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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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MU Research and Consultingコラム

ESG投資を呼び込むカーボンニュートラル

カーボンニュートラル
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    2015年のパリ協定を機に大きく加速した脱炭素化、そしてカーボンニュートラルに向けた世界の取り組み。国家レベルでの施策に加えて企業ごとの動きも近年さらに盛んになり、CSRやCG(コーポレート・ガバナンス)と同様に脱炭素化への対応が企業価値を示す一つの指標になりつつあると言っても過言ではない。そんな潮流に、タイをはじめASEAN各国はどのような動きを見せているのか。
    急成長するESG(環境・社会・ガバナンス)投資を含め、その現状と取り組みを三菱UFJリサーチ&コンサルティングが解説する。

    加速する脱炭素化と異なる各国の進度

    2022年4月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC※)による、総合的な科学的・技術的・社会経済的情報を評価する第6次評価報告書の暫定版が公表された。各国が脱炭素化を加速させる中で、本報告書は各国政府が参照し政策根拠にするなど、その影響力は大きい。他方で各国政策を規定する強制力はなく、脱炭素へのロードマップは各国政府に委ねられている。

    報告書には地球温暖化の主因が人間の活動であることが初めて明記されたものの、現状の世界各国の対応ではCOP26で国際合意となった1.5℃目標(30年までの世界の平均気温の上昇を、産業革命以前と比べ1.5℃に抑える目標)を達成することは難しいことが指摘されている。この目標達成のためには、25年までに早急に大幅な温室効果ガスの排出量削減に転じる必要がある。

    ※ 国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された、世界中の論文を検証し気候変動問題について評価報告する機関。

    G7、電力部門の新方針を表明

    温室効果ガス削減のためには、石炭火力の再生可能エネルギーへの転換や省エネ、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)といった技術を活用した除去等が考えられる反面、技術開発や再生可能エネルギーへのトランジションには資金が必要であり、この資金不足がアジア諸国における石炭消費量・依存度が高い原因に繋がっている(図表1〜3)。

    石炭国別消費量(2020)

    このような状況下で、早急な対策が求められる石炭消費量の多い国はいかに問題を解決していくのか。

    5月下旬に行われたG7の気候・エネルギー関係閣僚会合では、35年までに電力部門の大部分を脱炭素化することで合意し、また共同声明には排出削減対策を取らない国内石炭火力発電所を廃止する方針も明記された。

    まずは日本も含めたG7で石炭火力使用廃止の方向性を打ち出すことでアジア諸国にも同様の動きを促す狙いがあり、周辺国の反応が注視される。次項以降ではアジアを取り巻く脱炭素の現状や、各国政府と民間企業の取り組みに対する日系企業の戦略について考察していきたい。

    アジアの概況と日系企業の打ち手

    1.アジアにおける脱炭素を取り巻く概況

    アジアにおける環境対応に向けた取り組みは、目まぐるしく状況が変化している。特に、2021年11月に英国で実施されたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)は各国が新たな目標を公表し、アジアにおいても一つの節目となった。全体を通して見ると、50年のカーボンニュートラル※1達成を挙げる国が多いことが分かる(図表4)。

    カーボンニュートラル達成に向けたアジア各国の施策

    しかしながら、一概に脱炭素社会の実現と言っても各国とも様々な思惑が交錯しているのも事実である。たとえば、石炭火力への依存度が高いインドは脱炭素に向けた目標設定に関しては保守的であったが、COP26では一転してモディ首相が70年のネットゼロ・エミッション※2を宣言した。これに対しては、ネットゼロ・エミッションという難易度の高い目標を挙げつつも、他国の目標よりも遅い70年に設定することで実質的に先送りにしているといった様々な憶測が流れた。

    ※1…二酸化炭素(以下CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林吸収やカーボンクレジットの購入等によって超過排出量分をオフセットし、排出量合計を実質的にゼロにすること。
    ※2…カーボンニュートラルよりもさらに高度な脱炭素目標であり、温室効果ガスの排出量から、森林吸収やCO2の回収・貯留技術による「回収分」を排出量とオフセットし、実排出量をゼロとするもの。

