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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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SBCS タイ経済概況

タイ・マレーシアの海上鉱区開発

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      タイ湾にあるタイとマレーシアの国境未画定のエリアで鉱区開発のための予算が閣議決定された、という記事があった。この記事を読んで「カンボジアとの間で紛争があることはよく知られているが、マレーシア側はどうなっているのだろう?」と興味を引かれ調べてみた。

      タイとマレーシア間では領海(基線:基本的に陸から最大12海里、約22.2kmの国境線)は決まっているが、それより遠い大陸棚を巡ってタイ湾の国境線を画定できていない。ナラティワート県の東側沖合、約7,250㎢が両国の領有権が重複している場所となる。タイ側が主張するLosin島、Kra島を起点とした国境線をマレーシアが認めていないからだ。これらの“島”については論評を控えるが、ぜひ調べてみて欲しい。

      さて、国境は決まっていないが開発のための予算が閣議決定されたという。どういうことだろうか。両国の間では1979年2月21日にこの海域の「海底資源開発のための共同当局(Malaysia-Thailand Joint Authority:MTJA)設立に関する覚書」が締結されている。この覚書は国境画定問題を棚上げして、石油や天然ガスが眠るこのエリアから双方が経済的利益を得よう、という知恵の結晶のようなものだ。しかし、詳細な規則やMTJAに関する取り決めに時間を費やし、90年になってようやくMTJA法が制定され、さらにMTJAが設立されたのは94年だ。実際にマレーシアのペトロナスとタイのPTTによって試掘が行われガス田が発見されたのは98年となる。

      国境未確定地域は共同開発エリア(Joint Development Area:JDA)とされ、このJDA内を3つの鉱区に分けて、各鉱区で民間や国営企業による生産分与契約(Production Sharing Contract)が締結された。重要なポイントは両国の責任と利益分担を50/50としたところだろう。この契約に基づいてマレーシアのペトロナスが、タイのPTTなどが開発に参入している。

      どうやら今回私が目にしたニュースは、これらの鉱区でさらに油井を掘り、生産量が減らないようにするための予算について書かれた記事だったようだ。

      タイでの天然ガスの生産量は2014年ごろをピークに減少に転じている。それを補っているのが輸入されているLNGとミャンマーからパイプラインで運ばれてくる天然ガスである。当然、LNGの値段は高い。これらの価格が電気代にも反映されていることから、ガスはタイ経済の生命線ともいえる。その一部をタイとマレーシアの国境未画定エリアで生産することでタイは電気代を抑えることができている。このことは平和を希求した両国の先人による知恵の恩恵といえるだろう。

      寄稿者プロフィール
      • 長谷場 純一郎 プロフィール写真
      • SBCS Co., Ltd.
        Executive Vice President and Advisor
        長谷場 純一郎

        奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、10年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。12年から18年までジェトロ・バンコク勤務。19年5月SBCS入社。23年4月より現職。

      SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

      【免責】当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。当レポートは単に情報提供を目的に作成されており、その正確性を当社及び情報提供元が保証するものではなく、また掲載された内容は経済情勢等の変化により変更される事があります。掲載情報は利用者の責任と判断でご利用頂き、また個別の案件につきましては法律・会計・税務等の各面の専門家にご相談下さるようお願い致します。万一、利用者が当情報の利用に関して損害を被った場合、当行及び情報提供元はその原因の如何を問わず賠償の責を負いません。

      2023年9月〜10月 経済・政治関連トピック

      国際通貨基金(IMF)が10月に発表した経済見通しによると、ベトナムのGDPが2026年にはタイのGDPを追い越すと予想。ベトナムが東南アジア内で2位の経済大国となると予想した。フィリピンやインドネシア等は15~64歳の労働生産人口が増えていく一方で、タイの出生率(2021年)は1.33と減少の一途をたどる。IMFによると、東南アジアの主要6ヵ国の名目GDP(2022年)は、インドネシアが4兆369億米ドルでトップ、続くタイが1兆4,824億米ドルで2位だった。3位はベトナム(1兆3,212億米ドル)で、4~6位はフィリピン、マレーシア、シンガポールだった。

