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みずほ銀行メコン5課コラム

メコン5におけるスマート農業の現状(後編)

メコン5におけるスマート農業の現状(後編)
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      みずほ銀行バンコック支店メコン5課が発行する企業向け会報誌 『Mekong 5 Journal』よりメコン川周辺国の最新情報を一部抜粋して紹介

      メコン5におけるスマート農業の現状(後編)

      Pornparn Wongphattanangkura | MHCB Consulting (Thailand) Co., Ltd.

      前月から掲載している本特集の後半ではカンボジア・ラオスの現状に触れつつ、メコン5各国企業のスマート農業への取り組みについても説明する。

      カンボジア

      カンボジアの農業部門は2020年に0・38%のプラス成長を記録し、GDPの22・84%を占めるまでになった。19年時点で国民の76%が農村部に居住しており、全労働人口に対する農業従事者の割合は34・53%に達している。

      主要作物は米、キャッサバ、トウモロコシ、サトウキビ、野菜、ピーナッツ、大豆、カシューナッツ、リョクトウ、タバコ、ゴム、果物などであるが、中でも農業部門のGDPの約半分を占める米が最も重要である。

      他方、野菜、果物の総需要の70%は現地で生産されているが、残りは主にタイ、ベトナムからの輸入に頼っている。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大の結果、両国との国境で各種規制が出されたり、作物価格の下落が起きたことにより、カンボジアへの供給に影響が出ている。

      カンボジアの農林水産省によると20年には、生産された約2000万トン以上の農産物のうち、約65%が輸出され、輸出額は34億3000万ドルに上った。

      現在、高付加価値の農産物の栽培はごく僅かではあるが、政府によって策定された農業セクタ=マスタープラン2030に従ってスマート農業の導入も進められ、農家は遠隔で灌漑・給水システムを制御したり、スマートフォンで土壌の状態や湿度のデータなどを確認できるようになったほか、病害虫の検出、収穫量の予測、気象予測まで可能になった。

      しかしながら、同国でのスマートフォンの普及率は依然低く、スマート農業が国内全体に拡大していくには相当の時間を要するものと思われる。

      ラオス

      ラオスのGDPにおける農業の割合は、20年前の33・63%から減少したものの、20年には16・20%を記録した。また、19年の全労働人口に対する農業従事者の割合は61・44%を占めている。

      ラオスの主な農林産物は、米、木製品(木材、合板)、コーヒー、トウモロコシ、野菜などである。中でも稲作が中心で、00年以降トウモロコシ、天然ゴムなどの生産も開始され、さらには林業や畜産も拡がって来ているが、依然として稲作中心の農業が行われている。

      しかしながら、農業従事者の運転資金不足や慣行農業の継続、人口増加の鈍化、農業従事者の低識字率といった負の要因に加え、新たに出てきた気候変動の影響が農業分野の成長を頭打ちにしている。さらに、同国の農業は主に個人レベルで行われており、協同組合といった組織もほとんどないため、個々の農業従事者の交渉力は低く、規模の経済も限定的なものとなってしまっている。また、農業技術の進歩や農機の利用もあまり多くは見られない。

      中国資本の大規模プランテーションの出現によりここ数十年で輸出が急速に伸びてきているが、ラオス産の農産物はほぼ付加価値がない未加工の状態で輸出されている。

      ラオス政府は、作付システムの効率化と生産技術の革新を通じて食料自給率の向上を目指している。現在行われている農業管理モデルでは、長時間労働や化学肥料・農薬の過剰使用など問題点が多く、今後は生産性向上、品質改善、コスト削減など持続可能な農業を推進するモデルとしてのスマート農業の導入が求められている。

      まとめ

      【図表1】メコン5地域企業のスマート農業導入状況 出典:各種報道よりMHCBCT作成

      タイ
      Charoen Pokphand Foods PCL(CP) ● 農場における動物福祉の推進と天候の変化への対応のため、風速計、熱探知カメラ、アンモニア測定器、二酸化炭素測定器、自動給餌・給水器が設置されたスマート養鶏場を開発。システムを通じて得られた情報は将来の分析のためのビッグデータへ反映させることができる。
      ● 2020年に養鶏場で、鶏の体重、水分量、飼料供給量をリアルタイムでモニタリングしながら、遠隔管理ができるBirdoo Smart Eyesを初めて導入し、鶏にとっての適切な環境を自動的に整えることで生産性を向上させた。
      Mitr Phol Group ● サトウキビや砂糖の持続可能な生産・加工・貿易を世界中で推進する国際的な組織Bonsucroと協力し、生産性の向上を目指すMitr Phol Modern Farmを展開。 同社は環境に優しいサトウキビ生産に繋がる土耕技術や衛星リモートセンシングシステムの活用、天気予報、治水システムなどのノウハウや技術を農家へ伝授し、スマート農業への転換をサポートしている。
      Agro Intelligent Co., Ltd. ● センサーとアプリケーションを用いたスマート温室Grobotを開発した。これにより季節要因の影響を受けることなく自動的に、二酸化炭素、水、温度、湿度、光などの環境条件を制御できるようになった。
      ベトナム
      Loc Troi Group ● ベトナム最大級のコメ輸出企業。協同組合と連携しながら肥料や農薬を散布するためのドローン利用を導入するなどハイテク農業を推進。これによって、労働時間の短縮、作業効率の向上、農薬使用量の削減に繋がり、農業従事者の収入安定化にも寄与している。同社は今後ドローンの数を増やし、稲作農家や協同組合へのサービス提供に注力することを計画している。
      FPT Corporation ● IT大手。2016年に富士通と協働して、クラウドコンピューティングテクノロジーを活用するスマートアグリカルチャーAkisaiを導入したFujitsu-FPT Akisai Farm and Vegetable Factoryを開設した。この中で、1年間の実証事業として中サイズのトマトや低カリウムリーフレタスなどの高付加価値野菜の生産を実施。このプロジェクトはベトナムにおけるスマート農業開発のモデルとして注目を集めた。
      Viet Uc Seafood Corporation ● ベトナムの大手エビ養殖会社。エビ養殖場では革新的とも言える水質、塩分、pH値を最適なレベルに保つことができるエリアを設置した。エビの空腹度を検知することで供給量を自動的にコントロールできる給餌システムも導入されており、飼料の削減も可能。
      ミャンマー
      Alliance Eagles Group Agriculture Ltd.
      (AEG Agri)
      ● 2019年に設立された農業技術会社。実地研修を通じて契約農家にスマート農業技術の普及を推進している。パイロット農場としてシャン州のトウモロコシ農家に対して、地場の農業スタートアップ企業Hydro Plantと協働して、収穫量向上のために気象情報や、スマートフォンでモニタリングか可能な自動温湿度制御システムなどを提供、ここから得られる情報は農家が農作物を効率的に管理し作物ロスを抑えることに役立っている。
      カンボジア
      Amru Rice (Cambodia) Co., Ltd. ● カンボジアの主要なコメ輸出企業。プリアヴィヒア州の農業協同組合に所属する小規模有機稲作農家と協力して、ブロックチェーン技術を応用した農家、米輸出業者、小売業者間の「スマート契約」を可能にするBlock Riceプロジェクトを導入した。このブロックチェーン技術を利用したデジタル契約では全ての当事者にとって公平な取引価格を確保することで、農家の地位向上にも繋がる。