    濃淡分かれる各国対応

    域内の国々については、目標の実効性という観点で大きく2つのグループに分類できる。まず一つは、脱炭素の目標が国家レベルの政策に落とし込まれているグループであり、タイのほかシンガポール、マレーシア、インドネシアなどが該当する。タイでは21年にプラユット首相肝入りの政策として取りまとめされた「BCG(バイオ・循環型・グリーン)経済政策にて、バイオ関連のビジネスやR&Dを奨励し、脱炭素実現に向けた具体策を盛り込んでいる。また、シンガポールは域内の先頭ランナーとして、排出量取引や炭素税などの実効性を伴った施策・制度の立ち上げを進めている。

    もう一方は、目標は公表しているものの政策としての本格的な落とし込みは準備段階に留まっているグループである。世界トップクラスの石炭排出量であるインドに加えてベトナムなどが該当する。

    たとえば、ベトナムでは22年2月末に国家電力マスタープランが取りまとめの最終策定段階にあり、首相の最終承認を得られるように動いているが、石炭火力発電所の新規開発の凍結と段階を踏んだ撤廃や、再生可能エネルギーのウエイト付けなどの調整に時間を要していると考えられる。

    このように濃淡が分かれる背景としては、アジア諸国の高い化石燃料への依存度が背景にある。アジア諸国のCO2総排出量は増加傾向にあり、19年時点では世界全体の6・4%と中国(10・5%)に次ぐ2位となっている。また、アジア全体では、化石燃料への依存度が高く、なかでも石炭比率が全体の約半分を占めているのが実態である(図表2)。

    アジア諸国のエネルギー構成

    同時に、コロナ禍で傷んだ経済の回復・成長との両立も難しく、取り組むべき課題も多い。次の章では各制度の整備の実態や、その中での日系企業としての取るべき方策について述べる。

    2.企業活動への示唆と活動事例

    ● カーボンプライシング

    「カーボンプライシング」とは、気候変動問題の主因であるCO2に価格をつける仕組みのことであるが、同時にCO2を排出する企業は一定の金銭的負担を求められることとなる(図表5)。

    カーボンプライシングによる企業活動への影響

    特に重要なものとして、炭素税と排出権取引制度が挙げられる。

    前者の炭素税は政府が炭素価格を直接的にコントロールする手法であり、すでに欧州では先行して導入が進んでいる。アジアではシンガポールが19年からカーボンプライシング法を取り入れている。

    現在1トンあたりの税額は、5シンガポールドル(日本円で約460円程度※3)と欧州の税率が5千円~1万円レベル/トンであることを踏まえると、非常に安価に設定されている。シンガポール政府はこの税額を順次切り上げ、30年までに国際標準レベルの50~80シンガポールドルへの追加引き上げを示唆している※4。

    この水準になると、シンガポールでモノづくりをする企業への採算面や投資動向にも一定の影響を及ぼす可能性がある。

    後者の排出権取引制度は政府がCO2の排出量をコントロールする手法の一つであり、各主体が排出枠の過不足分を取引市場にてトレードするものである。こちらも欧州ですでに導入が始まっているが、アジアにおいてはシンガポールが先行しており、地域内トップの取引実績を有する。

    特に注目すべきは、シンガポール証券取引所(SGX)、政府系ファンドであるテマセク・ホールディングスなどが立ち上げた取引市場である「Climate Impact X」である。実質的な始動は22年からであり、炭素排出枠を競売できるプラットフォームを順次立ち上げるスケジュールである。人口衛星での監視、AI、ブロックチェーンなどのテクノロジーを駆使し、カーボンクレジットの透明性や信頼性を保証することを目的としている。

    シンガポールが脱炭素を成長戦略と捉え、これらのプラットフォームを打ち出していくことで新たなデファクト・スタンダード(事実上の標準)を確立する意図が透けており、注視していく必要がある。

    ※3…為替は2022年5月19日時点。
    ※4…次に予想される切り上げは24~25年、同25シンガポールドル/トンと言われている。

    ● 新たなソリューションとしてのグリーン電力証書

    一方で、欧米日などの先行する国々と比較すると、各種の制度は全般的に整備段階にあるのが今日におけるアジアの実態である。企業サイドが取り組めることとしては、従来は自社の省エネの推進や自社設備への屋根置き太陽光発電設備の導入などの再生可能エネルギー関連に限られていた。