      経済

      タイ工業連盟(FTI)の発表によると、2023年9月の産業景況感指数(TISI)は前月比▲1.3ポイントの90.0で、過去14ヵ月の中で最低水準を記録した。FTIは家計債務の増加や農家の所得減少等が消費者心理を冷やしていると指摘。また、業種別では45業種中19業種が上昇。企業規模別では、小規模企業が前月比+1.1ポイントの94.2、中堅企業が同▲3.2ポイントの97.0、大企業が同▲1.7ポイントの79.4だった。大企業は11ヵ月連続の下落となった。


      タイ工業連盟(FTI)が10月24日に発表した9月の自動車生産台数は、前年同月比▲8.4%の16.4万台だった。内訳は国内向けが同▲17.9%の6.0万台、輸出向けが同▲2.0%の10.4万台。新型コロナ前の2019年9月の生産台数16.9万台を下回った。また、9月の国内新車販売台数は同▲16.3%の6.2万台で、輸出台数は同▲2.9%の9.7万台。新型コロナ前の2019年9月の販売台数が7.6万台、輸出台数が9.8万台であり、販売台数、輸出台数ともに新型コロナ前の水準を下回った。同時に、FTIが10月24日に発表した9月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲20.0%の20.0万台で、3ヵ月連続のマイナスを記録した。


      タイ投資委員会(BOI)は10月11日、今年1月に発効した5年間の投資促進戦略について、修正を加えた24年以降の4年間の戦略を発表した。5つの戦略的産業と活動を投資戦略政策の中核に据え、それらに特別投資恩典を付与する。


      世界の株式市場は、米10年債利回りの上昇に加え金利再引き上げの可能性もあり、引き続き下落圧力がかかっている。また、中東情勢についてはエスカレーションに対する懸念が高まっている。SET指数は9月22日の1,545.6ポイントから、10月20日には1,399.4に大きく下落した。下落要因には、新政権による政策施行の遅れ(10,000バーツのデジタルウォレット配布等)による政治的な不透明感から、市場と政府に対する海外投資家心理が悪化していることが挙げられる。


      23年9月は中国EVメーカーのタイでの事業展開に関する発表が相次いだ。まず奇瑞汽車(チェリー)が、タイでのEV生産事業を申請する予定と発表。タイではEVの「OMODA」と「JAECOO」を生産する計画で、24~25年は年産能力1万8,000台を目指すが、生産はタイ国営石油PTT傘下のアルン・プラスに委託する方針だ。次いで、広州汽車集団(GAC)傘下のEVメーカーであるAIONは、同社初の海外進出先としてタイを選択。9月9日に、中国で最も売れているEV・SUVである「Y Plus」を発売開始した。

      政治

      9月11日に新内閣のセター首相は、所心表明演説を行った。主な政策案として、「全国の最低賃金を日額600バーツ、新卒の最低月給を25,000バーツ」「全国民に1万バーツを電子通貨付与」「バンコク都内の電車賃を一律20バーツ」「ガソリン代、ガス代、電気代の値下げ」等が発表された。最低賃金に関する質問に対して、セター首相は早期にまず400Bまで引き上げると回答。24年1月1日から実施見込みとの報道があった。


      歳入局は9月15日、歳入法第41条第2項に基づき、タイに年間180日以上滞在する居住者の海外所得に対して、所得を得た時期にかかわらずタイ国内に持ち込んだ際に個人所得税を賦課するとの通達を出した。タイ居住者の海外での労働収入、資産収入が対象となり、24年1月1日付で施行する。セター内閣の目玉政策、1人当たり1万バーツのデジタル通貨配給だけでも5,600億バーツの予算が必要と見込まれており、税収増を目的にした政策だという指摘もある。


      タイ貢献党は10月27日、タクシン元首相の娘であるペートンタン氏を新党首として任命し、執行役員23人も同時に選出した。貢献党は今年5月の総選挙で前進党に敗北したが、その後独自に新連立政権を作り、党員のセター氏が首相に選出された。国内政治の点においては、国民に対する10,000バーツの電子通貨の配布や医療用目的以外の大麻の一掃等、各種政策が急がれる。

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