      農業はメコン5各国の経済発展にとって最も重要な産業の一つである。

      今後、気候変動、食料安全保障、貧困などの諸問題を解決するには、スマート農業の発展が大いに求められる。

      種苗、肥料、農機、ソフトウェア・アプリ開発といった日系企業やスタートアップ企業のサポートが必要であり、またそこにビジネスチャンスが隠されている。さらに、予測データシステム、自動化技術(給水系、冷却系、肥料散布系など)、センシングツールやロボット工学などの技術を持つ企業にも同様のチャンスがあるはずである。

      また、都市化の進展や中間層の台頭により、各国の消費者がより健康的な食品を好む傾向が強まってきた結果、有機農業のビジネスチャンスが拡大していることは、関連の事業を行っている日系企業に追い風となっていると言える。

      デジタルやデータを駆使したイノベーションを取り込むことに、特に若年層の農業従事者は前向きである。それゆえ農業を営む若い世代が増えることが予想され、結果として都市への人口流入の減少に繋がる。

      各国政府はインセンティブ、研修プログラム、インフラ開発などを通じて支援を始めており、今後メコン5各国ではスマート農業の成長が見込まれる。


      月間USD市場推移 Monthly Market

      タイ

      2月の為替相場動向

      33バーツ前半で取引を開始し、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)等の中央銀行イベントは無難に通過。海外株式市場が堅調に推移してリスクオンが強まり、タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)ではインフレ対応よりも経済回復の優先度が高いことが確認された安堵感から32バーツ後半へ下落。中旬はウクライナ情勢が緊迫化したものの、欧州通貨や米ドルへのインフローが限定される中で地理的に影響を受けにくいタイのバーツは徐々に32バーツ前半へ。下旬、ウクライナ情勢が一段と混沌の様相を呈し、対ロシア経済制裁が各国から発表されると32バーツ半ばへと上昇したが、3月から外国人観光客に対する隔離措置緩和が発表されて反落。24日にロシア軍のウクライナ侵攻が報じられると32バーツ後半へ上昇し、その後もヘッドラインに連られて32バーツ半ば~後半で不安定な展開。

      3月の為替相場動向

      トラベルバブルの協議再開や外国人観光客の隔離措置緩和が報じられた後は素直にバーツ買いが強まったが、ウクライナに関するヘッドラインがそうしたインフローを一蹴する影響を持っていることから、引き続き同ヘッドラインに左右される展開を予想。3月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げも確実視されており、2月のドルバーツは2月の月安値を底として上方向メインの動きを予想する。

      ミャンマー

      2月の為替相場動向

      USD高MMK安の抑止を目的にミャンマー中央銀行が導入を始めたトレーディングバンド規制(=民間銀行は中銀が設定する中心値から±0.5%の範囲内で為替取引を取り扱わねばならない)に伴い、中心値が昨年12月14日より1778.0で固定されいるため事実上の固定相場が続いた。 一方で、市場の需給は大きく輸入サイド(=USD買いMMK売り方向)に偏ったままであるため、市場実勢に近いと思われる両替相場の水準(=1,970~1,990)と上記の中銀設定レート(=中心値1,778)が乖離する二重相場の様相を呈している。したがって、銀行を介した為替取引の取扱量が僅少に留まる市場流動性の問題に直面している状況。

      3月の為替相場動向

      3月も中銀が主導する官制相場の下、現在の中心値=1,778.0を軸に1,700台後半での狭い範囲内でのトレーディングバンド設定になるものと思われる。

      ※ベトナムは諸般の事情により休載とさせていただきます。

      みずほ銀行バンコック支店メコン5課

      E-Mail : mekong5@mizuho-cb.com

      98 Sathorn Square Office Tower 32nd-35th Floor, North Sathorn Road, Silom, Bangrak, Bangkok 10500 Thailand

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