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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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タイ人コンサルタントが語る日系企業経営の「成功のメカニズム」

経営幹部合宿のススメ

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      昨今の新型コロナウイルスの影響により、日系企業の多くが事業構造改革の必要性に迫られている。売上回復が困難な企業では「早期コストダウン」と「中期リカバリープランの実行」に注力し、売上への影響が軽微であっても中長期的な需要変化が見込まれる企業は「ビジョンや戦略の再構築」などの事業構造改革を進めている。

      そうした改革における日系企業特有の失敗要因や成功要因について、日本とタイの両国で勤務した経験がある経営コンサルタントに語ってもらった。(全3回)

      日系企業が陥る落とし穴

      これまでの連載では、タイにおいて日系企業が抱える経営課題や改革が進展しない理由、改革が進みやすい企業の特徴に触れてきた。今回は経営改革を進めるための一つの方策として、「経営幹部合宿」を紹介したい。

      日系企業が陥りやすい落とし穴は大きく分けて4つある(図1)。

      バブル崩壊以降の失われた20年で成長しない時代を過ごしてきた日本人と、成長することが当たり前な伸び行く市場を生きてきたタイ人幹部との「危機感度のズレ」。優秀な人材ほど若い頃から転職を繰り返すタイの労働市場への対策に日本人幹部が慣れていないことによる「労働力流動化の壁」。日本人駐在員が全社目線で物事を考える一方で、個人や部門のメリットを重視するタイ人幹部との「全体最適へのハードル」。数年で幹部が入れ替わる駐在員制度をはじめ、仕事の評価や役割意識などに対する「日本スタイルの押し付け」。

      これらの落とし穴に対して分野ごとに様々な防御策があるが、有効な取り組みの一つが「経営幹部合宿」である。

      新型コロナウイルスだけでなく、中国企業の進出やタイ企業の競争力の高まり、市場の成熟などによってタイの事業環境は大きく変わろうとしている。その中で、自社のビジョンやコアバリューを改めて見つめ直し、今後の経営戦略を定める必要がある。

      そうした時には、日本人幹部だけでなくタイ人幹部も集まり、会社の方針やあるべき姿について喧々諤々の議論を長時間する合宿が有効だ。ただし、注意しておきたいのは、参加者は目の前の課題ではなく5年後、10年後といった長期的な視点を持つこと、かつ個人や部門目線ではなく全社的な目線から議論するというルール付けを行うことである。

      こうした戦略について、アウトプットの質だけを求めるなら、コンサルティング会社などに依頼すれば、綿密なデータや調査に基づいてレポートを提出してくれるだろう。ただその場合、実働部隊となるタイ人幹部の参画意識が薄まり、どこか他人事に受け止められて実行が伴わなくなりがちだ。

      また、学ぶことを目的とした研修スタイルでは、参加者が受け身になって「研修に参加すること」が目的化してしまう。タイ国内でのプロジェクトの経験上、幹部内で議論する際には、主体者意識を誘発しながらアウトプットするワークショップスタイルが最適だろう。

      正解より納得解を探る

      経営幹部合宿と言っても、ただ議論を重ねれば良いわけではない。大事なのはいたずらに正解を求めるのではなく、日本人、タイ人双方の納得解を導き出すことだ。組織風土の改善には、まず日本人とタイ人が〝同一の危機感〟を持たなければならない(図2)。

      有意義な合宿を行うために代表的な検討テーマを紹介したい。

      まず、幹部同士で〝自社の歴史〟を正確に振り返ることである。日本人駐在員はまだ赴任して数年かもしれないが、自社に数十年勤務して過去の良い時も悪い時も知っているタイ人幹部もいる。先述したように、国籍も時代背景も異なる日本人とタイ人には、価値観やマインドセットでギャップが生じているケースが多い。

      過去の売上や利益など正確なデータを基に、これまで会社がどんな強みを発揮して発展してきたのか、どんな弱点があったために業績を落としてきたのか、改めて把握することで自社の共通の強みや弱みを理解することができる。これら議論に加えて、業界の将来予測も行うことで〝同一の危機感〟を持つことにも繋がる。

      次に、5年後、10年後の在りたい会社の姿をそれぞれイメージして共有する。ベテランのタイ人幹部と駐在歴数年の日本人幹部とでは、もちろんズレが生じるだろう。しかし、そのズレを明らかにし、方向性を揃えていくことで、〝共通の価値観〟を生み出すことができる。

      合宿の後半では〝経営課題の明確化〟が主テーマとなる。在りたい姿が定まれば、足りないものが見えてくる。理想を実現するために、理想と現状とのギャップを洗い出し、問題点を明確にする。人によって問題への認識は異なるため、議論をしながら問題の関係図を作成していくことで優先順位付けを行い、幹部内で認識を揃えていく。

      合宿では夕食時に懇親会を実施するのが通例だ。参加する幹部全員が各自のパーソナルシートを持ち寄り、個々人の歩んできた歴史や固有の価値観をパーソナルな視点からも理解する。普段、仕事で顔を合わせていても、業務に関する話ばかりで個人的な話をする機会は思いのほか少ない。改めて機会を設けて個人のバックグラウンドを語り合うことは、相互理解を進めるのに非常に効果的だ。

      これらは代表的な取り組みの一部であり、各社の事情に合わせて様々な取り組みが可能だろう。昨今の事情を鑑みて、議論のキックオフのみを対面形式の合宿で行い、その後はオンラインで継続議論することも可能だ。

      激変する事業環境に向けた新たな方向性を定めるため、古くて新しい取り組み「経営幹部合宿」を試してみてはいかがだろうか。

      寄稿者プロフィール
      • LiB Consulting (Thailand) プリンシパル プロフィール写真
      • LiB Consulting (Thailand) プロジェクトマネージャー
        ペス(Darin Lanjakornsiripan)Ph.D.

        文部科学省の奨学金を受け日本に留学、東京大学理学部、東京大学大学院博士課程卒業。数学オリンピック金メダル取得。主に、通信業界、農業・食品業界、住宅業界、自動車製造業などで、戦略立案から実行支援までを一貫して支援している。タイオフィスの戦略チームをリード。

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      • LiB Consulting (Thailand) マネージャー
        マイ(Yossarin Boonwiwattanakarn)

        立命館アジア太平洋大学経営学部卒業、英国Bath大学修士課程修了。外資系コンサルファームを経てリブコンサルティング・タイに参画。在タイ日系企業の組織改革、営業改革、DX推進プロジェクトを主に担当している。

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      • LiB Consulting (Thailand) Managing Director
        香月 義嗣(かつき・よしつぐ)

        日本・タイ・韓国で160社以上のコンサルティング実績、約1万人への講演実績を持つ。2006年から韓国オフィス、2016年からオフィスを担当。著書に『営業組織の生産性向上(韓国語)』『日本企業が韓国企業に勝つ4つの方法(日本語)』。東京大学工学部卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。

      • 代表 : Managing Director 香月 義嗣(Katsuki Yoshitsugu)
        住所 : 29Fl, Exchange Tower, Klongtoey District Bangkok

      成果主義・現場主義を重視した日本発の経営コンサルティングファーム。
      「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」を理念に掲げ、
      企業や政府機関へのコンサルティングを通じてタイ国を良くするため、
      戦略から実行まで「成果コミット型」で支援している。

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