【ベトナム】トップ逮捕で揺れるFLC= 自社株売却めぐり(ハノイ支局・北川 勝弘)

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ベトナムの大手複合企業FLCグループのチン・バン・クエット前会長が3月29日、自社株取引に絡んだ相場操縦などの容疑で逮捕された。不動産・リゾート開発事業に加え、新興航空会社バンブー航空を通じた旅客運送事業も手掛ける大手企業トップの不祥事だけに、ベトナム国内で大きな関心を集めた。
公安当局はFLCグループのフオン・チャン・キエウ・ズン副会長、クエット容疑者の妹2人らも相次いで逮捕し、徹底的に追及する構えを見せている。
繰り返された不正
クエット容疑者は2001年、FLCグループの前身となる法律事務所SMiCを設立。10年に多くの事業会社を傘下に持つFLCグループに衣替えした後、13年にはホーチミン証券取引所に株式上場を果たした。企業の合併・買収(M&A)などで事業規模を拡大させつつ、17年にバンブー航空を設立し、航空旅客事業にも進出した。
複数のベトナムメディアによると、クエット前会長の逮捕容疑は、今年1月に行った、自らが保有していた7480万株のFLC株の売却に絡んだ相場操縦など。1月の時点で、ベトナム証券委員会(SSC)など関係当局への事前通告を行わずに株取引を行ったとして15億ドン(約825万円)の制裁金と5ヵ月間の株式取引口座の凍結などの行政処分が下されていた。
クエット容疑者は17年にも事前に情報開示せずにFLC株を売却し、制裁金を科されている。FLCグループの関係者も同様の違反行為で処分を受けたとされ、繰り返される不正行為には厳しい目が向けられている。
公安当局は4月4日、クエット前会長の妹でFLCグループの会計部門を担当していたチン・ティ・ミン・フエ容疑者を逮捕。5日にもう一人の妹で、クエット前会長の株式口座に関与しているとされるBOS証券のチン・テク・トゥイ・ガー副社長の身柄を拘束した。8日には、かつてのSMiCのメンバーでFLCグループ副会長とBOS証券会長を務めるズン容疑者と、同証券のグエン・クイン・アイン社長を逮捕し、不正の全容解明へ精力的に捜査を進めている。いずれの容疑者も、クエット前会長の相場操縦などに協力した疑いが持たれている。
会社、一切関与ないと強調
クエット前会長は逮捕前に、FLCとバンブー航空の会長職の代行にブー・ダン・ハイ・イエン副社長を指名した。SMiCでディレクターを務めていたイエン氏に、自らが保有するFLC、バンブー航空の議決権などの管理も委ねた。
ただ、FLCは3月31日、クエット容疑者の後任会長にダン・タット・タン副会長(バンブー航空社長)を昇格させると発表し、今後開く株主総会で改めて経営体制を話し合い、決定する方針を示した。イエン副社長は、クエット前会長の議決権などの管理のみを代行することになった。
FLCはクエット前会長逮捕を受けた声明で、「会社は今回の事案に一切関与していない」と強調し、事業の運営や今後のビジネス戦略に影響はないと訴えた。
ただ、ズン副会長ら経営の中枢が逮捕されるなど、今後の捜査の行方は予断を許さない。強力なリーダーシップでビジネスを引っ張ってきたトップの突然の退場で、会社の先行きには不透明感が漂う。今後の新規の事業展開などに影響が及ぶ可能性もあり、投資家、消費者らの信頼を取り戻すのは容易ではなさそうだ。
※この記事は時事通信社の提供によるものです(2022年4月12日掲載)
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