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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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新たな視点で時代の動きを読み取る ASEAN経営戦略

Roland Berger

東南アジアにおけるベビー関連市場の今

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      東南アジアはタイやシンガポール等、一部の国では高齢化が進むが、それでも世界的に見れば「若い」地域である。いわゆるベビー関連市場の対象となる0歳~3歳人口は域内全体で約4,300万人存在し、全人口に占める比率は6.4%に至る(日本は2.7%)。図表1は、ベビー関連市場として代表的な「ベビーフード」、「ベビー/トドラーウェア」、そして「赤ちゃん用紙おむつ」の東南アジア各国市場規模だ。購買力が高まっていく中で、ベビー関連市場規模も成長が予測されており、日系・欧米企業からも熱視線が注がれる注目のマーケットである。

      ベビー用品購買行動のリープフロッグ

      ベビー関連用品は生活必需品であるがゆえ、一般的にはその国の経済力と市場の立ち上がりには相関関係があると見られていた。例えば、紙おむつ市場は一人当たりGDPが3,000USDを超えると市場が形成され始めると言われている。しかし、東南アジアにおける状況はそのセオリーに当てはまらなくなっている。いわばリープフロッグ的に成長する市場が多く見られているのだ。

      例えば、ベトナムでは紙おむつ市場の立ち上がりが、基準値である一人当たり3,000USDよりも前の段階から始まっている(図表2)。もちろん多面的な要因があるのだが、ベトナムの家庭構造の変化と女性の社会進出も背景の一部と言われている。ベトナムでは核家族化が急速に進んでいることに加え、女性の社会進出率も高い。世界銀行によるとベトナムでは働く女性の割合が7割に至り、この数値は東南アジアではトップだ(2位はシンガポールで6割)。多忙なベトナムの母親にとっては育児負担を少しでも軽減したいニーズが強く、それが紙おむつ市場の早期立ち上がりのドライバーのひとつになったと考えられる。

      また、インドネシアにおけるオーガニックベビーフードもリープフロッグ市場のひとつだ。ベビーフード市場に占めるオーガニック製品の割合がインドネシアでは高い(図表3)。ほぼ日本と同等の数値であり、他の東南アジア新興国と比べて圧倒的に高いことがわかる。弊社は東南アジア各国の消費者の価値観分析を頻繁に行っているが、インドネシア人は「健康」や「ナチュラル」といった価値観に強い共感を示す。その傾向がベビーフード市場では数値として表れているのだ。ユニリーバは、インドネシアでは他国よりもヘルシーなブランドイメージを強調しているが、このような消費者価値観が背景にあるのだろう。

      ベビー関連市場のオンラインプラットフォーム化

      東南アジアの中でもフィリピンやベトナム、インドネシア等では、元々、良質なベビー用品を入手する選択肢が限られていた。もちろんショッピングモールやコンビニといった近代的小売に行けば、日本製や欧米製のベビー用品を買うことはできる。しかし、国民の大部分の層は、そのようなチャネルで日常的にベビー用品を買うことはまだ難しい。伝統的小売で流通している良質とは言い難いベビー用品を使うか、もしくは「ベビー用品でないもので代替する」かが彼らの選択肢である(タオルをおむつ代わりにする等)。

      先進国が歩んできた道のりに倣うのであれば、これら東南アジア諸国の購買力が上がるにつれ、相応のベビー用品が伝統的小売含めたチャネルで広く流通し、アクセシビリティが高まる。しかし、先進国の道筋とは異なるかたちでここでもリープフロッグが見られる。フィリピンのベビー用品通販のedamamaはそのひとつの事例だ。2022年にはシリーズAで2,000万USDを調達したスタートアップであり、彼らの目指すところはベビー関連のオンラインプラットフォームだ。ベビー用品のオンラインでの個別販売のみならずサブスク販売、関連コンテンツの提供、コミュニティーの育成、及びPB展開など、フィリピンの子育て世代を包括的に支援するプラットフォーム化を目指している。日本でも見られるベビー用品の専門業態をオンライン化したようなイメージだ。ベビー関連市場のオンラインプラットフォーム化は、edamamaのみならず東南アジア各地で見られる動向である。チャネルという観点でも、先進国の在り方とは異なる方向性に進もうとしていることがわかる。

      以上は、東南アジアベビー関連市場のほんの一部のトレンドであるが、先進国のセオリーとは異なる複雑性を持つことが本稿でお伝えしたかったポイントである。異なる観点で言えば、グローバルメガプレイヤーの大規模資本投下によるパワーゲームが通じ辛い市場にもなっているということだ。つまりは、上手く成長市場を見つけて当地の消費者の琴線に触れる戦略を展開できれば勝ち筋を見出せる市場でもある。

      寄稿者プロフィール
      • 下村 健一 プロフィール写真
      • Roland Berger下村 健一

        一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現在は欧州最大の戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガーに在籍。プリンシパル兼アジアジャパンデスク統括責任者(バンコク在住)として、アジア全域で消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心にグローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、事業再生等、幅広いテーマでのクライアント支援に従事している。

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