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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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不動産のプロ・GDM記事

Arayz 事業譲渡〜創刊10周年を迎えた矢先の決断。その真意と未来を語らう〜【代表対談】

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       本誌『ArayZ』は、2012年GDM (Thailand) Co., Ltd.(以下GDM)が創刊したタイ・ASEANの“今”を伝える月刊ビジネス情報誌だ。タイ進出を試みる日本企業からタイで働くビジネスパーソンまでさまざまな読者のニーズに応えるため、無料配布の形式を採りながらも専門性の高い情報発信に努めてきた。「ただのフリーペーパーとは思われたくない」という強い矜持を抱き、次の10年についても質の高い情報発信を続けようと決意を新たにする。そんな最中、Mediator Co., Ltd.(以下Mediator)への事業譲渡を決断した真意は何なのか。その狙い・動機・背景などについて、両社の代表が対談した。

      なぜ今、事業譲渡なのか

      超えなければならない壁

      高尾:ArayZを興して満10年。ようやく一定の認知度が得られるまでとなり、「次の10年をどうしようか」と思案していた時のことでした。これまでと同様に特集企画を立案し、取材を行い、情報発信をしていくというのなら、何ら問題なく継続できたことでしょう。ですが、果たしてそれでいいのか。それが我々に求められていることなのか。そう考えた時に下した答えが、今般の事業譲渡でした。

      今後もArayZを継続し、発展させていくためには、1+1が3以上になるような相乗効果がなくては意義がありません。常々、我々が考えていたことです。常に発展がなければ、旬となるタイの“今”は伝えられないという確信が背景にあったからです。

      そう思った時に脳裏に浮かんだのが、Mediatorのガンタトーンさんでした。彼なら力もあって、より価値を高められるのではないか。両社のリソースが噛み合えば、高いシナジー効果が得られるのではないか。そう直感した11年目の2023年4月、ArayZはGDMからMediatorにバトンタッチしました。GDM単独ではできない、もっと大きく発展する何かを得るために。

      初期には「タイの日経ビジネスたれ」などと鼓舞したこともありました。最近は出会う人たちから「ArayZの記事を読みました」とか、「あの記事がきっかけとなって、あの会社と繋がりました」などといった声もいただき、目標としてきた企業間の連携も見えてくるようになりました。タイの日系社会で普通に読まれる雑誌にまで成長したと実感しています。

      とはいえ、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。フリーペーパーの中でも後発ということもあって、創刊直後から3年目ごろまでは、まさに逆風でライバル誌も数多くありました。「こんなにフリーペーパー要らないよね」と冷たい視線を向けられたことも少なくありません。それが5年目を迎えるころからか風向きが変わり、その後は徐々に認知度も高まって、ここ2年ほどは右肩上がりに追い風が吹くような、そんなイメージを持っています。

      ただ、繰り返しになりますが、このままの方法で今後も続けたところでArayZの価値を現在の2倍にも3倍にも引き上げることは簡単なことではない。原因は明確で、社内のリソースの問題です。ここはタイ。しかしながら、GDMそのものが日系企業であり、ArayZの編集に携わる人々も日本人ばかり。実際にタイ王国やタイ企業が何を求め、タイ経済がどういった方向性に進むのかを知り、理解するにも限界があります。その壁を超えない限り、強くはなれない。それにはMediatorしかない。そう思い、今回の決断に至りました。

      譲渡先は日本に精通したタイ企業

      ガンタトーン:そう言っていただけて、とても光栄です。弊社はタイ人の私が立ち上げたタイの会社ではありますが、日本と共にある会社です。私自身、大学留学や日本のタイ大使館勤務など通算10年間の日本滞在経験があり、日本の文化、社会、習俗などについては十分に心得ています。

      Mediatorはタイと日本の架け橋となるべく、各種事業や企業間のマッチングなどを主な業務としており、これまでも多くの日本企業や団体との協業や取引を遂行してきました。社内には日本語能力試験のN2取得者が13名、N1以上が17名おり、事実上、日本語が社内共通言語となっている会社です。日タイ間の投資促進を目的とした企業間(B2B)マッチングプラットフォーム「TJRI:Thai-Japanese Investment Research Institute」も自社で展開しており、さまざまな“出会い”のきっかけ作りを提供しています。

