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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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中小企業社長兼経営コンサルによる、現場発-経営論

【対談】クロスボーダーM&A実現の可能性を探る

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      タイ市場の成熟や競合企業の成長で事業環境が厳しさを増す日系企業。一方で、少子高齢化が進む中でタイ企業も事業継承に関する悩みを持ち始めている。中堅中小企業M&Aの最大手、日本M&Aセンタータイ駐在員事務所の井直大所長と、タイ進出企業に対して経営コンサルティングを提供するBizWings(Thailand)の倉地準之輔CEOがクロスボーダーM&A事情について語り合った。

       

      倉地 私たちの出会いは3年前でしたね。
       当時、私はシンガポール法人で働きながら、タイ駐在員事務所立ち上げの準備をしていました。その際に、タイで倉地さんが多くの日本企業進出のお手伝いをされているのを知り、M&Aのニーズがどれくらいあるのかお話を聞かせていただこうとご連絡しました。私は大学時代にタイ留学を経験したこともあり、〝タイへ帰ってきたかった〟のです。タイ進出も社長に直談判しました。ただ、実際にタイに進出するまで3年掛かりました。新型コロナウイルスの影響で2年間動けませんでした。ようやく2021年11月に駐在員事務所を開設できました。

      倉地 御社は近年、ASEANへの進出を強化されていますね。
       16年にシンガポール、19年にマレーシア、20年にはベトナムとインドネシアにオフィスを開設しました。シンガポールでM&Aを手掛けていて、ASEANと日本は考え方、価値観が似ていると感じました。日本に対する印象がすごく良く、日本企業ならM&Aを受け入れるというケースもありましたし、PMI(M&A後の統合プロセス)も非常にスムーズです。
      弊社は海外進出前も日本国内から海外とのM&Aを手掛けていましたが、進出前はお客様から「現地のオーナーはどんな人ですか」と聞かれた時に、現地の提携先から情報を得ているだけだったので正直私たちも分からないという状況でした。
      進出後は、提携先から紹介を受けたら一度オーナーに会い、その会社を見せてもらい、雰囲気を確かめてから日本のお客様にご紹介するようにしたところ、成約件数が進出前より上がりました。

      日本M&Aセンター 井 直大氏

      倉地 ASEANでもタイは特に日系企業の数が多いですね。
       タイの日系企業の取引相手の多くが日系企業です。そのため思った以上の売上、利益が残せていないというのがここ数年の悩みだとお聞きしています。そこでM&Aでタイ企業を買収して、ローカル市場を広げたい、商圏を手に入れたいという相談が増えてきています。  マレーシアやインドネシア、シンガポールはタイに比べて日系企業が少ないので、新規で成長市場に進出するためのM&Aが多くなります。タイの場合は既にある現地の拠点を活かして、さらなる市場拡大をM&Aで図るというケースが多いです。

      倉地 売り手となるタイ企業側の状況はどうでしょうか。
       多くがファミリービジネスですので、本当は子供に継いでもらいたいと思っています。ただ実際に子供に話してみたら「興味がない」と言われてしまった…そういう相談を受けることが多いです。親のビジネスというのは30年前、40年前のものです。顧客がいて利益も出ているのですが、今の若い人たちはより最先端のビジネスに関心があります。子供は思っている以上に親の事業に興味がないのに、親がそれを認識していません。
      倉地 私もアメリカに留学していましたが、確かにそういう同級生が多かったです。将来は親の会社を継ぐかもしれないと留学したけれど、多くは戻りませんでした。
       その点、ASEANの企業は子供に断られた時の決断は早いですね。子供が継がないならM&Aしかないと覚悟されて、オーナーがまだ若くて会社の状況も良い時に相談に来られます。そうすれば買い手から良い条件も引き出せます。条件次第では現オーナーが3年、5年と仕事を続けられるので買い手側からしてもM&Aに取り組みやすいです。

