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タイの特許ライセンス

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      当職担当の回では「タイの知的財産権法」それぞれについて詳しく説明している。
      前回(2022年6月号)は商標ライセンス契約の登録申請の手続きを説明したが、今回は特許ライセンス契約について解説する。

      1. 登録の必要性

      タイでライセンスを取得する場合は特許・小特許に関わらず、商標の場合と同様に登録が必要とされる。タイ特許法第41条では「ライセンス契約及び特許の譲渡は、書面によることを要し、省令に定める要件及び手続きに従って登録しなければならない」と規定され、ライセンス契約の登録は第3者対抗要件でなく、契約の効力発生要件になる。登録がされないライセンス契約は無効であり、親会社・子会社間であっても別法人である場合、実施許諾契約に登録しなければライセンスの効力は生じない。

      2. 登録に必要な書類と書き方

      登録に際しては、知的財産局(DIP)の審査を要する。ライセンス登録申請は、DIPに申請書とライセンス契約書を提出して行う。

      特許ライセンス契約書に所定の条項に関して明確な定めはなく、契約当事者は原則として自由に定めることができる。ただし、タイ特許法第39条第1項によれば「特許権者は不当に反競争的な条件、制限又はロイヤルティ規定を実施権者に課してはならない」とあり、契約書上で同条に違反する規定は無効とされる(契約書全体が無効になるのではなく、「不当に反競争的」な規定のみが無効となる)。

      ライセンス契約書の審査部分については申請により複数人が閲覧できる状態になるため、契約書は写しを提出し、審査部分以外の不要な箇所については塗り潰す等して非開示にすることも可能である。ただし開示の範囲について、例えば「契約相手先名」は必要情報として非公開にできないものもある。「ライセンス料」に関しては、専用実施権設定(独占的ライセンス)の場合は正確な額を伏せることは可能である反面、非独占的ライセンスの場合は、ライセンシー※相互に不平等がないか審査するため、公開が強制されるとのことである。

      なお、契約書の記載言語はタイ語以外でも問題ないが、その場合はタイ語への翻訳文及び翻訳文に対する認証手続きが必要である。
      ※特許の実施・利用を求める実施権者。特許を保持している者を実施許諾者(ライセンサー)と言う。

      3. ライセンシーによるライセンス技術の改良

      契約書において、改良技術に係る権利のライセンスバック及びこれに伴うライセンシーへの報酬の支払い等について規定することも考えられる。タイ特許法に基づく省令第25号第4条第3項によれば「実施権者が実施許諾者に対し、許諾された発明もしくは意匠の改良を開示するか、又は特許権者に対し、かかる改良発明もしくは改良意匠を適切な報酬を支払うことなく排他的に実施することを許可するよう要求する規定」は「不当に反競争的であると見なされる」とある。

      上記法令に照らせば、ライセンシーに適切な報酬を支払うことなく改良技術をライセンサーに帰属させる規定を設けることはできない。ただし適切な報酬を支払うという前提であれば、改良技術をライセンサーに帰属させるよう定めることは可能であると考えられる。

      4. 共有特許権

      特許が共有に係る場合、特許権の各共有者は別段の定めがない限り、原則として他の共有者の許可なくしてライセンス技術に係る自らの権利を行使することが可能である。しかしライセンスの付与又は特許の譲渡については、共同所有者全員の同意を得なければならない(タイ特許法第40条)。

      5. まとめ

      商標ライセンス・特許ライセンス共に、タイにおいては効力発生要件として登録が必須であることに注意したい。また特許ライセンスの登録申請においては、契約中の条項が「不当に反競争的」と判断されないように、ライセンス契約書作成時に留意しておく必要がある。

      寄稿者プロフィール
      • 永田 貴久 プロフィール写真
      • TNY国際法律事務所
        日本国弁護士・弁理士
        永田 貴久

        京都工芸繊維大学物質工学科卒業、06年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co.,Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニア、ベトナムの各オフィスの共同代表も務める。

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