。酪農家がいる限り酪農機器を提供する。それが私たちの責務と考えます。信念を持って、やり続けることが大切です。


      Orion Machinery Asia Co., Ltd. 

      2011年に現地法人Orion Machinery Asia Co., Ltd.を設立。エアドライヤーやチラー、精密空調機などの産業機械に加え、16年からタイ農業・協同組合省からの要請を受けて酪農機械の提供・技術指導を開始。
      33/3 Moo 5, Sambundit, Uthai, Ayutthaya 13210

      寄稿者プロフィール

      JICAタイ事務所

      • 木下真人 プロフィール写真
      • Representative木下真人

        タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。International Institute of Social Studies 開発学修士。

      JICA
      JICAタイ事務所
      Tel: +66(0)2-261-5250
      Email: Kinoshita.Masato2@jica.go.jp
      31st floor, Exchange Tower,
      388 Sukhumvit Road, Klongtoey
      Bangkok 10110, THAILAND
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