    ここでは、新たな選択肢としてアジア各国で近年整備が進んでいるグリーン電力証書を挙げたい。これは脱炭素のさらなる推進のために、再生可能エネルギー由来の電力証書を購入することで、脱炭素へ貢献できるというものである。今後、再生可能エネルギーの構成比が増えていくアジアにおいて証書発行は着実に進む、有望な市場として考えられる。

    同証書の代表的なものとして、欧州のGO(Guarantee of Origin)、北米のREC(Renewable Energy Certificate)などの基準があるが、アジアはI‒RECと言われる基準を導入する国が主流である(図表6)。

    各国におけるグリーン電力証書の導入比較

    アジア各国における同証書の導入の多くは、政府あるいは電力公社などのもとで立ち上がっている。また、シンガポールやマレーシアのようにI-RECと合わせ、各国独自の規格を導入しているケースもあり、標準化の動向については見極めが必要である。日系企業では大手の製造業や商社などの購入事例が見られるが、現状は各社とも試験的な購入に留まっている。

    価格は1MWあたり約200円(タイ)~約300円(インドネシア)となっている。

    ●日系企業のとるべき方策

    このように目まぐるしく変わる外部環境の中で、日系企業の舵取りはどうすべきなのか。
    ここでは脱炭素分野における着眼点を3つ挙げたい(図表7)。

    脱炭素分野の事業展開における3つの着眼点

    1点目の「脱炭素施策の立案と実行」はすべての取り組みの出発点として重要である。具体的には、足元の温室効果ガス削減の測定・目標設定や全社方針に沿った削減ロードマップ策定などである。取り組み強化のために、アジアでの専門チームの組織構築なども選択肢として考えられるであろう。

    2点目は「既存オペレーションの高度化・再定義」である。日立製作所は21年、調達先を含むサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの達成を50年までに実現することを挙げ、先行事例として注目されている。今後アジアにおいても、川上・川下を含めたサプライチェーン全体を見据えた脱炭素計画の実行が必要となる。これは、自社の事業範囲を再点検する好機ともなり得ると同時に、事業再編や中期的な視点での生産拠点の移転なども考えられる。

    そして最後に「新たな事業機会の模索」が挙げられる。すでに再エネ分野への投資などはエネルギー事業者、総合商社などでも活発である。一方で、ASEANにおける財閥企業では、PTTの電気自動車製造分野での大型投資など迅速かつ能動的な取り組みを見せている。蓄電池をはじめとするインフラ企業やスタートアップ企業との連携なども考えられ、脱炭素を切り口とした新たなアライアンスを模索することが共生のための一つの解となってくるはずだ。

    タイの取り組み事例

    排出権取引制度:Emission Trading Scheme

    排出権取引の一般的な概念図

    タイ政府が積極的に推し進める排出権取引制度
    Thailand V-ETS(導入に向けたパイロットフェーズ)

    ● 計55社が本スキームに参入、制度化まで秒読みか

    タイ国内ではすでに複数の排出権取引が発足しているが、いずれもパイロットフェーズにある。なかでもタイ政府が積極的に関与し、推し進めているものとして「Thailand Voluntary Emission Trading System(Thailand V-ETS)」が挙げられる。2015年にパイロットテストが行われ、石油化学や食品、セメント業など、計55社が本スキームに参入している。

    当初は民間主導での運用だったが、政府によるカーボンクレジットに関わる法規整備の促進に伴い、現在のThailand V-ETS は独立行政法人「TGO(Thailand Green house management Organization)」によって管理されている。

    ● 導入までの重要課題

    ・ステークホルダーへの理解促進
    タイ経済の主要なステークホルダーはこの制度への理解が問われるため、具体的な課題としてはワークショップやトレーニング、ケーススタディの公開などによる広報活動といった理解促進が進められている。

    ・電力セクターの参入
    電力セクターは温室効果ガス排出の4割を占める重要なプレイヤーだが、現状の規制内容では参入が難しいという理由でThailand V-ETSに加盟していない。それをいかに払拭できるかが鍵を握る。

    ・既存のエネルギー・気候対策との迎合
    本制度自体が市場の変動や排出量の削減に対して有効である場合と、逆効果になる場合が紙一重になるリスクがあるため、政府はこの点を重要視して、同制度がしっかりと協調できる体制を築くことが求められている。