      BizWings(Thailand)Co., Ltd. 倉地 準之輔 氏

      倉地 日本企業とタイ企業のニーズが合致しているように見えますが、対して日タイ間のM&Aが増えているという話も聞きません。なぜでしょうか。
       これまでに、タイで中小企業のM&Aを手掛ける人がいなかったからだと思います。タイの大手証券会社などにお話を聞きに行くと、大企業同士のM&Aに注力しているとのことでした。確かにM&Aは元々大企業同士の話で、大手の投資銀行や証券会社が、大企業の事業戦略上のM&Aを仲介していました。一方で、創業者が経営する中堅中小企業などは事業が継承できなくなると、会社を解散しなければならなくなります。長年働いてきた従業員が路頭に迷ってしまうなど、社会的な影響が大きい。それならばM&Aを通じて企業の存続と発展に寄与できないか、というのが弊社の創業以来のミッションです。
      倉地 そうやってM&Aを考えると、社会的公器として大きな意味がありますね。日本とタイ両方の社会的な課題に応えることができます。

       会計士の立場からM&Aをどのようにお考えですか?
      倉地 様々な分野の外部専門家を交えてチームで進めていくことが大事だと思います。また、回収が困難な源泉所得税が資産に残っていたり、退職金(解雇補償金)の積み立てが不足していたりといった場合、書類上の純資産金額が会社の本当の価値より高い金額になっている可能性もあります。私が過去にDD(デューデリジェンス)をお手伝いした際も、交渉の結果、書類上の純資産金額をもとに当初想定した額より低い金額で買収できたことがありました。客観的な立場で個別の専門家に見てもらった方が良いと思います。
       おっしゃる通り、第三者の視点は絶対に必要です。

      倉地 日本やシンガポールで手掛けてきて、M&Aで大切な点とは何でしょうか?
       M&Aは時間が掛かります。売り手も買い手も、準備を早く進めることが大切です。そうすれば売り手は良い条件で売りやすいですし、買い手は良い案件に出合う可能性が高くなります。今すぐ買いたい、売りたいというわけではなくても、中長期的にM&Aに興味、関心がある場合は早めに専門家へご相談することをお勧めします。

      倉地 今後の事業展望はどのようにお考えですか?
       まだ3ヵ月ほどしかリサーチはできていませんが、相応の需要はあると感じています。日本では全国の地方銀行、1000社以上の会計事務所と提携しています。タイ事務所を一日も早く現地法人化し、日本と同様にしっかりと情報が集まるプラットフォームを作り、タイの中小企業M&A市場を築いていきたいと思います。

      寄稿者プロフィール
      • 井 直大 プロフィール写真
      • 日本M&Aセンター
        海外事業部ASEAN推進課
        タイ王国駐在員事務所 所長
        井 直大 Naohiro I

        2018年にシンガポールに赴任し、現地の会計事務所ネットワークを構築。タイの中堅・中小企業と日本企業の海外M&A支援を担当。バンコクで海外拠点開設の準備に従事。21年11月より現職。大学時代にタイへ1年の交換留学経験。


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      • 日本M&Aセンター タイ駐在員事務所Tel:66(0)2-309-3523
        E-mail:naohiro.i@nihon-ma.co.jp
        18th Fl., Park Ventures Ecoplex Building, 57, Witthayu Road, Lumphini, PathumwanDistrict, Bangkok 10330 Thailand

      寄稿者プロフィール
      • 倉地 準之輔 プロフィール写真
      • BizWings(Thailand)Co., Ltd. 
        CEO&Founder
        倉地 準之輔 Junnosuke Kurachi

        大手監査法人、外資系メーカー勤務を経て2013年来タイ。外資系会計事務所での勤務を経て、15年に経営コンサルティング会社であるBizWings (Thailand) Co., Ltd.を設立。現在は同社代表を務めるとともに、複数の公的機関にてアドバイザーを務める。公認会計士(日本)。東京大学経済学部、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。


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      • BizWings(Thailand)Co., Ltd. Tel:66(0)2-258-5592
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        Room 1201,12th Floor, Q House Building,66 Asoke Montri Road, Wattana, Khlong Toei Nuea, Bangkok

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