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従業員による労働局への申立て

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      従業員が使用者に労働法違反があると考える場合、その従業員は、労働裁判所に訴訟提起することができるが、労働裁判所ではなく、労働局(Provincial Labor Protection and Welfare Office)に申立てを行うことも可能であるとされている。実務的にその数も少なくないことから、今回は、従業員による労働局への申立ての流れについて解説する。

      労働局に申し立てることができる事項

      従業員が労働局に申し立てることができるのは、「使用者が、労働者保護法に規定されている従業員への支払をしない場合」である(労働者保護法123条1項、以下この法令を「LPA」という)。労働局への申立ては、労働裁判所への訴訟提起と同様に無料であり、従業員は、金銭的負担なしで申立てを行うことができる。

      事実関係の調査

      従業員からの申立てがなされた後、労働局の担当調査官(以下、「調査官」)は、事実関係を調査することになる。この調査の過程では、使用者からの事情聴取も行われる。その場合、調査官から使用者に対して呼出状が送付されることが一般的であり、使用者はその呼出しに応じて所定の日時に労働局に出頭することになる。

      調査官は、呼び出した使用者から事情を聴取したり、関係資料を確認したりすることによって事実関係を確認する。そのため、使用者は出頭する前に、事実関係や資料を整理して、きちんと調査官に説明したり資料を提示したりできるよう準備しておかなければならない。

      なお、この際の使用者の対応として、事実関係を含む自己の主張をまとめた書面を作成して調査官に提出することは必須ではない。しかしながら、調査官に対して自己の主張を遺漏なく伝えるため、書面を作成して持参する方が望ましいだろう。

      命令

      調査官は前項の調査結果に基づく調査官の判断を、命令として発出する。この命令は、原則として申立てから60日以内に発出される(LPA124条1項)。

      例えば、従業員が使用者に対して解雇補償金や解雇予告手当を支払うよう求めて申し立てた事案について、調査官が従業員の主張に理由があると判断すれば、調査官は使用者に対し、解雇補償金や解雇予告手当として支払うべき額を明示して、その支払いを命じる。

      不服申立て

      従業員も使用者も、調査官の命令が納得できなければ労働裁判所に対し不服を申し立てることができる。ただし、その不服申立期間は命令を知った日から30日以内に限定されている点に注意を要する(LPA125条1項)。

      不服申立てがされれば、その事件は、労働裁判所での審理に移管される。なお、使用者が不服申立てをする場合、使用者は裁判所に対して調査官から支払を命じられた額を供託する必要がある(LPA125条3項)。

      いずれも不服申立てをしないままに不服申立期間が経過した場合、調査官の命令が確定し、当事者はこれ以上その内容を争うことができなくなる。

      強制執行

      仮に使用者の支払義務を認める命令が確定した後も、使用者がその命令に従わない場合、従業員は労働裁判所に対して、その命令の執行を求める申立てを行った上、強制執行に及ぶことができる。例えば、解雇補償金の支払いをすべき旨の命令が確定したにもかかわらず、使用者が解雇補償金を支払わない場合、従業員は使用者の預金や不動産などの財産を差し押さえることも可能となる。

      刑事罰

      仮に、支払いをすべき旨の命令が確定したにもかかわらず、使用者がこれに従わない場合、使用者に対する刑事手続が開始され、使用者は刑事罰として20,000バーツ以下の罰金、又は1年以下の禁錮、又はその両方を命じられるおそれがある(LPA151条2項)。また、使用者が法人である場合、その法人だけではなく代表者、その他の責任者も同様に罰せられるおそれがある(LPA158条)。

      寄稿者プロフィール
      • 藤江 大輔プロフィール写真
      • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
        代表弁護士  藤江 大輔

        2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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