      私自身もArayZについては創刊当初からよく知っていて、「内容と紙質がしっかりしている媒体」という印象です。問題意識も高く、タイでビジネスをしていく上で必要な媒体」だと感じています。ビジネスに特化した点が共通していますし、いつかは協業出来たら良いな、とも考えていました。

      専門家集団の情報発信プラットフォーム

      高尾:ArayZも「専門家集団の情報発信プラットフォーム」をコンセプトとしていて、ある種似たところを感じます。今でこそ、著名なコンサルタントや専門家の方々がArayZの執筆陣に名を連ねていますが、当初は寄稿をお願いしても断られることの連続でした。当然のことですが、ひとえに知名度不足を痛感していました。

      それが少しずつ好転し、「記事を寄稿したいのですが」とオファーを受けるようになり、広告としてお金を支払ってでも出稿したいという依頼もいただくようになりました。まさに継続は力なりです。こうした中で、創刊当初から暖かく接していただいた専門家の皆さんには感謝の言葉もありません。本当にありがたいことです。

      中立公正がカギ

      高尾:もう一つ大切なこととして、情報発信プラットフォームとしての核心は中立公正でなければならないという点が挙げられるかと思います。経営上の戦略や各種分析、見解は立場や見方によって人それぞれ。専門家集団でもない我々が、それらに意見を挟むことはよくありません。あくまで専門家がその責任において情報発信する場の提供。我々はそれに特化してきました。

      だからこうしたプラットフォームの必要性が徐々に認知されるようになってきたと感じています。専門家の皆さんの間でもそれが浸透し、結果としてさまざまな角度から多様な意見に触れることができるようになりました。読者から寄稿者としての専門家、広告主、そして出版元の我々まで全員が満足するプラットフォームとして存在感を増すようになりました。

      情報は知られないと意味がない。読んでもらって初めて価値を帯びる

      二次利用可能で認知拡大が加速

      ガンタトーン:プラットフォームとしての認知度を高めていくために、具体的にどのような取り組みをされたのですか。

      高尾:一つに、二次利用許可があります。出版物には著作権があり、転載を禁止するのが一般的です。しかしながら当社では、他誌への掲載を除きあえてそれを可能としました。読者である銀行やコンサルタントの皆様の先には、その方々の無数のクライアントが存在します。そういったクライアントに発信するための一つの材料として、我々のレポートや地図、情報などを自由に活用していただき、どんどん広げてくださいとお声がけしたところ、銀行が作るレポートの基礎資料に活用されたり、定期的な顧客向け資料に転用されたりするようになりました。結果として多くの読者を獲得するところとなりました。

      日系企業へ向けて個別配送を徹底したという点も大きいと思います。ArayZでは、創刊以来、日系オフィスや工場などへ無料郵送を実施しています。その数約5,000部。無料郵送はコストがかかりすぎるからと廃止した媒体もあるようですが、当社ではそれを一度も取り止めたことはありません。

      その意図は明快で、情報は知られないと意味がないからです。情報誌も作成するだけでは価値にはなりません。読んでもらって初めて価値を帯びる。そう信じるからです。初めのころはどこの誰に送付して良いかも分からず、有名企業の「日本人ご担当者様宛て」などという曖昧な表記で郵送したこともありました。しかし、今ではそういった宛名はほとんどありません。当社の持つ名簿リストの厚さが、プラットフォームの認知度につながっています。

      ネットは検索型、紙は発見型

      ガンタトーン:媒体が紙である点も大きな魅力だと思います。私はよく「ネットは検索型、対して紙は発見型」と表現します。ネットは「特定の情報を知りたい、もっと調べたい」と思って見にいくもの。一方、雑誌など紙媒体は具体的には意図していないものの、ページを繰ってみたら新たな情報と出会える、発見型だと思っています。だから私は紙が大好きです。色々な“気付き”や“発見”を与えてくれるところがいい。紙媒体の廃刊や休刊が相次ぐ中、ArayZが評価を受けているのはその点も大きいのではないでしょうか。

      高尾:読者の中には古い号からずいぶんと保管されている方もいます。帰任時にはわざわざ後任に宛名を変更し、引き継いでくださる方も少なくありません。我々の情報の鮮度が長いという点も影響していると思いますが、フリーペーパーを「保管しよう」と思っていただけるなんて、発行者・編集者冥利に尽きます。

