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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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中小企業社長兼経営コンサルによる、現場発-経営論

会計ルールに基づいた議論

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      Q:タイ人スタッフから会計処理について説明を受けましたが、「タイではこうだから」の一点張りです。どうすればルールに基づいた議論ができるでしょうか。
      A:タイにも会計のルールである会計基準は存在します。日系企業が主に使用する会計基準は「公的説明責任を有さない企業向けタイ財務報告基準(TFRS for NPAEs。以下、タイ会計基準)」と呼ばれます※1

      (※1)https://www.tfac.or.th/upload/9414/e8cXTzUL59.pdf
      タイ会計基準は、会計のルールとして日系企業がタイで会計処理を行う場合の考え方を定めています。会計処理に関する議論がしたければ、タイ会計基準を参照すれば、ルールに基づいた議論ができます。
      例えば、会計処理に関する多い質問の一つに、「有形固定資産の減価償却年数は何年にすればよいのか」というものがあります。
      タイ会計基準には何年で償却しなければならないとは書かれておらず、「耐用年数に渡って規則的に按分されなければならない」※2という記載があるだけです。従って、タイ会計基準を参照すれば「何年でもよい」が答えだとわかるはずです※3。

      (※2)タイ会計基準138参照
      (※3)実務上、通常の有形固定資産の税務上耐用年数が5年となっていることから、5年と設定している会社が多い。他方、「タイにおいて有形固定資産の減価償却年数は5年でなければならない」という規定は会計・税務上存在しないので、5年以外の年数を設定してはならない、ということではない。
      しかし、同様の質問が弊社に寄せられるケースが後を絶ちません。さらに、クライアントのタイ人会計スタッフから「有形固定資産の減価償却は5年または10年でなければならない」という主張を耳にしたこともあります。この主張を裏付ける根拠は、タイ会計基準上には存在しません。
      タイにおいて会計基準を踏まえた議論が進まなかった理由の一つとして、タイ会計基準の日本語訳が存在しなかった点があります。そのため、多くの日本人ビジネスパーソンは、タイ会計基準を参照することなく会計処理を実施しなければならず、次のような問題を生んでいました。

      ・ 文言上の規定に基づかない議論や解釈の余地を与え、誤った処理を生む
      ・ 会計実務において権威となりうるもの
       (例:社内会計スタッフ、タイに長くいる人間)に無根拠に依拠する
      ・ 同様の質問が各所で何回も繰り返される

      弊社ではこの問題改善のため、タイ会計基準の日本語訳を出版し、解説のための寄稿やセミナーの実施を行っています。また、いくつかタイ会計基準の日本語解説資料も存在します。
      関心があればこれらの資料を読んだり、セミナーに参加するというのが、会計のルールであるタイ会計基準の理解ひいてはこれに基づいた議論をするための第一歩になるでしょう。ご自身で理解するのが大変でしたら、日本人の専門家に相談されるのもよいでしょう。
      本稿を執筆しているのは実は2021年11月初頭です。少しずつですがタイは開国を再開し、22年以降の経済回復に明るい兆しも見られます。相変わらず楽観視を許さない状況ではありますが、皆様も健康にお気をつけて良い年末をお過ごしください。
      ・2021年4月号 タイ会計・税務・法務特集
      寄稿者プロフィール
      • 倉地 準之輔 プロフィール写真
      • 倉地 準之輔

        日本で大手監査法人、外資系企業勤務を経て、2013年来タイ。外資系会計事務所のジャパンデスクにて日系企業向けコンサルティング業務に従事した後、15年10月にBizWings (Thailand) Co., Ltd.を設立。経営コンサルティング業務を提供し、現在に至る。公益財団法人東京都中小企業振興公社タイ事務所経営相談員。ジェトロ中小企業海外展開現地支援プラットフォーム・コーディネーター。公認会計士(日本)。東京大学経済学部経営学科、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。

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