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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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SBCS タイ経済概況

タイ・カンボジアの海上鉱区は?

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      前回(2023年12月号)でタイとマレーシアの大陸棚境界の未確定地での海上鉱区の共同開発について説明した。長年にわたりリスクとリターンの折半によるガス田の開発が進められてきている、という話だった。

      一方、タイ湾のもう一つの隣国であるカンボジアとの間の大陸棚境界はマレーシアと比較して、遥かに複雑な状況だ。実はタイとカンボジアの間では、陸上においてもプレアヒビア寺院の周辺の土地で国境が明確に決められていない。アピシット政権時代の2011年には、同係争地をめぐって両国軍が交戦状態となり、双方に死者が出る事態に陥ったことさえあった。海側ではカンボジア側がクット島の一部の領有を主張している等、国境や大陸棚境界が明確になっていない。

      時は前後するが、2001年のタクシン政権時代に両国の主張が重複する大陸棚境界(Overlapping Claim Area : OCA)について両国政府間で覚書が締結されている。この覚書では、さすがにタイが譲ることのできないクット島周辺を除き、北緯11度以南の重複エリアの共同開発について触れられている。ただし、共同開発は境界画定とセットになっていたため、「境界が確定できない」=「共同開発ができない」という状況が続いている。さらに、2009年にカンボジア政府がタクシン元首相を経済顧問としたことに反発し、アピシット政権が覚書を破棄する決議まで行っている。その後インラック政権に変わり、この決議が実行されることはなかったが、その後も共同開発が進む気配はほとんどなかった。

      ところがウクライナでの戦争を契機にエネルギー価格が高騰。特に近年、タイ湾のガス生産量が減少を続けていることから輸入が急増しているLNGの価格が跳ね上がった。電気代等の価格上昇をタイ政府は補助金で抑えているものの限界がある。一方、カンボジアも同国側の海域で進めていた油田開発が2021年に失敗した。

      こういった状況下、2022年末にプラウィット副首相(当時)がカンボジアでフンセン首相とOCAの開発について会談。セター政権に代わった後も交渉が進められている。報道によると、タイ側としては領土問題とエネルギー問題を切り離して議論し落としどころを探りたい、という動きがあるようだ。

      仮に交渉が妥結しても、開発・生産には時間がかかりそうだ。OCAはいくつかの鉱区に分けられており、タイもカンボジアも既に異なる民間企業に権益を付与している。このため権益の調整が必要となる上、海上なので実際に生産を開始するには何年もの時間が必要となる。従って、電気代等の抑制の速攻薬とはならないが、長期的に考えた時に共同開発がタイのエネルギー問題解決の数少ない手段の一つとは考えられる 。

      寄稿者プロフィール
      • 長谷場 純一郎 プロフィール写真
      • SBCS Co., Ltd.
        Executive Vice President and Advisor
        長谷場 純一郎

        奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、10年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。12年から18年までジェトロ・バンコク勤務。19年5月SBCS入社。23年4月より現職。

      SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

      【免責】当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。当レポートは単に情報提供を目的に作成されており、その正確性を当社及び情報提供元が保証するものではなく、また掲載された内容は経済情勢等の変化により変更される事があります。掲載情報は利用者の責任と判断でご利用頂き、また個別の案件につきましては法律・会計・税務等の各面の専門家にご相談下さるようお願い致します。万一、利用者が当情報の利用に関して損害を被った場合、当行及び情報提供元はその原因の如何を問わず賠償の責を負いません。

      2023年11月〜12月 経済・政治関連トピック

      国際協力銀行は、第35回目となる「2023年度わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告」を12月14日に発表した。本調査は同年7月から9月にかけて行われ、534社から回答を得た。中期的な有望事業展開先国・地域(今後3年程度)では、タイはインド、ベトナム、中国、米国、インドネシアに次ぐ6位で、昨年より1ランク下がった。「現地マーケットの今後の成長性」や「インフラが整備されている」点が引続き評価されたほか、「第三国輸出拠点」としても有望との評価だった。一方、回答企業の50%近くが課題として「労働コストの上昇」のほか、多くの企業が「他社との厳しい競争」「技術系人材確保が困難」を挙げた。

