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知らなきゃ損する!タイビジネス法務

民商法の改正〜吸収合併の新設など〜

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    タイの事業運営において重要な地位を占める法律の筆頭は、やはり「民商法」であろう。タイの民商法は、日本における民法と商法(または会社法の一部)を合わせたような内容となっているが、2022年9月、特に組織再編分野において重要な法改正が承認された。
    この改正は未だ公布には至っていないものの(2022年10月20日時点)、実務上の影響が生じると考えられる。そこで今回は、吸収合併の新設をはじめとするタイの民商法改正について、主要な点を3つ解説する。

    1. 吸収合併の新設

    現行の民商法は、組織再編について「新設合併」という方法しか認めていない。新設合併とは、合併当事者となる会社の法人格を消滅させた上で新たに会社を設立し、その新会社に消滅会社の権利義務を承継させる手法である。

    しかし、一度すべての会社を消滅させ、新規に別法人を設立しなければならないというスキームの特性上、手続きが煩雑になりがちであり、実務的には積極的に利用されていたとは言い難い。

    本改正は上記の新設合併に加えて、合併当事者の一方(存続会社)の法人格を維持した上で、他方当事者(消滅会社)が消滅する「吸収合併」という手法を新設するものである。その手続きについては、多くが新設合併と同様の規定が用いられているが、一方の合併当事者が存続し続けることができるという点は、タイにおける組織再編に対して有力な選択肢を与えると思われる。

    なお、改正法には新設合併または吸収合併に反対する株主に対し、株式買取請求権を与えることで、反対株主の利益を保護する仕組みも盛り込まれている。

    2. 最低株主数の変更

    日本と異なり、タイ法は株式会社の株主数の下限を法定しており、現行のタイの民商法において、株式会社は最低3名の株主が必要であるとされている。

    そのため、タイで事業展開する合弁企業においても、合弁当事者に加えて1名の株主(その多くは1株保有株主)を加えなければならない状況が続いていた。これに対し、改正法は最低株主数を3名から2名に変更し、上記のような1株保有株主対応を省略可能とした。

    本改正により、株主を2名に変更する動きも想定されるが、株主数の減少にあたっては、株主総会の開催要件も別途考慮すべきである。というのも、タイの判例には会議の性質上、株主総会には少なくとも2名以上の株主(代理人含む)が出席しなければならないと示したものがある。

    このため、仮に株主数を2名に変更した場合に、一方の株主が株主総会への出席を拒否してしまうと、株主総会の開催要件を満たすことができず、株主総会を開催できなくなるという問題が生じる可能性が残る。

    3. 株主総会の新聞公告の廃止

    現行の民商法は、株主総会の開催にあたって少なくとも7日前(特別決議の場合は14日前)までに、各株主に対して書面で通知すると共に、新聞に招集通知を掲載する「新聞公告」を行わなければならないとしている。

    これに対し改正法は、無記名式株券を発行している場合を除き、この新聞公告の義務を廃止した。これまでもやや形式的に新聞公告を行っていたに過ぎない実態があったが、当該プロセスが省略可能となったことで招集手続きが簡易化されることになる。

    ただし、法令上の義務が撤廃されても、会社の付属定款上で株主総会の招集プロセスが規定されている場合も少なくない。そのため、自社の付属定款を改めて確認した上で、新聞公告の省略可否を判断する必要があるだろう。

    なお、本改正はその内容が官報に公告されてから90日経過後に施行されることとされており、具体的な施行時期については、今後なされる公告の動向を随時確認していただきたい。

    寄稿者プロフィール
    • 藤江 大輔プロフィール写真
    • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
      代表弁護士  藤江 大輔

      2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

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