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タイにおけるマドリッドプロトコル出願について

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    当職担当の回ではタイの知的財産権法それぞれについて詳細に説明している。
    今回からマドリッドプロトコルを利用した商標登録出願について解説する。

    1. マドプロ出願とは

    外国に商標登録を出願する場合、原則として各国の国内法に従い、各国の定める言語で願書を作成し、各国の代理人を通じて個別に出願をしなければならない。

    このような制度のもとでは、権利取得を希望する国が多いほど出願人の負担は増え、例えば、全世界的に事業を展開する出願人が多数の国に商標出願を希望する場合の負担は膨大なものとなってしまう。また、各国ごとに権利が成立したとしても、その管理に係る負担も大きい(商標権は更新をすることで半永久的に権利維持が可能であるが、この更新の期限を管理し手続きを行う必要がある)。

    このような負担を避けるため、ある国(例えば日本)に出願または登録されている商標を基礎出願(基礎登録)として、1通の願書で、複数国に対して同時に出願するのと同等の効果を得ることができるという便利な制度が存在する。これをマドプロ出願(マドリッドプロトコル(=マドリッド協定議定書)に基づく出願)という。

    2. マドプロ出願の主なメリット

    ① 経費削減が可能

    前述の通り、各国別に商標を出願したい場合は、まず各国代理人に依頼して、個別に出願手続をする必要がある。しかし、マドプロ出願を行えば、1つの言語(原則英語)による出願を国際事務局に行うだけで、複数国に対して同時に出願するのと同等の効果を得ることができるため、指定商品等の翻訳費用や、現地代理人手数料等を大幅に削減することができる。さらに、スムーズに登録になれば、現地代理人による手続を介することなく(=現地代理人の費用を一切生じさせることなく)各国における商標権を取得することができる。

    ② 権利管理が容易

    各国に個別に商標出願をした場合、当然出願日や登録日はバラバラになる。その結果、登録後の権利管理を各国ごとに行わなければならず、非常に手間である。これに対して、マドプロ出願の場合は、各国の権利期間が国際登録日を基準に10年間と一律に定まるため、一括して管理ができるというメリットがある。指定国が多ければ多いほど、その恩恵は大きくなるといえよう。

    ③ 事後指定による権利の拡張が可能

    マドプロ出願を行っていた場合、事後指定という手続を行うことにより、当初指定していなかった国に対しても後日追加的に簡易に権利を拡張することが可能となる。

    3. マドプロ出願の主なデメリット

    ① マドプロ出願自体に費用がかかる

    マドプロ出願を行う場合、世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局に手数料を納付する必要がある。各国への個別の手数料とは別に、この国際出願分に余計な費用が発生することになるため、指定国が1~3程度の場合は、国際登録を介さずに直接出願した方が費用が安く済む場合も多い。

    ② セントラルアタックの危険性

    マドプロ出願を行う場合、いずれかの加盟国に基礎出願等が存在することが前提となるが、この基礎出願等が国際登録後5年以内に拒絶、無効又は取り下げになってしまった場合、その国際登録も連鎖的に消滅するというデメリットがある。これをセントラルアタックという。国際登録は、あくまで基礎出願等に従属する権利であるためである。なお、国際登録の日から5年を経過した後は、国際登録に係る権利が独立した権利となるため、セントラルアタックで取り消される心配はなくなる。

    ③ 拒絶理由を受ける場合

    国際登録出願を行い、複数国に対して同時に出願するのと同等の効果を得た場合、そのままスムーズに登録になれば問題ないが、各指定国において個別に拒絶理由を受領する場合もあり得る。この場合、拒絶理由を解消するために各国の現地代理人を通じて対処する必要が生じてしまうため、費用面でのメリットが大きく低減することになる。特に、商標の識別力や指定商品役務の審査が厳しい国(アメリカやタイ等)に保護を求める場合においては、拒絶理由を受領する可能性も高くなるため、注意が必要である。

    次回は、上記メリットデメリットを踏まえた上で、どのような場合にマドプロ出願を選択すべき場合か、また、タイにマドプロ出願を行う場合の留意点について解説する。

    寄稿者プロフィール
    • 永田 貴久 プロフィール写真
    • TNY国際法律事務所
      日本国弁護士・弁理士
      永田 貴久

      京都工芸繊維大学物質工学科卒業、06年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co.,Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニア、ベトナムの各オフィスの共同代表も務める。

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