      経済

      日本貿易振興機構(JETRO)は12月13日、「海外進出日系企業実態調査(全世界)」の調査結果を発表した。海外拠点ネットワークを活用し、世界83ヵ国・地域の日系企業7,632社より有効回答を得た。2023年に「黒字」を見込む企業は63.4%、「赤字」は18.3%で、「黒字」の割合は前年(64.5%)から1.1ポイント低下した。黒字企業の割合が減少するのは、2020年以来3年ぶりとなる。また、景況感を示すDI値は、全地域合計で前年の14.6ポイントを大きく下回る4.5ポイントだった。23年の中国のDI値は、2年連続▲15ポイント前後で推移。ベトナム(▲3.7)は前年から28.7ポイント減った。インドのDI値は44.4ポイントで前年に続き主要国・地域で1番、次いでメキシコ(34.1ポイント)が高かった。


      世界銀行は12月、23年のタイの経済成長率見通しを10月に発表した3.4%から2.5%に引き下げた。同じく2024年予測も、10月の3.5%から3.2%に引き下げた。タイ政府が計画する給付金1万バーツ政策は、24年~25年の成長率を0.5~1.0%押し上げると推算した。アジア開発銀行(ADB)も同じく、12月発表のレポート「アジア経済見通し2023年12月版」の中でタイの23年見通しを2.5%に引き下げた(昨年9月に3.5%の見通しを公表)。ADBは、輸出額の減少や、予算編成が遅れたことによる財政不安を下方修正の理由にあげた。一方、経済協力開発機構(OECD)は12月、24年のタイの経済成長率を3.6%とする予測を発表した。


      タイ投資委員会(BOI)は10月11日、今年1月に発効した5年間の投資促進戦略について、修正を加えた24年以降の4年間の戦略を発表した。5つの戦略的産業と活動を投資戦略政策の中核に据え、それらに特別投資恩典を付与する。5つの戦略的産業は(1)BCG(バイオ・循環・グリーン:農業や食品、医療やクリーンエネルギー等)、(2)自動車、特にEVやそのサプライチェーン、充電ステーションおよびその主要部品、(3)電子機器、特に川上(半導体材料等)やスマート電子機器、(4)デジタルとクリエイティブ、(5)地域本部および国際ビジネスセンター。


      タイ工業連盟(FTI)が12月20日に発表した11月の自動車生産台数は、前年同月比▲14.1%の16.3万台だった。内訳は国内向けが同▲15.5%の7.0万台、輸出向けが同▲13.0%の9.3万台。新型コロナ前の19年11月の生産台数15.4万台を上回った。


      12月19日、2024年から27年の4年間にわたるEV推進第2フェーズ(EV3.5)の支援策が閣議決定された。タイ政府は、30年までにタイで生産される自動車の少なくとも30%(乗用車72.5万台、オートバイ67.5万台)をEVにする目標「30@30」を掲げており、本支援策はその一環で、EV業界全体に対する投資支援を目的としている。また、本支援策は23年末に失効した支援策EV3.0の後継策であり、既にEV3.0に申請した企業もEV3.5に参画可能である。

      政治

      タイ空港公社(AOT)の発表によると、23年11月のタイ主要6空港(スワンナプーム、ドンムアン、プーケット、チェンマイ、チェンライ、ハートヤイ)の利用者数は、前年同月比+26.9%の938.9万人だった。国際線は同+53.1%、国内線は同+2.8%で国際線が好調。23年1月~11月の6空港利用者数は、前年同期比+76.2%の9,544.7万人。


      タイ政府は、観光税の導入を無期限延期することを決定した。以前の計画では、空路で入国する場合は1人300バーツ、陸路と海路での入国は1人150バーツ徴収予定だった。スダワン観光・スポーツ相は、まずは観光客を多く呼び寄せ、観光収入を増やしたい考え。


      11月15日セター首相は米サンフランシスコで岸田首相と会談した。セター首相は、タイにおける日系自動車メーカーへの支援等を表明。また、南部のランドブリッジ計画に日本も参画してほしいと呼びかけた。岸田氏も、タイの経済回復のために日本からの出張時のビザ免除等を要望した。

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