      ガンタトーン:昨今の紙媒体の廃刊は、そうした読者目線がやや欠けているように思えてなりません。広告費でペイできないからといって、廃刊や発行回数の減少を選択するのは時期尚早ではないでしょうか。広告主の意見を取り入れたコンテンツを新設するなど、まだまだ工夫の余地はあるように思います。しっかりと引き継ぎたいと思っています。

      広告主の変化

      ガンタトーン:この10年間で広告主はどのように変化しましたか。

      高尾:大きく変わったのは3年前のコロナ騒動からですね。競合他誌が紙の発行を縮小する中で、ビジネス系の広告だったらArayZ一択という現象が生まれるようになりました。

      一方でコロナは、ウェブ展開への足がかりを我々に与えてもくれました。ArayZウェブサイトのリニューアルや電子書籍の発行、ニュースレターによる配信など、オンライン版にも注力したことで日本やシンガポールなどタイ国外からのお問い合わせが増加しました。

      執筆者と読者、さらには広告主とのインタラクティブな関係づくりが新たな活力を生み出す

      今後の展開

      ガンタトーン:日本とタイを結び付ける仕事に携わる我々ですが、実は足元では残念なデータも見られます。労働省が発表している日本人の労働許可証(ワークパーミット)の交付数がどんどん減少しているのです。今後、急激に減っていくことはないだろうと思いますが、漸減の傾向は日本人にさらなる生産性向上と、タイ企業との接点強化を急務とさせます。

      このまま放っておけば、日系企業の存在感(プレゼンス)は間違いなく下がっていくでしょう。それに備えなくてはなりません。その時に必要となるのが情報と関係づくりだと私は考えます。ArayZが培ってきた知見とMediatorが持つ日タイ双方のネットワークを総動員させて、来るべき将来に備えておきたいと思っています。

      その一つとして、記事内容に合わせた執筆者によるセミナーや、読者を交えた編集会議などをしてみてもいいかもしれません。執筆者と読者、さらには広告主とのインタラクティブ(双方向)な関係づくりが新たな活力を生み出すと考えています。

      高尾:それらの点は我々も常に意識をしてきたところです。新たな関係づくりに必要なものを特集し、報じていこうと。読者からはよく「こんな情報まで無料で提供しちゃうの!?」と心配するお声もいただきますが、そうでなければならない。ありがたいと言われるディープな情報こそが、ArayZに求められるきっかけ作りという役割だと考えてきました。

      ガンタトーン:タイに赴任することになったら、「まずはArayZを読んでおけ!」と言われるような情報誌を目指したいですね。さらに、マネジメント層にとどまらず、若い人たちを結び付ける媒体としても育てたい。例えば、タイ人のマネージャー育成に悩みを抱えている方とか、年上のタイ人部下を抱えている若者同士とか。同じ悩みを抱える人同士がつながっていける媒体を目指します。私自身、もっと近くで皆さんと会話もしてみたいので、「ガンタトーンのお悩み相談室」を一つ設けてみようかな、とも考えています(笑)

      高尾:御社の豊富なリソースとArayZの相乗効果。今後のさらなる飛躍に期待しています。

      Mediator社員一同
      Mediator社員一同

      寄稿者プロフィール
      • 高尾 博紀 プロフィール写真
      • GDM (Thailand) Co., Ltd.
        代表取締役社長高尾 博紀

        早稲田大学商学部卒業。2011年GDM (Thailand) Co., Ltd.を創業。1,500,000㎡を超えるタイ不動産取引実績を有し、企業の不動産取得・売却支援を行っている。ホテル・オフィス用地や工場倉庫用地及びホテルやオフィス、商業施設などの事業用不動産売買に強みを持つ。「タイで最も土地取引を行う日本人」として、豊富な経験を活かし、不動産に関わるコンサルティングなども行う。

      • ガンタトーン・ワンナワス プロフィール写真
      • Mediator Co., Ltd.
        代表取締役社長ガンタトーン・ワンナワス

        在日経験通算10年。2004年埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ国の王室関係者や省庁関係者のアテンドや通訳を行い、タイ帰国後の09年にMediator Co., Ltd.を設立。日本貿易振興機構や日本政府機関、地方自治体の仕事を請け負うほか、在タイ日系企業に向けて異文化をテーマとした講演などを実施(講演実績、延べ12,000人以上)。

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