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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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外資規制-基礎から応用まで

MU Research and Consultingコラム

外資規制の対象ではない事業「小売」「卸売」その1

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      タイ進出を新たに検討する企業だけでなく、進出済みの企業にとっても、タイでのビジネスにおけるもっとも重要なルールの一つが外資規制です。タイで自社が実施する事業は何か、その事業は外資規制をクリアできるのか、それによってタイ子会社の資本戦略や組織構造も大きく変わってきます。

      本連載では、外資規制の基礎から応用までをご説明します。

      資本金を大きくすることで外資企業が実施可能となる「小売」と「卸売」

      外資企業が実施できる事業の類型の2つ目である「条件付きで実施可能な事業」とは、規制事業であることが外国人事業法の規制事業リストに明記されているものの、同リストに例外規定が設けられ、一定の条件を満たせば外資企業であっても実施できるとされる事業です。ここに当てはまる事業の代表例が「小売」と「卸売」です。

      「小売」と「卸売」について、規制事業リストは図表1のように規定しています。これに該当する事業は外資規制に抵触しますが、該当しなければ外資規制に抵触しません。つまり、資本金が1億バーツ以上であれば、規制事業には該当せず外資企業でも実施できる、というのが第一段階での理解となります。

      ここでの1つ目のポイントは、いわゆる「販売」事業とは、「小売」と「卸売」の2種類に分類される点です。タイ独自の分類であり、また頻繁に問題となる重要な論点ですので、これについては後で詳しくご説明します。

      2つ目のポイントは、ここでの「小売」と「卸売」は、いずれもタイ国内販売を指すものであって、海外向けに販売する「輸出」を含まない点です。「輸出」については前回までに解説したように、外資規制の対象外とされています。

      3つ目のポイントは、「小売」と「卸売」のいずれも、規制事業ではあるものの、同時に例外規定が付されている点です。つまり、資本金が1億バーツ以上であれば外資規制から外れ、外資企業であっても事業ができる、というのが大原則です。

      加えて、以前ご紹介したように、自社が製造した製品の販売は「小売」でも「卸売」でもなく、「製造」事業の一部とみなされます。

      上記の各ポイントを踏まえ、タイにおいて外資企業が、この条件を満たして販売事業を行うためには、まず自社の販売事業が、「小売」「卸売」「輸出」のうち、どの事業に該当するのかを整理する必要があります。複数の領域にまたがる場合には、必要となる最低資本金は累積されるというのが基本的なルールです。「輸出」であれば最低資本金200万バーツと比較的少額ですが、仮に「小売」と「卸売」を含めた3事業すべてを実施している場合には、必要な最低資本金は2億200万バーツに達します。1億バーツを満たして「小売」と「卸売」のどちらかを行なっている例は日系企業にも少なくありませんが、2億バーツを用意して「小売」「卸売」の両方を実施する例は、一部の大企業を除けば極めて稀です。

      別の方法で許認可を得ようとする場合(別稿で説明予定)にも、一般的に販売先が不特定多数に及ぶ「小売」で許認可を得るためのハードルは高くなります。対して、販売先が特定されやすい「卸売」は、許認可も比較的取りやすい、という点からも、事業の整理は必要です。

      また、資本金が1億バーツ以上といっても、「資本金1億バーツ以上の会社であれば販売ができる」、という単純な話でもありません。上記のように「小売」と「卸売」の双方を実施する場合だけでなく、他に実施している事業との関係によって、必要となる最低資本金も変わってきます。こうしたタイでの「販売」にかかわる定義と条件の詳細について、今回から詳しく解説していきます。

      タイにおける「小売」と「卸売」の違いとは?

      タイ国内向けの「販売」は、「小売」と「卸売」に分類されると述べましたが、「小売」と「卸売」の定義は、法律上で定められたものではありません。しかし商務省の解釈において、これまで何度も繰り返し言及されています。タイ語の若干の言い回しが異なることもありますが、内容はこれまで一貫しています。

      「小売」と聞いて、イメージしやすいのは、コンビニエンスストア、スーパー、百貨店などですが、タイの「小売」は、一般消費者向けの「小売」に限られるものではありません。例えば、タイ現法が輸入販売商社として、日本の本社が製造した工作機械をユーザーに販売するケースでは、その工作機械を購入したユーザーが直接使用するのであれば、自社の販売は「小売」に該当します。

      他方、「卸売」は、以下2つのパターンに細分化されます。

      1つ目は、製品を直接使用するユーザー向けへの販売ではなく、直接使用しない代理店等に対して販売するパターンです。購入者が自ら使用するのではなく、その購入者が更に第三者に対して販売するのであれば、自社の販売は「卸売」に該当します。  2つ目は、製品を原材料として使用するメーカー等へ販売するパターンです。この場合は、販売した製品を購入者が消費しているとの見方もできますが、あくまで他の製品を製造するための原材料であるとして、「小売」ではなく「卸売」として扱われます。

      上記の工作機械を例にとると、自社の販売先が代理店で、代理店を通じてユーザーに販売されるケースでは、(1)自社から代理店に対する販売は「卸売」であるのに対し、(2)代理店からユーザーへの販売は「小売」となります。同じ製品であっても、販売先が異なれば、それぞれ「小売」と「卸売」の別事業としてみなされる可能性があることを意味しています。

      更には、「同じ製品」を、「同じ販売先」に販売するケースであっても、「小売」と「卸売」が混在するケースも考えられます。メーカーである顧客に対して部品を販売する場合に、顧客が製品の材料として使用したり、最終ユーザーに対して補修部品として販売すれば「卸売」になります。しかし、顧客が部品を自らの設備補修等に使用すれば「小売」となる可能性があります。販売先の購入目的を全て管理することは困難ですし、書類等でも表面化しにくいため、商務省から指摘を受ける可能性は高くないと考えられますが、仮に指摘を受けた際には、自社としてどのように認識して事業を行なっているか、説明ができるようにしておくべきでしょう。

      タイ資本企業であれば、外資規制を受けませんので、「小売」と「卸売」を分けて考える必要は基本的にありません。しかし外資企業にとっては、両者の整理は重要な課題です。実施するのは製造やサービス事業のみで、販売自体をまったく行なわない、という方針であれば簡単ですが、問題は、どちらか一方だけを実施できる状態になっているケースです。「小売」と「卸売」の違いに認識が及ばず、どちらか一方しか実施できない状態であるのに、すべて「販売」できる、と誤解している例が日系企業にも見られます。外資規制をクリアしていない状態で外資企業が「小売」または「卸売」を行なえば、外国人事業法の第37条「無許可での事業実施」違反となる可能性があります。「2億バーツ以上の十分な資本金があり、タイ国内販売しか事業を行っていない」という場合を除き、自社の販売が「小売」と「卸売」のどちらの事業と認識すべきか、整理しておくことが必要です。

      今回は「小売」と「卸売」に関する基本的な事項を整理しました。ここまでは日系企業の間でも広く認識されている内容かと思います。次回からは、いよいよ商務省の判断事例を踏まえた応用編に入っていきます。

       


      三菱UFJリサート&コンサルティング

      三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱ タイ現地法人
      • 吉田 崇プロフィール写真
      • MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
        Head of Consulting Division
        吉田 崇


      • 池上 一希 プロフィール写真
      • MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
        Managing Director
        池上 一希

      MU Research and Consulting(Thailand)Co., Ltd.

      Tel:+66(0)92-247-2436
      E-mail:kazuki.ikegami@murc.jp(池上)

      【事業概要】 タイおよび周辺諸国におけるコンサルティング、リサーチ事業等

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