    炭素税:Carbon Tax

    21年に導入検討を示唆するも具体的な制度化は足踏み状態

    【現状】自動車など一部の物品税に対する優遇措置のみ、政府は導入を示唆するも大きな進展はない

    【課題】段階的な導入を希望するタイ工業連盟や自動車業界などの反発を、政府はいかに収めていくか

    タイ政府は21年10月に炭素税の導入を検討すると発表し、素案としてエネルギーセクターを対象にしたパイロットフェーズでの導入を示唆。また、財務省物品税局は「税収源として捉えるのではなく明確なセクター目標を設定することで、国家目標のロードマップを基礎とした脱炭素に向けて、各企業に取り組みの具体性と達成意欲を強く与える制度になる」とその後の道筋について言及しているが、具体的な進展は見られておらず、自動車など一部の物品税に対する優遇が課せられる程度に留まっている。

    【参考】シンガポールにおける炭素税

     

    グリーン電力証書:Renewable Energy Certificate

    1単位50B〜購入可能※1、排出量報告義務化の可能性も

    グリーン電力証書の仕組み

    【現状】20年にI-REC規格を導入済み、タイ発電公団が登録手続きをサポート(一部、民間)

    【課題】認知度向上、手続き一元化など、購入プロセスの簡易化

    グリーン電力証書の利点は、これまで再生可能エネルギー等の発電設備を持たない・持てなかった企業や団体、個人でも簡易的に購入することができ、その取り組みが地球温暖化防止やESG活動の貢献へと繋がるという点にある。タイにおいての認知度はまだ高いとは言えないが、今後施行が予想される「気候変動に関する法律」※2では企業に対して排出量報告が義務付けられる可能性もあり、証書の購入がより現実的な選択肢になると考えられている。

    ※1 MURCによるEGATへの確認結果によるもの(2021年12月時点)
    ※2 Climate Change Act:タイ国内における気候変動に関する対策を行うことを目的に、温室効果ガスの排出量削減を主とした取り組みをまとめた法

    カーボンニュートラルに向けたASEAN域内の財閥企業の取り組み

    アジア各国政府が脱炭素に関する目標を掲げる中、域内の主要財閥も取り組みを強化している。

    タイでは国家目標と同じく2050年のカーボンニュートラルを目標として掲げる企業が多く、セメント大手のサイアムセメントグループや農業・小売大手のCPグループもこれに当てはまる。

    たとえば、CPグループは、全社横断的な取り組みとして廃棄物削減や太陽光パネルの導入によるCO2の排出量削減を目指している。

    そのほかでは、シンガポールのセントーサ開発公社(シンガポール・セントーサ島の開発・運営・広報を担う法定機関)が、30年に他社に先駆けて脱炭素を実現することを目標としている。島全体の公共交通機関の電動化を目指すほか、21年には立地企業群17社でセントーサ・カーボンニュートラル・ネットワークを組成し、島内での廃棄物削減を行っている。

    図表8は各社の取り組みを4つに類型化したものである。それに基づき、具体的な事例を紹介したい。

    ASEAN主要企業の脱炭素の取り組み例

    1.再生可能エネルギーへの転換・エネルギー効率化

    この取り組みは、最もスタンダードな手法である。たとえば、タイ政府の「BCG政策」においても再生可能エネルギー(以下、再エネ)・分散電源の拡大が掲げられており、各社ともこれに足並みを揃え、太陽光・バイオマス・水力・風力といった分野への投資意欲は旺盛である。

    また、タイエネルギー大手のPTTは、スコープ3※での排出量削減活動に今後取り組む方針を示している。具体的には、取引先や顧客に対してバイオ燃料や低炭素商品の導入を促進したり、地域の温室効果ガスに関する啓蒙・社会活動などを展開するなどの活動を行っている。

    ※ 排出スコープにおけるサプライチェーン上の川上・川下を含めた自社以外での排出活動のこと。

    2.脱炭素技術の開発・実用化

    本テーマは、CO2の排出量を削減する技術やCO2回収技術への取り組みである。インドネシアのPupukではイギリス系ICIS社と提携し、水素技術並びにクリーンエネルギーの供給に関する研究開発を行っている。

    足元で注目されている炭素回収関連では、欧米系企業の動きも活発化している。アメリカの石油会社エクソンモービルは東南アジアで大規模なCO2の回収ハブを設立し、それをアジア各国とつなぎネットワーク化する予定である。これと並行して、マレーシアの国営石油会社Petronasや、インドネシアの国営石油会社PT Pertaminaなど各国の大手石油会社とCO2の回収や輸送、貯蔵が可能な地域の選定や調査についての覚書を交わしている。

    3.持続可能な開発システムの導入

    SCGグループ(タイ)では、直接的な排出量削減だけでなく間接的な貢献として、社内でのカーボンプライシング制度の導入の検討を進めている。この制度は社内の全事業体に対してCO2の排出量目標を設定しており、その排出量に対して25USD/トンでCO2の価格設定を行っている(22年時点)。これにより、排出量が相対的に大きい事業投資に歯止めをかけることを狙いとしている。また、BtoC関連事業を手掛ける企業で廃棄物削減による貢献を目指す企業も多い。小売大手のCentralや水産加工業大手のThai Union(いずれもタイ)は、徹底的な廃棄物削減活動を公表している。タイ国内でも21年に政府がプラスチック廃棄物に関する政策を定めた。

    これにより、プラスチック関連包装に関する規制が強化される傾向にあり、バイオプラスチック関連の包材置換も一部で進み始めている。CPグループ(タイ)傘下のCPフードでは、食品向けの透明トレーについてバイオ由来の素材であるポリ乳酸トレーを開発し、20年の知的財産展で発表している。この技術はすでにグループ内で導入されており、相応のCO2削減に貢献していることを公表している。

    4.事業再編

    ここで挙げる「事業再編」とは、脱炭素をテーマとした事業ポートフォリオの組み換えである。既存事業に加えて脱炭素事業を新たに手掛けるケースも見られる。インドネシアでは脱炭素の流れを受け、石炭などの鉱業事業への依存からの脱却を目指すAstraや、再エネ事業への参入を果たす炭鉱大手のBanpuなどもその一例である。

    また積極的な動きを見せた事例としては、PTTの電気自動車製造への参入が挙げられる。本件は、台湾の鴻海グループとの合弁により最大で投資額20億USD、年産15万台という意欲的な計画となっている。

    一方で、事業撤退や再編という選択肢がとられるケースも見られる。シンガポールの政府系投資会社のテマセク・ホールディングスは、投資残高約30兆円相当(21年時点)のうち、注力すべき中核業種をBtoC関連、メディア・IT、バイオ・農業関連、金融関連などとしている。全体の6割を占める残りのポートフォリオについては「オールドエコノミー」として再編を進める方針であるが、出資先である同国のKeppelグループの石油関連事業についてもその一つと見なし、再編を公表している。

    このほか、フィリピンの大手財閥であるアヤラグループも30年までに石炭火力発電事業の完全撤退を明らかにするなど、投資の継続可否を検討する企業も出てきている。化石燃料依存度の高いアジアでは、エネルギー関連事業の再編は難しい判断となることが予想されるものの、各社による対応のスピード感や計画の実効性が求められている。

    寄稿者プロフィール
    • 池上 一希 プロフィール写真
    • MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
      池上 一希 Managing Director

      日系自動車メーカーでアジア・中国の事業企画を担当。2007年に当社入社。大企業向けの欧米、中国、アセアン市場での事業戦略構築案件を中心に活動。18年2月より現職。バンコクを拠点に東南アジアへの日系企業の進出戦略構築、実行支援、進出後企業の事業改善等のテーマに取り組む。
      ※当2名の他、池内勇人(アソシエイト)が執筆


    • 川手直子プロフィール写真
    • 戦略コンサルティングビジネスユニット
      グローバルコンサルティング部 マネージャー
      川手 直子 Manager

      大学卒業後、複数のコンサルティングファームを経て現職。日系企業の海外事業に係る進出、撤退、再編、新規事業開発、中期経営計画策定等グローバル戦略策定プロジェクトに携わる。公的期間の制度を活用した日系企業の海外調査・F/S案件も手掛ける。

    三菱UFJリサート&コンサルティング

    MU Research and Consulting(Thailand)Co., Ltd.

    Tel:+66(0)92-247-2436
    E-mail:kazuki.ikegami@murc.jp(池上)

    【事業概要】 タイおよび周辺諸国におけるコンサルティング、リサーチ事業等

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